【第68話:神具】
次々と生み出される黒い影は最終的には11体にのぼった。
霧の魔物の中で最強の一角と言われているワイバーン。
そしてそれを従える地竜が咆哮をあげる。
「キシャー!!」
すると、その咆哮に応えるようにワイバーン達も一斉に口を開く。
「うあぁぁ!?ユウト殿!なんかまずそうでござる!逃げるでござるよ!」
と言ってメイとメアリを乗せたキントキが駆け出す。
「そのまま逃げて!リリルもオレが少しの間食い止めるから今のうちに!」
と言って光の斬撃を次々と放つ。
見極めし者の力で寸分たがわずワイバーンに向かっていくが、ワイバーンもファイヤーボールを放ってこれを相殺する。
ドガガガガッ!!
空中で爆発する無数のファイヤーボールが轟音を響かせる。
リリルはここまで伝わってくる爆風に驚きの声をあげてしまう。
「きゃっ!あ!?ユウトさん!地竜がまた!」
そして地竜が口をあけているのに気づいて咄嗟に光の矢を連射する。
(リリルには無理させているな…オレがもっと強くならないと…)
「ありがとうリリル!あとは任せて今はキントキの所まで下がって!」
そう伝えると、リリルは わかりました と少し悔しそうな表情を浮かべながらも指示に従って下がってくれる。
(今度はオレの番だ!)
と気合いを入れて集中すると、両手を突き出して祝詞をあげる。
まずは新しい力を使う為に防備を固める。
≪我は『
≪
大きな光の文様が現れ回転して光の障壁と化すと、先ほどの再現のように瘴気のブレスが放たれるのだった。
ズゴゴゴゴゴゴーーー!!
瘴気のブレスがまた辺り一面を無に帰していくが、オレの光の障壁はまったく揺らぐことはなかった。
そしてこの隙に次の祝詞をあげていく。
≪我は『
足元に光の文様が現れる。
ここまではいつも通りだ。
≪その力は『雷の牙』≫
『世界が暗闇に照らされた時、その闇の中に輝く光となれ!』
『我、暁の女神より授かりし残照の力をもって顕現を命じる!』
≪神具召喚:神槍ヴァジュランダ!≫
そう言葉を発した瞬間に天空から雷がオレに向かって落ちてくる。
眩い光と共に轟音が鳴り響く。
そしてその眩い光が収束していくと、オレの手には輝く槍が握られていたのだった。
雷を纏う槍の長さは2mほどで、
(この知識……タイトルが恥ずかしすぎるな……)
ちなみに今まで使っていた聖なる力は基礎的な力なので『力持つ言葉』を発するだけで行使することができたのだが、基礎の力以外はすべてこのような少し長い祝詞が必要となる。
まぁ、ちょっと中二的で恥ずかしかったのは内緒だ…。
しかし、何とかうまく神具召喚を成功させることができたので思わず、
「よし!何とかいけたぞ!」
と、輝く雷を纏った槍を眺め、思わずガッツポーズを取るのだった。
~
「すごい!凄いでござる!!」
「うぁ~…ユウトさん…綺麗…」
メイがシンプルに驚き、リリルは光の障壁をバックに自身も光を纏い、雷を纏う豪華な装飾の槍に見惚れていた。
だが、一人納得がいかない者がいた。
「…も、もう!もう驚かないんだからね!ユウトたち見ていちいち驚くのがバカらしくなったわ!」
と、メアリが何故か怒っていたのだった。
そしてオレは地竜の頭に狙いをつけると『神槍ヴァジュランダ』を放つ。
カァァァッ!
光り輝く一本の雷と化したヴァジュランダは、寸分たがわず地竜の頭を貫いて天に帰っていく。
その光景は地上から天に落ちる雷のようで、とても不思議に見えた。
そして雷が通り過ぎていく途中にあったものはすべて塵へと変わり、地竜の上半身はもうこの世には存在していなかった。
~
その後、メイとキントキが今までの
「ワイバーンなんて一匹でも凄い脅威なのに…あの子たちもゴールドランク並みの強さじゃない…」
と、更にメアリを驚かすのだった。
~
「これで終わった…かな?」
オレは【権能:見極める者】の力で本当に終わった事を確認すると、思わずその場に座り込む。
(今回は本当に焦ったな…。聖なる力を使いこなせるようになってもっと強くならないと)
と、心の中で反省する。
もう正直力を使い果たしてしまってへとへとだった。
そして何か大事な事を忘れていることに気が付く。
「あ…パズ呼び戻してたんだった…」
さっき思わず伝えてしまった(パズ!!凄いピンチだ!1秒でも早くこっちに助けに来てくれ!!)と言う言葉を思い出し、思わず冷や汗をたらす。
そして権能の繋がりでパズの居場所を確認すると、
「…あぁ…すっっっげースピードでこっち向かってる!!…なんて言ってあやまろうか…」
と、そのパズのスピードにあらたな脅威を感じるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます