第2話 美味しい料理は妖精のおかげ

「いらっしゃいませ。お泊りですか?お食事ですか?」


ある日の夕方、僕はいつも通りに宿の運営をしていた。宿泊されるお客様には台帳に名前を書いてもらいかけない人には代筆をし、お食事の方から注文をうけ、料理をする。まあ基本的に分業してやってるけど。


「オムライスですね。かしこまりました。」

今回はオムライスのご注文だ。ちなみに日本、というより僕が元いた世界の料理はこの宿の名物になっている。じいちゃん時代から付き合いのある商人さんがお米や大豆とかを持ち込んできたから僕の故郷の料理を作ってみたら大ヒットってところだね。


厨房に行き、家妖精シルキーの従業員のローズのところへいき、オムライスの注文が入ったと伝える。


じつはこのローズも僕と同じく地球出身だ。僕をじいちゃんが見つけた時、近くにあったのは学校のカバンとケースに入ったトロンボーンがあったらしい。で、ローズはそのトロンボーンのケースに宿っていたみたいなんだ。


聞くところによると、僕の家に宿っていたんだけどトロンボーンの家っていう認識でケースに分身が住み着いていていて、こっちの世界に来たら本体と同じ力がついた。その上実体化できるようになったんだって。その代わり、本体とのリンクがなくなったとかでもうべつの存在らしい。正直僕にはよくわからないけどまあいいかなって思ってる。


ローズは家妖精だから宿の運営にはこれ以上ないくらいの戦力だ。炊事洗濯料理全部できるもん。僕もできるけどまだまだ。ローズには本当に上手って言ってもらえたけどね。

その上美人さんなんだよなぁ。宿で食事する人の中にはローズ目当てな人もたくさんいるんだよね。


「おーい。リョウくん。オムライスできたよ。お届けお願〜い。」


リョウとは僕の名前だ。本当は坂井リョウトっていうんだけどこっちじゃ不自然だし貴族か、功績を挙げて苗字をもらった人じゃないと苗字は持っちゃいけないからじいちゃんに言われてリョウって名乗ってる。もうこっちが本当の名前みたいになってるけどね。


厨房からオムライスを届けるとお客様に残念そうな顔をされた。どうやらローズに持ってきてほしかったみたい。仕方ないけどなんか悔しい。まあ、ボソッと今日はローズが作ったって言ったら大喜びで食べるのを見ると文句なんか出てこなくなる。


厨房のところへ戻るとローズから、何を勘違いしたのか「大丈夫。私はあんな男じゃなくてリョウくん一筋だから。」って言ってきた。


その一言で店内が鎮まり返り、戦場のような雰囲気になった。ローズってば恐ろしい子。


その日のお食事の売り上げは男性客のやけ食いでいつもの三割増しでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る