黒薔薇の王子様 1

鈴木タビト

第1話 初恋の王子様

あらゆる調度品(アンティーク)を集めた部屋の中で、黒を基調としたゴシック風味の執事服を、マルスが着こなす。その隣で給仕のメルシア(やや年上だが、ペディキュア好きの女性)が、やんわりとマルスの首元へ、キスを1つ。2つ。3つ。まさにいま、キスマークが3度出来上がる。

ゴシック風味のショタータ。

メルシアがマルスへ笑いかけ、まだ、幼さの残るティーンエイジ(15歳)の彼の頬へ両の胸を寄せた。

可愛らしいマルスの笑み。

ふと、マルスが、自宅の庭のヒカリゴケを思い出した。なんとなく光るヒカリゴケの優しい灯りの中で、佇んでいるマルスの意志。

ヒカリゴケと、ローストビーフ。

マルスの前に、料理が並ぶ。

フレンチ。

コックのアカネが、ローストビーフを切り分け、切り分け、切り分け、3度大きなローストビーフを、マルスの口元へ、小さくしてから放り込んだ。

マルスは、端正な美少年執事で。

メルシアは、優しい女性の鏡で。

アカネは、フレンチのコックで。

王子様の人生は、黒薔薇を中心として、メルシアとアカネが、教育をまかなう。

その形の良い、マルスの鳶色の瞳。


マルスの端正な容姿と執事服が、揺れた。

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