硝子









佐々木和真、大学三年生、映画サークルの一応部長みたいな感じで今後輩の優希と要と一緒に妹の誕生日プレゼントを選んでもらってる。


ぬいぐるみを選ぶ要を見る優希の表情はすごく幸せそうだ。こいつ前までは女で可愛けりゃ同時に何人かと付き合ってヤリ捨てとかするやつだったからこんな表情見るのはじめてだ。優希に近寄る女はわりと顔目当てとかが多いけど要は優希に媚売らないし飾ったりしてる様子もないから優希もそんなとこに惹かれたんだろう。確か美香も優希はチャラチャラしてるけど根は一途で優しいって言ってたしなんやかんやで妹の誕生日プレゼントを選ぶのに付き合ってくれてるからイイヤツってのは俺も知ってる。


結局会計終わるまで付き合ってもらった。

次は何の店ブラブラするかなーって3人で見て歩いてたら多分歳が近めの女子がじっとこっちを見ていた。タレ目で目ぇ大きくて可愛い系っていう感じのやつ。ぶっちゃけ男が好きそうな可愛い子だからとくに気味悪いなんて思ってはいなかったけどその子の視線が優希と要を見ていることに少しハッとして優希のやつが時々姉ちゃんの話をするからもしかしてと思った。

優希達には喫煙所行くから二人で時間潰してくれって断ってなんだかその子の視線が気になって話しかけてしまった。


「なんですか...」

「あの...もしかして優希の姉ちゃん?」

いきなり初対面の人にこんなこと聞くのは失礼だと言ってから後悔。

「...そうだよ、貴方は?」

まじか、そしてタメ口か。まぁ俺もだけど。

「俺はサークルの先輩ってとこ」

ふーん、と言うふうに頷くがまだ視線は優希と要を見ている。優希の姉ちゃんと要が親友なのは前に優希から聞いていた。まぁ親友が自分の弟と付き合うってのは複雑か。

「...なんで優希なの」

ボソッとその子が呟く。

何でだろう、ただ単純に気になるって思ってしまった。

「あのさ...もしよかったら五分ぐらいそこのファミレスで待っててくれない?」


それだけ言い残して優希と要に帰ることを伝えてファミレスに向かう。初対面の人にいきなりご飯とか誘われたら普通帰るかなんて思いつつも店に着くとその子が店の前で待っててくれた。

「...伊藤紗希、優希の姉弟」

自己紹介もいきなりしてくれた。

「わかった、紗希な。とりあえず入るか」

ファミレスに入って席に着いてもまだどこか不満そうな顔をしている。もうこうなったら失礼とか関係なく聞いてしまえ。


「親友と弟が付き合っている状態って気まずそうだな」

「.....がう」

俯いかと思うとムッとしたような表情になる。

「あたしは要ちゃんが好きなの!」

好きってあれか、恋愛対象としてか?

「なのに...なのになんで...」

今度は目元がウルウルとし始めたかと思うと机にもうポタリと涙が零れる。

「ちょっと前から優希が要ちゃんを好きなのは知ってた!でも...」

2人が気になってわざわざつけてきたというよりかはさっき要と優希をじっと見てたのは偶然見ちゃったからだったんだと今気が付いた。

なんというか...なんて慰めていいかわかんねぇからとりあえずハンカチを渡す。


「優希は女の子大好きで浮気とか二股とかするヤツなのに要ちゃん好きになった途端要ちゃんにすごく優しくて...」

あー確かにお姉さまの仰るように二股とか平気そうだったな。

「要ちゃんもなんか嬉しそうで...優希は要ちゃんとの関係が壊れるのは怖いけど思いを伝えたのにあたしはできなくて...それが悔しいの!」

知らなかった。今まで優希はいいやつだけど女子に対しては自分本位な行動ばかりで自分から告白するって話は聞かなかったけどそこまでの覚悟があったこと。

「優希はほんとは優しくて大切な弟なのに、それはわかってるのにすごく嫌なの。それで要ちゃんに告白できないのを性別だからとか優希のせいにしてる自分が一番嫌だ」


「憎くてもいいんじゃねぇの?」

「怖いことから逃げたくなるとか、普通当たり前だろ。でも逃げたくなってる自分を責めるってことはそれだけ要に対して紗希は本気だしそれだけでも紗希は充分強いしずるくなんかない」

いきなりこんなこと言ったら怒られるかななんて思ったけどまたボロボロと涙を零しながら聞いてくれた。


「...泣いたらお腹空いた、ケーキ奢って」

「はいよ」

鼻すすりながらも図々しく奢らせる所とか優希とそっくり。それでいて要が大好きなとこも。

「...名前は?」

「まだ言ってなかったっけか、佐々木和真」

「...和真はあたしが女の子好きなことに引かないの?」

紗希の恋愛事情が色々ありすぎて忘れてたけどそうだ、これって俗に言う同性愛か。

「紗希は女の子が好きなのか?」

「...要ちゃんだからだよ」

「なら絶対引かねぇ。ていうか好きになるのに性別とか難しい理由とかいらねぇじゃん」








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