第8話 回想1

千夜は、幼馴染だった。スポーツは全然ダメで、どちらかというと文学少女というべきだった。そんな千夜が高校に入った時、テニス部に入ると言い出した時は驚いた。


だが、うちの学校の女子テニス部は強豪で、簡単には入部させない。明らかにダメな生徒は、仮入部のうちに徹底的にしごいて、辞めさせてしまうのだ。


聞いたところによると、千夜は、徹底的に精神的にも、肉体的にも、いじめに近いほどしごかれたらしい。1年生の後半まで、ラケットは一切使うことはなく、徹底的に肉体改造のみさせられた。


そんな千夜を目にかけたのが、先代の女子部長だった。その先代女子部長は、千夜に足りない技術的な部分を1から教え込み、2年生の前半になるころには、女子部の中でシングル1のレギュラーになるほどのレベルになっていた。


何が言いたいかというと、男子部長が女子部長の千夜に負けた時、オレを憐れむやつは一人もいなかったということだ。男子テニス部はマジメとは言えないし、負けてコート外の床で女子部長の千夜からしごかれているのを見て、みんな千夜の味方をしているのが肌で感じられた。


そんな四面楚歌の中、オレはいつ終わるとも分からない腕立て伏せを続けた。時々見回りにくる千夜は、腕組をしてオレを見下ろしていた。腕立伏せをして、ちょうど目線の高さに来る、千夜の足を見ながら。細いながらも、鍛えられた足をしている。それを見ながら、なんというか、たまらなく不思議な気持ちだった。屈辱というべきか、なんとも言えなかった。

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