第二章
第1話 次の目的地は向こうから来る
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そして第二章開始です!
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「ようこそ、ラグナ様。お待ちしておりました」
天魔との戦闘により壊された街が復興する中、俺はブリジッドの部屋を訪れていた。それというのも、
「トラベルゲートに案内する前に話があるって、あんたの秘書さんから連絡を受けたけど、一体どうしたんだ? 今更使えないって訳じゃないよな?」
「いえ、そういう訳ではなく……むしろそのトラベルゲートから、このようなモノが送られてきまして」
そう言って、ブリジッドが見せてきたのは、金属製の四角い箱だ。
中には綿の様な物がぎっしりと敷き詰められており、その中心には三角形の金属が刺さっている。
青い色をした、槍の穂先だ。
それには見覚えがあった。
特徴的な形だ。忘れる筈がない。
「これは……伝説の武器、ミストルティンの一部か……!?」
それは、俺が育てた槍の刃のグラフィックそのままだったのだ。ステータスを看破しても、
【舞い戻った伝説の武器:水の天魔王を封印せしミストルテイン(レジェンド)Lv200 状態:刃分離】
と、しっかり記載されていた。
「どうしてこれがここに?」
「分かりません。厳重に封をされた箱に入れて、今日、届けられたのです。川と湖の都、『ストロム』から匿名で」
「川と湖の都、か。来いって事なのか……?」
トラベルゲートが使えるようになったので一瞬で行ける。誘われているのであれば、一丁行ってみるのもありか、と思っていたら、
『えー、テステス。大丈夫かな。分離した意識、乗っかっているかな?』
刃の上に半透明の人の姿が現れた。それは青い髪の少女の形をしており、彼女は周囲をキョロキョロと見ていた。そして俺の方に目を向けると、
『わ、ご主人様だ! やっぱりこっちにいたんだ!』
口を大きく開けて嬉しそうに諸手を上げた。
『あたし、あたし! トルテだよ。ミストルテイン、覚えてるかな? ご主人様に鍛えられた武器だよ!』
やはり俺の認識はあっていたようで、彼女が俺の鍛えた伝説の武器の一振りである事は間違いないようだ。
まさか自分が鍛えた槍が青い髪の女の子になっているとは思わなかったので、面を食らってしまったが、それでも、
「ああ。当然、覚えているよ、ツインランスのミストルテインだろ」
『わあ、良かったー。ちょっと賭けだったけれど、ご主人様がいるのはラッキーだったかなあ』
そんな風にトルテと喋っていると、ブリジッドが見開いた眼を俺に向けて来る。
「伝説の武器の化身と普通に喋っているとは……。やはり、ラグナ様は、伝説の鍛冶師なのですね……」
「いや、そんな事よりも、武器からこうして半透明の姿が出ている事に驚くべきだと思うんだけどな、俺は」
「っと、そ、そうでした。これは恐らく……姿投影の魔法でしょうがこのような連絡をするなんて、どうなされたのですか、トルテ様」
やはりというべきか、この伝説の武器ともブリジッドは知り合いだったらしい。彼女に問われて、トルテはあはは、と気が抜けたような笑みを浮かべて、
「うんとね。あたしの本体が故障しちゃったから。修理してほしいなって」
「は? こ、故障? 伝説の武器である、貴方の本体が、ですか!?」
「うん、そっちの分離した刃も故障した結果でさ。どうせだから、連絡用に魔法乗っけて使っちゃえって思ったの」
トルテはあっけらかんと行ってくる。どうやらこの子は、緊張感があまり無いタイプなのかも知れない。
「まあ、それで来てみたら、ご主人様がいて、喋れて凄くラッキーだって思ってね。本当ならこのままもっと喋りたいんだけど……ちょっと修理も……って、あれ? もう連絡が途切れ途切れに……! 魔法が保てな……!」
それだけ言って、トルテの姿は掻き消えるのだった。
「……通信用の魔法が切れたみたい、ですね」
「見れば分かる。……しかし、ミストルテインが故障? どういうことだ?」
「わ、分からないですね。今まで、レインさんと何度も伝説の武器について尋ねたりしましたが、故障する、なんてことは一度も聞いたことが無いので」
ブリジッドは冷や汗をかきながら、ミストルテインの穂先の刃を見つめている。
俺も、その刃を見つめ、そして手に取った。
とても壊れているようには見えないし、ステータス状でも、破損なんて表示は一切ない。
でも、彼女は故障と言った。
「ふむ……ミストルテインがいるのは、川と湖の都、なんだっけか? そこ、トラベルゲートを使って、行けるか?」
「はい、行けますが、……まさか、ラグナ様が直々に?」
ブリジッドの言葉に、俺はゆっくり頷く。
「まあ、気は抜けていたけれど、故障って言葉はあんまり良い物じゃない言葉で、それを俺が育てたあの子が言ったんだ。そりゃまあ、俺が行くさ。協力してくれるか、ブリジッド」
「は、はい、勿論ですとも」
「ありがとう。じゃあ、ゲートの稼働準備を頼む。俺は、レインたちに今後の行き先についての話をしてくるよ」
こうして、俺の次の目的地は、川と湖の都『ストロム』に決まったのであった。
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