Cm(シーマイナー)

愛知川香良洲/えちから

プロローグ

「私、そろそろ寿命かな」

 目の前で机に座っていた少女は、そう言った。きっかけなどなく、突然。

「ど、どうして?」

 戸惑うのは当然だ。そんな衝撃的な言葉を唐突に言われ、普通にしていられる人はなかなかいない。

「何となく」

 特に意味もなく、感じたことをそのまま口に出したのだろう。でなければ、こんなことを言うはずがなかった。

「そんなこと、軽く言っちゃいかんよ」

「軽くなんて言ってない。数日前からずっと、感じてたの」

 でも正直、軽さなんて感じなかった。しかし、軽く聞き流したい。

「そっちこそ、軽く聞き流してるでしょ」

 心の内を読むかの如く、彼女は僕の気持ちを言い当てる。そんな指摘をされ、彼女は本気で言っているかもしれないと、一瞬だけそう思ってしまった。

「だから、今日一日はずっと一緒にいてよ」

 表面は明るく繕い心の中には重さを隠す、少女だった。

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