れっつ!いたんじっ!おたく部☆
コルフーニャ
第1話 女児向けアニメが好きで何が悪い!
春が終わり、六月は早くも中旬を迎えていた。
今年は六月なのに梅雨とは程遠く、雨は全く降らず、嫌がらせかと思うかのような快晴の日が続いている。
僕ら生徒達はクーラーが設備されていない教室の中で、文句を吐く気力もなくなる程の暑さの中、授業を聞かされていた。
勿論先生の話してる言葉なんか聞いている奴は誰もいない。
しかし、周りを見てみると教室の最前列、そしてど真ん中という一番教師に監視対象にされやすい席で授業を聞かず、ノートにペンを動かしてるものがいた。
彼女はにやにやしながら先生に目を写していたが、誰も奴がノートにメモを取っているなんて考えてる奴はいなかった。
目がいい僕にははっきり見えている、彼女の写しているノートの中身が。
見てみると思ってた通りノートに描かれていたのは黒板に書かれている内容じゃなく、BLの絵である。
しかも描かれていたのは、今授業を行っている赤西先生、そして体育を担任している平井先生がディー○キスをしているシーンである…。
このクソ暑い中に男同士でとんでもないホモプレイ、最悪の組み合わせを見させられた僕は冷や汗と鳥肌止まらない状態であった…。
授業をしている赤西先生は彼女の描いているノートの方をチラチラと見ていたが、描かれていたのは自分の恥ずかしい姿だったせいか注意する事なく、見て見ぬふりをしている。
うむ、最善の選択だろう…。
黒板のメモを取らない生徒が大勢、自分の姿をBL化している生徒が一名、あの先生を見た僕は教師という職業に絶対就くまいと心に誓う。
チャイムが鳴り、四時間目が終わると教室は弁当を持ち出し食堂へと向かう生徒が沢山いた、今はランチの時間である。
こんな暑い中教室で弁当なんか食いたい生徒なんてほとんどいないのだろう。
しかし、そんな中僕は持参した弁当を机の上に置く、本当は僕も食堂に行ってひえひえに冷えたうどんが食べたいが…。
弁当に手をつけようとした時に二人の生徒が椅子と弁当を持ち、こちらへと向かっていた。
「はぁ~あっちーな」
「もう嫌になっちゃうよね~」
彼ら二人はいつもお昼を一緒に食べている阿形と高田だ、ただでさえ暑い中一つのテーブルで三人飯を一緒にするのはごめんだったが、一人で食うのはもっとごめんだったので止むを得ずいつも一緒に食べているのである。
もし一人で黙々と食べている姿を見られたら一番前のど真ん中にいるあの女と一緒にされるに違いない。
彼女はBL本を片手に持ち、それをちらちらと見ながら一人で飯を食っている。
あまり見たくはなかったがどうしてもこの席だとチラついて見えてしまうのだ。
中学時代、女子に理想像を描いていた僕から見るととても不愉快な光景である。
「あいつ普通にしてたら可愛いのにな」
阿形がそういうと高田は驚いたような表情で彼を見ていた。
「お前まじで言ってんの?」
「よく見てみろよ、眼鏡外して前髪あげたら普通に美人じゃね?」
「まあやれるっちゃやれるよな~」
毎度のように続く、阿形と高田の童貞臭の漂う会話は今日も変わることなく順調に進んでいる、まあ僕も童貞だが…
「お前ら見る目なさすぎだろ、いい加減に童貞臭い会話も程々にして付き合いたい女子ランキングでも作ろうぜ」
「まあぶっちゃけ女であれば誰でもいいよな」
「だよな~」
「その発想が童貞臭いんだよ!」
こいつら二人ときたら、まあでもよく考えてみると女なら誰でもやれるかもな…。
「ていうかさ、本当に何か無いの?こう、いかにもリア充してますよって会話をな」
「無えよ!つうか俺らオタクはオタクらしくアニメの話でもしようぜ」
「阿形のいう通りな、まあオタクって言っても女児向けアニメばっかり見てる西条さんとは一ランク違うんすけどね」
「おまっ!女児向けアニメ見てる奴下に見てんじゃねえよ!お前らも俺と同じようなもんだからな?」
すると、女児向けアニメという言葉に反応したのかど真ん中の最前列にいるあの腐女子は身体を九十度回転させ、BL本からこちらへと視線を移してきた。ついでに西条というのは 僕の名前である。
「おいおいなんだなんだ、あの女、西条さんの事すっげえ睨んでるぞ」
「うわ~まじで睨んでる、多分女児向けアニメ見てるって聞いてお前を同族って認定したんだろうな…」
「お前らな…」
呆れながら弁当を食うも、その後の休み時間が終わるまであの女の視線は一切動かず、こちらを向いてにやにやと不気味に笑っていた。
昼休みが終わり、あの女の視線の束縛からようやく解放され、更衣室へと着替えを持って移動する。
「それにしてもあいつずっとこっち睨んでたな…」
「まじで何考えてるか分かんねえよ」
全くもって何を考えているかわからない、ただあの休み時間に感じた事はあいつの餌になる発言は辞めたほうがいいということだった。
次は体育の時間だ、たいそう服に着替え終わり、いつもの三人でいつも通りにグラウンドへと向かう。
グラウンドに着くと、四時間目に味わった暑さが嘘のように外は涼しい。
さっきまで快晴だった空にはたくさんの雲が出ている。
「梅雨だから気候の変化が激しいんだろうな」
空を見上げると暗灰色になった雨雲が沢山浮かんでいた。
この暑さで雨が降ればありがたいのだが、濡れたくもないからな…。
「セイレーツ!」
グラウンドに着くと横にいる体格が一回り大きいおっさんが馬鹿でかい声で叫んでいる。
涼しくなった気温を無理やり変えようかと思ってるほどの大声で叫んでいるのは体育委員の荒井だ、その横にポツリと立っていたのは同じく体育委員の僕である。はあ…やだなあ、荒井の暑苦しい声聞くの。
「ランニングいくぞおおおおおお!」
「おぉ………」
声がでかい荒井に対し、今のテンションを表しているかのようなテンションで僕達は声を出す。
「いっちにっ!!!!さんしっ!!!!」
「ごぉ…ろくぅ…しち…はぁち…」
もうやめてくれ荒井よ、全員まだ走って百メートルも経っていない地点で顔が死んでいた。イケメンの山田ですらこれには思わず頬を赤く染めてやがる。
この荒井に体育委員として立候補して欲しくなかった理由は一つだ。
振り向きたくなかったが後ろを振り向くと、遠くから見える学校の中にあるそれぞれの教室から、窓越しに生徒、そして教師までもが僕達を注目していた。
こいつの馬鹿でかい声が遠くまで離れた校舎一体となって響き渡っていたのだ。
僕達は体育の時間にこの屈辱を毎度毎度味わされていた。
そして体育委員の僕もいつの間にか、ご、ろく、しち、はちの方の声を出している。
本当はいち、にち、さんし、を言わないといけないが、恥ずかしくて無理だ。
「声もっとださんかああああああああああああい!!!!」
なあ荒井よ、頼むからしんでくれ…お前がしなないなら僕達が恥ずかしさのあまりしんでまうわ。
分かれて授業をしていた女子達も思わず僕達を見て爆笑している。
僕は横で馬鹿でかい声をだすこいつと並列になって走っている状態にある。
少しずつ列から外れ、三列目に走っているイケメン山田の元へと近づくため、足を緩める。
「おい山田、なんとかしてくれよあのおっさん」
「俺に出来るわけないだろ!お前こそ体育委員なんだからあいつをどうにかしろっ!」
だめだ、意見がかみ合わない。いや、目的は同じ筈なんだが。協力してあいつを叩きのめすべきか。
すると、列を乱した僕に勘付いたのか、荒井までもがペースを落とし、こちらにへと近づいてくる。
「おい、なんじゃ!二人でこそこそ喋りよって、そんな喋って走りたいなら仲良く前で走らんかい」
「ばっ!俺はかんけいなっ…」
山田は一生懸命訴えようとしたが、そんな言葉無視するかのように僕達二人の服を掴んで、最前列へと山田と僕を連れだす。
僕達は最前列で仲良く三人、荒井に無理やり走らされていた。
「いちにっ!!!!!!!!さんしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」
「ごっ、ろくっしちっはちっ」
山田の目元には涙がポロリとこぼれていた、僕は終始ニヤニヤが止まらない。
こいつがモテていたので気に食わなかったがまさかこんな事で復讐が出来るとは。こいつに嫉妬してる奴は多い、僕はクラスの英雄だ!
「今度からも最前列で仲良く二人で走ろうな!」
僕はニヤニヤしながら山田に言った。山田はこちらを睨みつけ、ひたすら何かを呟いている。
「呪呪呪呪呪…」
僕を呪い殺そうとしているのだろうか、だがそんな事したって無駄だ。本当にお前にそんな能力があるのだとすれば一目散に荒井に使っているだろう、と僕は都合良く論者になってみる。
「やめえ…やめえ…」
僕達が汗水を流している中、急に現れたのはてっぺんだけが剥げていた、顔以外はザ○エルに似た体育教師だ。全ての権限はこの人にある、助かった。
荒井よ、お前は所詮管理人だ。荒井は足を止めた、息一つ乱れていない、化け物か…。
後ろにいた多くの生徒達はへとへとになっている、地面に口をつけながら気絶しているものもいた。
このおっさんめ、何キロ僕達を走らせる気だったんだ!
「いやー急なんだが、転校生がきたぞ」
「「「はっ!?」」」
体育教師の急な一言に全員が驚いていた、まるでドラ○エのような急に仲間が加わりましたみたいな展開で言われてもこまるんだけど…。
「いや先生、本当に転校生がいたとしても空気読んで後で言ってくださいよ、クラスの全員死んでるじゃないですか…」
阿形が鋭いツッコミをこのザ○エルにかます。よく言った!阿形よ!
僕は思わずグッドポーズを阿形に取っていた。ついでに言えば阿形は先程弁当を共にした3人衆である、モブではない。
「は、始めまして。僕めいって言います、明石めい、女と間違われるんですが男です」
「「「え、ええっ!!!」」」
先程まで死んでいた男子が一斉に息を吹き返した、決して復活魔法を使ったわけじゃない。明石めいという、男であるのに女の顔をした最近耳にする男の娘といわれているのが現れた。
「隊長!!!確認いいでしょうか!」
ここでいう隊長とは僕の事を指す、このクラスで荒井とイケメン山田以外のメンバーほとんどは僕が牛耳っているのだ。
「ンー拒否スルゥ…」
僕は断った、こいつの言う、確認とはもちろんの事ボディチェックを指す。本当に男であるかどうか、いわゆる、ちん○が付いてるかどうかのチェックタイムである。
「ボディチェックはこの隊長自らが行おう!」
「そんなぁ…」
落胆のあまり男子生徒のほとんどが消沈し、倒れこむ。
まあそんなに落ち込むな、思春期の男子諸君達よ。感想文なら書いてやる。
めいたんに触れようとしたその時、バシッと僕の腕は何者かに止められる。
「邪魔するか…貴様…」
「いけないな、セクハラなんて…」
僕の腕を並外れた瞬発力で掴みやがったのはイケメン山田だった。
「あのな!こいつは女の子じゃない、男の娘なんだっ!セクハラになってたまるか!」
「よく見ろよ、彼女嫌がってるじゃないの…」
「ひぃ…」と脅えた子羊のようにめいたんは脅えていた。
しかし獲物を食う狼は同情なんかしない、僕は今日から狼になる。西条篤と名前を捨て今日から狼篤に!
「そうかそうか、そこまで止めるか、流石イケメン、女の子と思ってる子には優しいな」
「ふふふ…女の子には紳士であれと母さんから習わなかったのか?」
「いや~その心構え、すばらしい!実に脱帽!だがな、隊長に対するその態度、気にくわ
ん!やれ!お前達!」
「いえっさああああああああ」
先程消沈した男共は立ち上がり、隊長(僕)と共にイケメン山田を囲む。
そして全員戦闘態勢をとる。空手、柔道、ボクサー、カンフー、なんでもいるぞ!
イケメンだけが取り柄のお前にこの壁を突破する事が出来るだろうか。
イケメンが強いという説もあるがあれは嘘だ、嘘じゃなければ僕達の兵隊がそいつの骨をバキッバキに折りにいく。
「っな…頼む!!!!!やめてくれええええええええええ!」
「はっはっはっは!一匹狼となったお前に容赦はせんっ!覚悟せよ!これが狼を敵に回した罰だ!」
ドサドサと足音がする、援軍、否。これは…。
「山田くんに何すんのよ、この変態男子どもっ!」
目前にいたのは総勢二十五人の女子共だった。山田を囲んでいた僕の兵隊達もいつの間にか後方にへと避難している。
「フフフ、詰めが甘かったようだな、隊長…」
作戦通りというドヤ顔を決め山田は笑っていた。あの叫び声、女子達に向けてだったのか。
「このっ!山田っ!てめえぶっこ…」
「隊長!それはまずいですって!」
ふぅ…危なかった、思わずぶっこ…を言っていた、さんきゅーな兵隊。
「お前!数す!まじ数す!」
「ちょっと、あんた達。めいちゃんに話全部聞かせてもらったわよ!」
ひょえ?脅えためいたんは女子達のグループにいつの間にか入っていた、しかも抱きついているのは、ぼいんぼいんの体型をした村星さんだ。
「うらやまなのか…レズなのか…よくわかんないけどっ!お前らあああああああああ」
「「「すいませんでしたっ!!!」」」
男子一同で謝った、山田以外で謝っていない荒井はギロリと女子を代表する中村さんに睨まれたが、俺は違うと一生懸命手を振っている。
これは○本新喜○なんかじゃない、全ていつもの流れなのだ、だから気にしないで欲しい。
だがそんな声は届くはずもなく明石めいはひたすらに脅えていた。
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