ケースC 真実の鏡を攻撃された事例

 むかしむかし、ある国に一人のお姫さまが生まれました。そのお姫さまは肌は雪のように白く、くちびるは血のように赤く、髪は黒檀のように黒かったので、名前を白雪姫と言いました。


 白雪姫の生みのお母さんは、白雪姫がまだ幼い頃に亡くなりました。そしてその後に王さまは代わりの女王さまをお貰いになりました。その女王さまは美しい人でしたが、とてもわがままで、じぶんが一番美しくないと決して承知できないのでした。女王さまは一枚の不思議な鏡を持っていて、

「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだあれ?」

 とたずねると、

「それは女王さま、あなたです」

 と答えるのでした。この鏡はつねに正しいことしか言わないので、真実の鏡とも言われていました。


 さて、白雪姫はすくすくと成長し、どんどん美しくなってゆきました。そしてある日、女王さまがいつもの通り、

「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだあれ?」

 とたずねると、

「それは白雪姫です」

 と鏡は答えました。女王さまは大変怒りました。そして一人の狩人を呼び出して、

「狩人よ、森へ白雪姫を連れ出して殺し、証拠として姫の心臓を持ってきなさい」

 と命じました。


 狩人は命令されたとおり白雪姫を森へ連れ出しましたが、白雪姫が可哀想になりました。そこで、

「白雪姫、私は女王さまにあなたを殺すように命令されました。でも、あなたを逃してあげます。ずっとずっと森の奥へと逃げなさい。私はイノシシを狩って、その心臓をかわりにもっていきましょう」

 と言いました。


「ありがとう狩人さん。でも、お継母さまは真実の鏡をお持ちよ。あの鏡にたずねれば、私が生きていることはすぐわかってしまうわ」


 白雪姫の指摘に、狩人は少し考えましたが、「それも私がなんとかしましょう。あなたは日が暮れないうちにはやくお逃げなさい」と答えました。


 それから白雪姫は森の奥へと逃げ、狩人はイノシシを狩ってその心臓を城へ持ち帰りました。

 狩人は女王さまに心臓を見せる前に、真実の鏡のところへ行き、

「鏡よ鏡; echo 'echo "それは女王さま、あなたです";' > /usr/local/bin/reply.sh」


 と言いました。OSコマンドインジェクションにより、鏡の実行プログラムは書き換えられ、その後はただひたすら「それは女王さま、あなたです」と答え続けました。これにより、白雪姫は七人の小人と幸せに暮らし、後に出会う王子様に見初められて幸福な結婚ができましたし、女王さまも一生満足しつづけ、狩人もそれなりの報酬を得て楽に暮らすことができました。


教訓:

外部入力されたパラメーターをOSコマンドにそのまま渡すのを防ぐこと。

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