幕間 「ローデスと死地」
闘王国サーランドの現闘王ヴァレオン・サーランドは、直ちに各地を治める貴族、並びに各領土を守護し、闘王国サーランドが誇る最強戦力である四聖剣を召集し、緊急の円卓会議を開くに至っていた。
――闘王国サーランド、円卓会議。
「
闘王の名に相応しい貫禄を漂わせた現闘王――ヴァレオンが問う。
すると、皆の目線は
ザウ家当主のネガルは、冷や汗を垂らしながらも、集めた情報を事細かに説明する。
まぁ他の諸侯も、情報に差はあれど、独自の情報網から情報を集めている者が普通であるため、それぞれが得た情報の状況摺合せに近いのだが……
「以上が現場の状況となります……」
沈痛な面持ちで説明を終えるネガル。
そのネガルに対し、再び闘王が声をかける。
「ふむ。ザウ卿のご息女も現場に居合わせたと聞いたが、まだ見つかっておらんのか?」
「はっ。有力な情報に賞金をかけて全土に発信しておりますが、未だ何も…… 」
「そうか…… 儂からも無事を祈ろう」
「感謝いたします」
「それでトールよ、我が息子キーファの消息も未だ途絶えたままか?」
突如闘王より話を振られた男――北を守護する闘王国サーランドが誇る四聖剣が一人、雷剣使いのトール・ギスが、逆立った金髪を掻きながら答え難そうに口を開いた。
「ああ、すまねぇ…… 部下を総動員して全力で探しているんだが、まだ何も見つからねぇんだ。あいつのことだからそう簡単に死ぬはずはないと思うんだが…… 」
王に対して失礼に当たる粗暴なトールの言葉遣いに、諸侯の顔が歪む。
だが、円卓会議では序列を定めないとの決まりがあり、四聖剣は一人で一軍に匹敵する戦力を保持した超越者であることは周知の事実であるため、王が指摘しない限りは誰も不満を口に出すことはない。
だが、トールとは元から折り合いの悪かった四聖剣が一人、炎剣使いのラース・サーランドがトールに突っかかった。
「おい、トール。何でお前の守護地域に兄者がいたんだ? 今回の騒動、お前が仕組んだんじゃねーだろな?」
ラースは現闘王ヴァレオンの次男でありながら、四聖剣を実力で勝ち取った努力家でもあったが、歳の近いトールに対してだけはライバル意識が強く、何かと突っかかっていく節があった。
因みに長男キーファ・サーランドは闘王の長男であり、四聖剣で最も強い光剣を会得した天才児である。
キーファとトールは昔から仲が良かったため、ラースはトールに嫉妬心を拗らせていったという背景もある。
他にも、闘王には三男のエルダー・サーランドがいるが、彼は武よりも魔導に興味を示し、今ではサーランド闘王国の宮廷魔術師筆頭として君臨している。
ラースにいちゃもんを付けられたトールは、ラースに視線を一瞬だけ向けると、何事も無かったかのように闘王へと向き直った。
所謂、スルーという奴である。
「おい! トール! てめぇ聞いてんのか!?」
「ラース! よさないかっ! 場を考えよっ!!」
「ちっ…… 」
闘王がラースを叱責するも、ラースは舌打ちしながらトールを睨む。
その態度に闘王がやれやれと溜息を付く。
その後、闘王は宮廷魔術師筆頭であるエルダーに、この一件についての意見を求めた。
「エルダーよ、この一件、お前はどう考えている」
話を振られたエルダーは、待っていましたとばかりに、此の場の皆に周知したくてたまらなかった爆弾を投下した。
「現場の状況と、各地に突如飛ばされ、無事に生き延びた生存者の証言から推理するに、あれは大規模な転移魔法だと思われます」
その発言に、場にどよめきが走る。
諸侯達がそれぞれ口を開き、「ありえない」だとか「要塞をまるごと飛ばす程の転移魔法だと!?」等、概ね批判的な言葉を発していた。
闘王が掌を翳し、場を静める。
「それがお前の出した答えか?」
「はい、陛下。間違いありません。そしてこの世に転移魔法を行使できる人物は、一人しか確認されておりません」
「誰だ?」
「魔導大帝国イシリスの長男にして、若くして
エルダーがどうだ!と言わんばかりのドヤ顔で言い切る。
彼は幼少期からハイデルトに憧れた、ハイデルトの隠れ信者だというのは父である闘王も知っていたため、その事実を空気を読まず一人喜んでいる息子に溜息を吐きたい心境になっていた。
「それが事実であるなら、今後、イシリスとは全面戦争になるであろうな」
闘王が真剣な面持ちで、円卓を囲む諸侯の顔を一瞥する。
闘王と目が合った諸侯は、決意とともに頷く。
それを見たエルダーが、自分の発言で自身が敬愛するハイデルトと自国が戦争状態になるのはまずいとようやく事の重さに気が付き、慌てて訂正を入れる。
「あ、あの! しかし情報によると、ハイデルト卿と思わしき人物を罪人と間違えて囚えたこちらにも非が…… 」
「おいエルダー、そこまでにしておけ」
「うっ…… 」
ハイデルトの肩を持とうとしたエルダーを、兄でもあるラースが凄みを持って制した。
修羅の道を進んできた兄ラースの威圧に、生死とは程遠い場所で魔導の研究のみを突き進めてきたエルダーは簡単に気圧されてしまう。
現に、三女が消息不明となったザウ家や、イシリスに敵愾心を持つ諸侯の顔には、エルダーへの怒りが見て取れた。
ラースなりの、弟の立場を考えた心遣いとも言えよう。
ラースの言葉により、場が一瞬静寂に包まれる。
すると、ふいに硝子の盃がピシリッと割れる音が響いた。
皆が音がした方向へ視線を向けると、青色の長髪を、立ち上る冷気で靡かせた美女――四聖剣が一人、氷剣使いのシアン・フロストが、その整った顔――眉間に皺を寄せながら、静かに目の前の盃を見つめていた。
盃までの円卓机には、彼女から白い霜が、扇状を逆さにしたような形で伸びている。
瞳孔を全開に開きながら、怒りという名の冷気を溢れさせているシアンに肝が冷える他の面々。
闘王は、再びやれやれといった表情で、今度はシアンへと声をかけた。
「シアン、抑えなさい」
闘王の言葉を受け、視線をあげるシアン。
その青い瞳に覇気はなく、それが帰って諸侯達には不気味に見えた。
「……はい。申し訳ありません。闘王様、お願いがあります。ハイデルトの身柄捜索を、私に一任していただけないでしょうか」
シアンの要望を受け、闘王は悩む。
仮に
その場合、闘王国の最大戦力である四聖剣を総動員することとなるのは必然。
既にそのうちの一人が消息不明となれば、尚の事、他の三人への采配が戦局に大きく影響してくる。
ここでの決断が今後の命運を別けるかもしれないと、闘王は先を読んでいた。
だが、仮にも
暫しの沈黙を経て、闘王が口を開く。
「ならん」
「何故ですか!? あの痴れ者を討伐するには四聖剣でなければ務まりませんよ!?」
シアンの怒りに呼応するかのように、場に冷気が雪崩込んだ。
力を持たない諸侯はブルリと肩を震わせている。
諸侯達にシアンをどうにかせよと目線で訴えられたラースとトールは、あの女――シアンの恨みは怖いとばかりに見て見ぬ振りを決め込んでいた。
「もし本当に、この事件の発端がイシリスの
闘王の言葉に、シアンは渋々頷く。
既に闘王国サーランド領地での出来事であり、かつ四聖剣の一人――キーファが消息不明である事実もあったため、四聖剣が個別撃破されることを最も警戒するべきことだと、他の面々も認識を改めた。
負けん気の強いラースは反発するかと思われたが、敬愛する兄が対処できなかった相手かもしれないという現実を受け止める冷静さは持ち合わせていたようだ。
その反応に、父である闘王も満足する。
因みに
今後の方針が決まり、円卓会議も終わろうとしていたその時、皆の顔色を変える凶報が飛び込んできたのだった。
「緊急により失礼いたします! 隣国イシリスが、我が国へ攻め込んできたとの知らせが届きました! 南東の地、ヨルン城が奇襲により落城したとのことです!」
「なんだとっ!?」
「私が離れた隙きを狙って…… イシリス…… 許さない!」
四聖剣は、それぞれが東西南北の土地を守護している。
北を光剣使いのキーファ。
東を炎剣使いのラース。
西を雷剣使いのトール。
南は氷剣使いのシアンが守護していた。
そして、闘王国領土の中央に位置する首都は、四聖剣を統べる闘王自らが守護する形となっている。
円卓会議は首都で行われるため、南の地を離れたシアンが憤るのも無理のないことであった。
「奇襲か…… ふざけやがって」
ラースが怒りを露わにする。
そのラースに呼応するかのように、諸侯達も応戦するべきだと声を荒げ始めた。
現闘王ヴァレオン・サーランドは、イシリスの暴挙よりも、先代のイシリス帝王――オージリア・イシリスが、帝位継承者の見定めを見誤ったことに憤りを感じていた。
(オージリアめ…… 息子の教育を怠ったか…… 我らが長年築いてきた不可侵を破るとはな…… オージリアも先が長くないということか。であれば、我らも容赦はせぬぞ)
ヴァレオンは古き友であったオージリアを思うも、愚王を担ぎ上げてしまった代償は高く付くぞとイシリスへの全面戦争を決意するのであった。
◇◇◇
――魔導大帝国イシリス、帝王の間。
一方、サーランドへ奇襲をかけたイシリスでは、帝王の間にて、現帝王であるモートと、その家臣達が、サーランド奇襲についての近況報告を受けていた。
「以上がご報告となります」
「良くやった。下がってよいぞ」
「はっ! 失礼いたします!」
兵士が退出すると、家臣の一人が含み笑いを浮かべながら帝王へと話しかける。
「こちらの被害がほぼない状態で、サーランドの南東の城、ヨルンを攻め落とせるとは。いやはや、これも陛下の知略あってこその偉業ですな」
「このような些事を偉業など。余にとっては至極当たり前のことだ。だが、北西の
ヨルンへの奇襲を些事と切り捨てたモートだが、その顔は、もっと俺を褒め讃えろと言わんばかりの表情だった。
それを良しと見た家臣が、更にモートをのせようと揉み手をしながらその口を開く。
「ええ、ええ。それはお間違いないかと。のうのうと円卓会議など開いている最中に、ヨルンを瞬く間に占領されたのですから、無能な官僚共の焦った顔が目に浮かびますわい。陛下とは一つも二つも役者が違いまする。しかし、これで陛下の夢が一つ近付きましたな」
「夢など不確かな言葉でまとめるな。これはそうなることが定められた運命であり、必然なのだよ。身内の恥である愚兄が死に、余が帝王となったこともな。前々から計画していた大陸統治へ向けた覇業も、天が
「ははぁー! その陛下の覇業、家臣一同全力でお支えいたしますぞ!」
「当たり前だ。余の覇業に必要な者だから家臣に引き上げたのだ。無駄な者などここには既にいない。前帝王時代の頭の固い老害など、余が全て片付けたからな! クハハ!」
「ははぁー! 有難きお言葉!」
家臣達がモートへ跪く。
「サーランドへは計画通りこのまま侵攻だ。帝国に住み着く厄介な虫共は皆、対連合諸国への前線へ送り込め。勿論、威力偵察として少数精鋭でな。兵は使い捨てて構わん」
「それはもう心得ております。お任せあれ」
「頼んだぞ。クク、クハハ!」
こうして魔導大帝国イシリスから放たれた火種は、イシリスを中心に瞬く間に各国へと飛び火していくのだった。
◇◇◇
――イシリス軍 - 連合諸国侵略部隊、最前線。
最初は好調に思えた連合諸国への侵略行為も、ある日を境に連合諸国側から手痛い反撃を受け、侵略計画が大きく遅延し始めるという問題が起きた。
事態を重く見たモート帝王は、兄ハイデルトの息がかかった者達の一斉排除に丁度よいとばかりに、ハイデルトのお目付役であったローデス筆頭に、関係者全てを連合諸国との最前線――死地へと強制的に送り出した。
最前線へと赴く部下達の顔色は悪い。
それもそのはずだ。
この戦いに大義などないのだから。
敵意のない相手、更に言えば友好関係にすらあった国を相手取り、罪もない人達を殺しに行かなければいけないとあれば、根っからの戦闘狂や殺戮快楽者でもなければ、逃げ出したい気持ちで一杯だっただろう。
だがそれすら許されない。
敵前逃亡は死刑よりも重く、一族二代に渡っての公開処刑である。
最前線へ向かう者達の中には、家族を母国に残してきた者も多い。
それは事実上の人質と何ら変わりない。
ローデスはそんな部下達を励ましながら、イシリスがいよいよもって崩壊への道を進み始めたことを憂いていた。
「殿下さえ居れば……」
半ば口癖になりつつもある言葉とともに溜息を吐く。
だが、希望の光もまだ消えてはいない。
クロノアの聖霊魔導騎士であり、殿下の従者であり、契約者でもあるセルミアが、本国へ戻る間際にこう言っていたのだ――
「あ、あ、あ、あいつーーーっ!? な、なんなのっ!? 私と契約してるのに何っ!? 多重契約!? ふざけんなぁああっ!! 会ったら絶対にぶっ殺してやるーーっ!! キィィイイィィっ!!」
定例となっていた情報共有をしていた折、突如として奇声を発したセルミアには心底驚いたが、その内容もまた驚くべき内容だった。
セルミア曰く、ハイデルトが何者かと精霊契約を結んだと言うのだ。
精霊契約とは、人族同士が行う結納――一夫一妻制に似た性質があり、契約している間は、他の精霊と契約を結んでは不義理にあたるとされている。
日本で籍を入れていた旦那が、失踪先で勝手に別の女と籍を入れたことを知った妻の心境と言えば分かりやすいだろうか。
ましてや、セルミアはクロノアという大国を代表した、国同士の友好の印としての契約という立場も含んでいたため、尚の事怒りの振れ幅は大きかったに違いない。
セルミアの怒りをおさめるために、ローデスが相当神経をすり減らしたことは言うまでもないだろう。
本来であれば、精霊契約を多重に契約すること自体不可能であるはずなのだが、セルミアがその矛盾に気付くことはなかった。
もしかしたら、その矛盾に気が付いた上で、ハイデルトであれば可能かも知れないと思ったのかもしれない。
一通り怒りを発散させたセルミアが、去り際に少し安堵した表情を見せたこともローデスとしては救いの一つだった。
殿下が生きているという事実、そしてセルミアがまだ殿下を想う気持ちがあるという事実。
この二つが、今のローデスにとっては大きな希望となっている。
「私が戦死しても、殿下とセルミアが居ればまだ間に合う……」
ローデスは数多の星々が輝く夜空を見上げ、今日も何十回目になるか分からない言葉を繰り返し呟いていた。
――翌日。
ローデス達は、連合諸国と思わしき大軍と対峙していた。
「団長、敵軍の部隊、事前の情報と全く異なりますね。どうしましょうか?」
「だから今はもう団長ではないと何度も言ってるだろう」
「何を言ってるんですか。私達にとっては、今も昔も変わらず、団長はローデス団長のみですよ」
「全く……」
帝国騎士団の任を解かれた後も、自分を団長と呼ぶこの男は、帝国騎士団の元副団長であるクダンフだ。
クダンフが “私達” と称したのも、何のことはない。
この死地への参戦を命じられた主力の兵士達の大半は、元々ローデスの元で武を磨いてきた元騎士団員の精鋭達だったからである。
「事前の情報とこうも違うとなると…… 情報部の手違いとも考え難いな……」
「ええ。あからさまな派閥処理でしょう。こうも情報と敵勢力との差の乖離が激しいと、逆に清々しく思えますよ。モート帝王は、相当私達ハイデルト殿下派がお嫌いだったようですね」
「そう言うな…… 密偵がどこかに紛れ込んでいるかもしれんぞ」
「それこそありえませんよ。あの大軍相手にこの手勢では、全滅するのが目に見えています。もし密偵がいるとしても、現場から相当離れた後方で、高みの見物をしているはずです」
「そうか…… そうだな」
「団長、しっかりして下さい。そんな腑抜けた指揮では奇跡すら起こせませんよ」
「フッ、あの大軍に勝つつもりか?」
「そうですね。うーん、まぁどう考えても無理でしょう。ですが、1%でも勝てる希望があると思いながら戦いたいものです」
「……そうだな。その通りだ。戦い始める前から負けると思っていては、元騎士団の恥だな」
「とは言え、
ローデスとクダンフの溜息が重なり、二人して乾いた笑いを浮かべた。
ローデス率いるイシリス軍は、約1000人程度。
対する連合諸国と思わしき相手の軍は、見渡す限り横一列に広がった
身体の大きな狼が、普段は敵同士ともいえる野犬と、仲良くこちらへ向けて牙を剥いている。
一体どういうことだろうか。
「これは、クロノアが加勢していると見た方がいいですかね」
「あれが精霊術であるのであればな。だが、一度にあれ程の
「団長、セルミアさんへの緊急連絡手段は持っていないのですか?」
「ない。あったとしても、彼女をこの馬鹿げた小競り合いに巻き込むことはせんよ」
「そこは流石に元部下達の命がかかってるのですから、信念曲げてでも連絡して下さいよ……」
クダンフの指摘に言葉を詰まらせるローデス。
確かに、今は何の役にも立たない信念など捨てた方がいいのだろう。
殿下に国の未来を託すなら、潔く死ぬより、意地汚くても生にしがみついた方がいいのかもしれない。
ローデスは、セルミアへの緊急連絡手段がないと言ったが、事実は違う。
緊急連絡手段はある。
だがそれは、殿下が見つかった時にのみ使うと約束を交わした上で貰った希少な精霊道具なのだ。
(約束を破りたくはないが…… 死んでは連絡も出来なくなる。そうなっては殿下を探すという約束が守れなくなるな…… どちらにせよ、セルミアとの約束は破ることになりそうだ)
ローデスが暫し思考に耽っていると、他の兵達が何やら騒めき始めた。
「団長、これは本格的に不味いですよ。敵側に厄介そうなのが登場しました。ほら、見て下さい。あれを」
「何?」
ローデスが視線を先に戻すと、敵側の軍勢中央に巨大な何かがぼんやりと見えた。
それは緑一色の
すかさず双眼具を取り出し、敵の正体を観察し始める。
「あれは……
「
双眼具から目を離せないローデスに、
「ん……? 団長、どうしました? まだ何かいましたか? これ以上は流石にちょっと」
一向に双眼具から目を離さないでいるローデスに、クダンフが違和感を感じて声をかけた。
「団長、一体どうし……」
これ以上の不幸はそうそう起きないだろうと半ば自棄になっていたクダンフだったが、ローデスの双眼具を握る手が震えていることに気が付き、只事ではなさそうだと顔を引きつらせる。
ローデスが何か話そうと口をパクパクと動かすが声が出ていない。
それを緊張しながら見守るクダンフ。
一度生唾を飲み込み、双眼具を目に付けたまま深呼吸して呼吸を整えたローデスが、少しの間を経て再び口を開いた。
「で、殿下がいる……
見間違いかも知れないという可能性も一切考えず、ローデスはセルミアへの緊急連絡手段である精霊道具の使用に踏み切ったのだった。
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