がんばれ!はるかわくん! -9-
ヒミズさんはさらに細かく俺のものを刺激してきた。
恐怖でこわばっているはずの俺のそれが、反応しはじめるのがわかる。
中心を握られた手で上下に扱きあげられると陰嚢がうずいた。
先端がわずかに開いて、何かがこぼれ始めたのを、ヒミズさんの舌がすくう。
ヒミズさんに舐め上げられるたびに、下半身が腰ごとびくっ、びくっと動いて、抑えられない。
店長は俺の舌をうえから舐めてくる。
すでに俺は完全に覚醒していて、感覚ははっきりしているのに、体がとにかく動かない。
ヒミズさんにも店長にも、今の俺は抗えないのだ。
「……ん…っ…!」
ヒミズさんが俺の反応に呼応するように、くわえこんだまま、先走りをこぼし始めた俺の先端を舌でさらに激しく刺激してきた。
さむいはずなのに、そこだけが熱い。
ヒミズさんは執拗だった。
俺の性器を裏側から扱いてえぐり、俺の官能をより深く駆り立てて、誘掖する。
指の感触から、いつもの薄いゴム手袋をしたままだということがわかった。
「…ん…は……、うっ…!…」
… いってしまいそうだ…
… いきたくない……!
店長に握られた右手を、必死になって握り返す。
―― たすけてください!!
―― やめさせてください!店長!
すると、いきなり空気が冷たく感じられるようになった。
ヒミズさんが「俺」から顔を離したようだ。
…だが車から降りる気配は無い。
下のほうでなにかがごそごそと擦れる音がする。
店長もようやく俺の口から舌を抜いてくれた。
息苦しさから開放されて、俺は1度小さく咳き込んだ。
(こんなのは、いやです!)
「…はあ…はあ…はあ……」
声に出して言いたいのに、俺の口からは荒い息ばかりがもれて、ともすれば意識が遠のきそうになる。
運転席のルームライトがまぶしい。
目を閉じるとまた眠ってしまいそうで、落ちようとするまぶたと必死に格闘する。
店長に伝えたい。この恐怖を。
俺がどんなにこの行為をいやがっているのかを。
店長は俺の手をゆっくり離し、俺の頭のうえに置いた。
それから軽く振り返ると、無造作に運転席のほうに手を伸ばして、またこっちに向き直った。
手には小さな箱のようなものがあるのが見える。
俺のうえで蓋を開け、中から何かをつまんで、指に挟み、さらに箱の底のほうを探っている。
…注射器?
指に挟まれたものは、小さな注射器だとわかった。
店長は注射器をすぐに箱に戻し、また蓋をして運転席側に置いた。
手には何か丸くて黒いものを持っていて、俺にその手を近づけてくる。
くちびるに何かが触れたので、とっさに顔を横に倒したけど、こじ開けられるようにしてその何かを指ごと口に入れられた。
上を向かされる。
「ん……」
舌で押し戻そうとしているうちに、それはやがて溶けてきて、鼻先に抜ける香りと、その味で、チョコレートだとわかった。
店長の指先が何度も舌にあたる。
咬もうかな、と一瞬思うけど、こないだスケッチブックにデッサンした店長のきれいな指先を思うと、それができない。
それどころか、俺はおぼろげな店長の顔に、あろうことかまたもや見とれている。
店長の目は、今、俺だけを見て、…うれしそうに笑っていた。
(…これは…夢…?…)
だんだんと、恍惚にも似た感情が、チョコレートの甘さとともに俺のなかにひろがっていくのがわかる。
俺は、店長の指を、チョコレートと一緒に転がすように舐めた。
こんなことは普通じゃないとわかっていたが、店長のきれいな顔が目の前にあり、俺を、俺だけをうれしそうに見ているこの状況に対し、俺のなかでは幸福感すら芽生え始めていた。
こわい夢を見たあと、店長の笑顔を思い浮かべていると精神が安定してきたように、今もまた、本能的に、店長の顔に癒されようとでもしているのだろうか。
落ちようとする意識が、どうやら、俺の理性をも奪いつつあるようだ。
店長は笑顔を浮かべたまま、俺の動かない右手をとり、俺の人差し指を口に含んだ。
舌で絡めとられる。
動かないのに、感覚だけははっきりとしていて、俺の指が、店長の舌のうえでゆっくり転がされているのがわかる。
俺は、それだけのことを、なぜかとても恥ずかしいと思いながら、同時に、悦んでもいる自分に、少なからず動揺した。
やっぱりこれは、夢なのかもしれない。
チョコレートが頬をつたって流れるのがわかったが、俺は、現実と夢の挟間で、確認でもするかのように店長の指を舐め続けた。
「…ふっ…」
腿に冷たいものがあたって我に返る。
ヒミズさんの、手?
人の感じがしない。何か液体のようなもので濡れている。
「っ!」
ヒミズさんが行為を再開したのだ。
足を思い切り広げられたのがわかった。
濡れたヒミズさんの手は、俺の陰茎をいったん握り、剥き出しになった先端を確認するように一度なでて、下へとなぞったあと、…そのまま奥へと滑り込んだ。
(――――!!)
俺のなかに、ヒミズさんの指が潜り込んできた。
あまりにもあっけなく入ったので、俺はなんの準備もないまま、抗うこともできず受け入れさせられた。
「……ふぐっ……ん…んん……」
何かの液体が俺の体の下に向かってつたい、ヒミズさんの指までたどり着くと、ヒミズさんはなじませるようにその液体を俺の中に塗りこませた。
俺のなかを、手袋をしたヒミズさんの指がうごめいている。
ヒミズさんは淡々と作業をこなしているふうだった。
単調に動かされていたその指が、いったん引き抜かれると、俺が安堵する間もなく、指は2本に増えてまた押し込まれてきた。
「んんうん……!」
さらにヒミズさんは、もう片方の手で俺のものを掴んで締め付ける。
俺の体は反射的にのけぞった。
ソファがきしんでいやな音をたてる。
ヒミズさんの指に反応した体が、どうしようもなく震え始める。
ヒミズさんは俺の左足をソファの下に投げ出し、右足を、落ちないようにソファの背もたれに乗せたまま、俺を辱め続ける。
俺のそこはヒミズさんの舌でただでさえヤバいのに、ヒミズさんはさらに手を動かして俺の感じやすい部分を正確に刺激してくるのだ。
俺の中に潜り込んでいくヒミズさんの指先が、俺の体を無理やり押し広げる。
やたらツルツルとした、ヒミズさんのゴム手袋の感触。
奥まで届くと、広げられた指先が、俺の思考ごと、体全体をかき回した。
「……ッ…ン…ン…!」
……いく……
……いく……
―― このままじゃ……俺は……
喉が鳴る。
店長の指を噛んでしまいそうだ。
俺はひたすら店長を見た。
店長は、俺の指を口から抜くと、俺に顔を寄せてきて、耳元で、声には出さず
「がまんしてね。」
とささやいた。
店長の吐息が首筋にかかったが、俺は混乱していた。
どうして今、そんなことを言うんだ。
ヒミズさんを受け入れろというのか?
…いやです。ヒミズさんは、いやです!
せめて、店長ならいいのに!
…そうだ…
―― 店長なら、良かったのに……―
俺を、救ってください。
助けてください。
…店長……
そうだ…俺は。
俺は店長のことが、好きなんだ。
そのとき、はっきりと、それだけが自覚できた。
薄れそうになる、普通じゃない意識のなかで…
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