第107話 最終章開幕

「お父さん、私のユニークスキル何かなぁ~?」

「こらフーカ、もう6歳のレディなんだからもっと女の子らしくしないと駄目だぞ」


少女は父親と手を繋ぎながら礼拝堂への道を歩く。

父親は優しい顔つきで黄色い目がまるで外人のように見える。

少女は父親と違い青い目をしておかっぱ頭で楽しそうに歩いている。


「うん、フーカレディだからおしとやかにする~」

「よーし良い娘だぞフーカ」


礼拝堂の列に並び順番を待ってる時に男の子が出てきてスキルを2つ授かったと喜んでいた。

人によっては希に2つユニークスキルを授かる者も居てあの男の子もそうなのだろう。


「次の方どうぞ」


少女は中に入り祈りを捧げる。

そして、どよめきが神官達に広がる。

父親は何事かと心配しながら神官と共に出てきた少女のスキル名を聞いた。


「ユニークスキル『パンドラ』ですか?」

「えぇ、聞いたこともないスキルです」


少女は意味が分からないので父親の説明を待つが父親のユニークスキル『スキミング』をもってしてもその詳細は分からず、仕方なく「大人になったら使える凄いスキルだけど人に話してはいけないスキル」っと教えて家に連れて帰るのだった。


「そう、誰も知らないスキルなのね?」

「あぁ、俺のスキルでも見抜けなかったよ」


赤い目をした母親は旦那の言葉に嘘がないことを理解して娘の寝顔を見つめる。

母親のユニークスキルは『スピリチュアリティ』で質問したことに対する返答が嘘か本当かを見抜くスキルであった為信じるしか無かった。




そして、翌年…

運命の日はやってくる。



「どうもシズクの父です」

「フーカの父です。今日はお招き頂きありがとうございます。」

「いえいえ、娘のシズクもフーカちゃんと仲良くなるまでとガラリと変わって明るくなりましたからフーカちゃんには本当に感謝してるんですよ」


隣では二人の母親同士も会話をしておりフーカとシズクは仲良く遊んでいる。

そして、悪夢の惨劇が始まった。

突然の襲撃、不意を突かれて殺されるシズクの一家。

フーカの両親は強盗が最後に残していった炸裂魔法からフーカを庇う。


フーカに覆い被さった両親は背中に大火傷を負うがフーカだけは無事で安堵の息を吐く。

しかし、フーカの目の前に炸裂魔法で吹き飛ばされたシズクの変わり果てた姿が写り混む。

声にならない叫び、そして後ろで覆い被さってる両親が既に息をしていない事は気が付かずフーカは祈りを捧げる。



「どうかシズクちゃんを助けて下さい神様!どうかシズクちゃんを助けて下さい神様!どうかシズクちゃんを助けて下さい神様!どうかシズクちゃんを助けて下さい神様!…」


炸裂魔法の炎が家中に広がりフーカは祈り続けた。

目の前に見えているシズクが焼かれ自分も炎に包まれていく。

彼女を庇った両親が彼女を押さえて動けなくしていると言う皮肉な現実…

その時、フーカのユニークスキル『パンドラ』が発動した!


『パンドラ』絶望に包まれた最後の最後に希望を与える幻のユニークスキル。


それはフーカとフーカに触れていた両親の最後の想いが溶け合い一つに成る!

シズクを助ける為に人生をやり直せる『転生タイムリープ』と両親がフーカを守るためにそのユニークスキルをフーカに自身の代わりとして譲渡した。

そして、フーカも焼け死にユニークスキル『転生タイムリープ』によって生まれた瞬間へ巻き戻る。

だが、フーカの中に両親の魂はスキルとして入っておりその存在はパラドックス回避の為に転生後の世界には存在しなかった。

捨て子としてフーカは子供の居なかった老夫婦に拾われその家で暮らして成長する。

今度こそシズクを助けるために…





「うぁぁぁぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」


自室のベットの上で飛び起きたオッドアイのフーカは悪夢を見たのだと理解する。

だが、一体どんな内容だったのかは思い出せ無かった。


1月1日、フーカはこの世界にはシズクが生きてこの日を向かえられたのを理解しゴンザレス太郎なら自分を助けてくれると信じてベットから降りる。


「残りの3ヶ月絶対に生き延びてやるわ!」


フーカの意気込みを嘲笑うかのように運命の歯車は回り出す。





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