少しの希望と少しの失望

@yukiisi

第1話 憧れと夢の差

 中学の時の夢を見ていた、夢だと理解していても覚める気配はなっかた。

教室で自分と友達が楽しそうに話しているのを、僕は遠くから眺めていた。

何がそんなに楽しかったのかは覚えていない。つい二ヶ月前までのことなのに、まったくと言っていいほどに覚えていなかった。

 しかし、楽しそうに笑っている自分を見て思った、『僕は本当に楽しかったのだろうか?』

 目覚ましが鳴る少し前に目が覚めた、目覚ましの音にたたき起こされたわけではないのに、どこか憂鬱だった。とりあえず、今日の予定を確認しようと部屋のカレンダーに目を通す、


「あっ、今日高校の入学式じゃん…」


僕こと谷口幸也は、今日から高校一年になります。


 新しい制服に着替え、朝食を一人、食べながらTV のニュースに目をやった、今日の天気を確認すると

【午前中;晴れ  午後;曇りのち雨】となっていたので、午前中には、入学式は終わるから傘はいらないか、と思いながら黙々と箸を進める。食べ終わった食器を洗い、荷物の最終確認を終えて家を出た。

 本来の予定より一時間ほど早く学校に着くことになるが、早い分には問題ないと思いながら電車に揺られていた、学校までは一度乗り換えをしなくてはいけないのが、少しめんどくさく感じるが、高校生らしさがあって嫌いではなかった。

 電車の中では、高校生活について少し考えていた、部活は何部に入部しようか、友達はできるだろうか…などなど、ごく普通の高校生が考えそうなことを考えていた。その途中で今朝の夢のことを思い出した、『僕は本当に楽しかったのだろうか?』思い出すと同時に少し頭痛がした、そこまで重要なことでもないと思い、そのまま、高校生活について考えることにした。


 学校近くの駅に着き、そこから10分ほど歩き、僕が通うことになる学校に到着した。

 クラスは事前に郵送の書類とともに届いていたため、場所を確認する必要があるだけだった。


「1年S科3組は…7階、階段上って手前左側か……7階!?」


思わず声が出たし、何度も見返した。しかし、結果が変わることはなく【7】という、本来ならラッキーな時に用いられることがあるこの数字が、今は呪いのように感じられた。

 この学校の校舎は、1号館、2号館、3号館、4号館、と4棟からなっており、基本的に授業は、今、僕がいるここ、1号館で行われる。この1号館は、他の2,3,4号館が4階建てなのに対して、8階建てとかなり大きい。

そして今目の前に書いてある7階という文字…、8階は生徒、職員会議室なので、実質最上階での授業。


「あはは、毎朝7階まで登れと…いくら高校生は体力あるってイメージがあってもこれはなしでしょ。」


 この学校への不満を爆発させながら7階まで登り切り、教室に入ると外の景色が見えた、息切れを起こしているせいで声は出なかったが、キレイだった。

 

 しかし、その瞬間は一瞬だった僕の目の前にあったのは確かに景色だった、でも、本来そこにはあってはいけないものが混じっていた。窓枠に立ち、朝日を浴びながら涙を流している一人の女子生徒がいた。

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