第31話 ワイバーンのフカヒレスープ

その日は朝から雨だった。

ケビンに作って貰った朝食のワイバーンのフカヒレスープを食べながらさやかとルーシーは外を見つめる…

ワイバーンのフカヒレってなんだろう…って考えるさやか。

雨の中の決戦か…っと考えるルーシー。

この時代は魔法による結界が雨を防ぐので普段は体を濡らすことはない。

だけど…


「さぁ!遂に始まりました第11区の代表選抜大会!」


司会が大きくマイクで開始を宣言し参加選手も観客もこの日を待ち望んでいたのがヒシヒシと伝わる。

あれから二人は聞いて初めて知ったのだがこの代表選抜大会でそれぞれの種目の上位2名が4年に一度開かれるオリンピックの選手に選ばれると言うのだ。

つまり、これでルーシーは一人勝ち抜くか、さやかとワンツーフィニッシュを決めてなおかつルーシーが勝たないとその時点でさやかの勝ちが確定する。


「負けられない…」


ルーシーの呟きが控え室に居る様々な選手の耳に届く。

誰もが同じ気持ちだ。

そして、その時が来た。


「それでは魔壁を展開します。」


このアナウンスと共に会場の観客達からブーインクの嵐が沸き起こった。

それは控え室に居る全ての選手も同じ気持ちだ。

魔壁を展開し魔法が使えない空間を作り出したと言うことは当然結界も機能しなくなり天井に当たる雨音が聞えだした。

観客の上には屋根があるが選手が競う場所は雨に打たれる。

条件は全員が同じ、それでもやはり普段は雨に濡れたことがないエルフ達にとっては辛い試合となる。


案の定悲劇は頻発した。

様々な競技で雨によるスリップや事故が発生した。

それでも誰もが真剣に戦い時には勝ち時には負ける。

幾つもの勝敗が決して暖まった会場に二人が出るときが来た。


「さぁ、行くよさやか!」

「うん、負けないよルーシー!」


二人は吹っ切れたように手を繋いで会場へ進むのだった。

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