第6話 飲み物はマティーニ、つまみにイカの塩辛、もずく酢、タコわさび

あれから2月が過ぎていた。

さやかは節約に次ぐ節約でなんとか30万円を貯金を崩すことなくやりくりしていたが無理はやはりある日突然にやってくる。

睡眠不足と溜まった疲れのせいで夜のコンビニのバイトで大きなミスをしてしまいそれを切っ掛けに次々とボロが出始めた。

会社への寝坊による遅刻、仕事でのミス、そして、不注意によりバイクとの接触事故に遭ったのだ。

幸い大きな怪我はなくバイトに間に合わなくなるとバイクの運転手に大丈夫と伝えバイトに行ったのだがさやかはもう限界であった。


そして、その夜さやかは決心した。

翌日、会社には退職願いを提出しバイトも今月一杯で辞めることにした。

さやかは風俗に体を落とすことを決めたのだ。

その為の身辺整理を一ヶ月掛けて行った。


その月の月末、さやかは同僚の和井を飲みに誘った。


「二人で飲みに行くの久しぶりだねさやか」

「ごめんねりあらちゃん、突然誘っちゃって」

「いいのいいの、それより噂で聞いたけど仕事辞めちゃうんだって?」

「うん、それで今日はちょっとお願いがあってね。まぁ詳しい話は店で話そっ」

「よし、いつもの八福神行くか」


思えばこの『和井りあら』さんとも長い付き合いだ。

会社の新人研修の時に「りあらって変わった名前ですがよろしくお願いします」って言った次に「尹小田口絵さやかです。変わった名前ですがよろしくお願いします」って続けて同じこと言ってから仲良くなったんだよね。

今考えたら懐かしいな…


居酒屋『八福神』に向かいながら出会いを思い出してさやかは溢れそうになる涙に堪えていた。

半年前はまさかこんなことになるなんて予想もしてなかったのだから仕方あるまい。

店に着いたらいつもの角の席に二人して座りいつものマティーニと言うカクテルを注文する。

居酒屋なのに店主が若い女性に人気のカクテルってテレビで見て、店に出し始めたって初めて来たときに聞いてから必ずこれを注文するようになった二人はいつものようにそれで乾杯する。

おつまみはイカの塩辛にもずく酢、タコわさび。

オヤジか?!


「それで、まずは全部話してよ」


さやかはりあらに全てを話すのだった。

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