第2話 そして伝説へ…

今日は忙しかった。

珍しくお客さんが多かっ…

普段通りお客さんが多くて大繁盛だった。


おかげで普段なら交代でとれるトイレ休憩も中々取れず奈村はそろそろ限界が近かった。

時刻は夕方、夕御飯時と言うことで日中のラッシュが落ち着き余裕が出来てきた。

安居さんには忙しくてもちゃんと休憩は与える店長奈村は常に女性の味方だ。

正義の味方が正義ではないように女性の味方の奈村も女性ではない。

そんな言葉遊びを考えながら膀胱が主張する信号に遂に耐えきれなくなり安井さんに声を掛ける奈村


『ごめん、安居さん。ちょっと厠へお花を摘みに行ってきます』


切羽詰まってても紳士であった。

限界が近い時にトイレに移動する時の紳士の動きは決して慌てず急いでゆっくり歩くことである!

奈村はトイレを我慢している事を通りすがりのお客さんに悟られない、けど歩幅は普段の15%広めに取り決して走らず競歩でトイレに駆け込み解放と言う名の喜びを堪能する。


何かの作品で言ってたな、人は体外に何かを排出する時に快楽を得るように出来ている。

全くその通りだ。


そんな事を考えながら解放と言う名の喜びを堪能し終え、手を洗い鏡を見て眼鏡の角度の微調整を済ませてから店に戻る。


「あれ?安居さん?」


店に戻ると店内にお客さんは居らず安居さんの姿も見えない。


「お客さんの忘れ物でも届けに行ったのかな?」


たまに有ることなのだが会計を済ませてお釣りを受け取ったのに満足して商品を忘れそのまま店を出ていくお客さんが居るのである。

特に店が駅の近くと言うことで急いでいてそのまま行ってしまう事が過去にもあったので奈村はそう考えた。


そして、その日閉店まで安居さんは帰ってこなかった。


「何かあったのだろうか?」


閉店作業を進めながら悪いと思いつつ安居さんのロッカー内に私物が残ってるか気になった奈村は店を閉めたら確認しようと考えていた。

そして、それを見つけてしまう…


それは日中に見つけたあの表紙の無い本であった。

それがレジの足元に立て掛けるように落ちていた。

丁度死角になってて仕事中は気付かなかったのだ。


「これは…なんでこんなところに?」


奈村は何か嫌な気配を感じながらその本を開いた。

そして、最初のページに描かれていたそれに驚きそのまま奈村の体は本の中に吸い込まれてしまった。

その最初のページに書かれていたのは一言…


『店長…助けて』


膨大な文字で出来た通路の中を落下していく奈村は反射的に叫んだ!


「新手のス○ンド使いの仕業かぁー!」

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