聞いてくれ転生した。

ラブアンドぴーす

プロローグ 何を間違えた私よ

私は今年で卒業する。

長かったようで短くもある高校生活、そんな高校最後の1年間。私は何か間違えてしまったらしい。


1年、2年と問題事は多々あったが至って普通の高校生活だった。2年間同じクラスの友達や違うクラスだが恋人だっていた。私自身も少しネガティブな性格ではあったが面倒見もあり、人並みには優しいと思っていた。

グループも個性的な友人が多かったが、目立たつひっそりと過ごしていたと思う。そんな私が3年になる時、たぶんそこからだろう予兆はあった。


クラス替えの際、私以外の友人はみな同じのクラスになり私だけ1人別のクラスになってしまった。


少し寂しかったがこればかりは決まったことだし、しょうがないと違うクラスになった友人達に言われ、私も諦めて1人決まったクラスへと向かった。第1の原因はこれである。




クラス替えから1ヶ月は経った頃

このクラスにも少し慣れ、それぞれの仲のいい友人が集まったグループが出来ていた。ほとんどは2年から仲のいい友人とグループを組む人が多い。私は幸いそこまで仲良くはなかったがそこそこ喋る知り合いが同じクラスにだったのでその子のグループに入らせてもらい、ぼっちルートは回避できた。


だが、隠れオタクだった私はあまりドラマなど観ておらずグループの会話についていけず、ことある事に理由をつけ他クラスの友人の元へ逃げた。これがおそらく第2の原因だ。

もっと、このグループの子たちと仲良くなっていれば1人になることは無かったかもしれない。




それから夏になり、体育祭の時期になった。

運動は好きだが如何せん、運動神経は皆無だ。だがどういう偶然か運動が得意じゃない者がこのクラスに密集してしまったらしい。

そうなると必然的に運動神経はないがそこそこ走れる私はクラスリレーのメンバーに選ばれてしまう。


この高校の体育祭は最後の種目にクラス対抗リレーというものがあり、それぞれのクラスから速いもの順で15人選ばれ、1人トラック半周走り次の人に繋ぐのだが、最後から2番目の人とアンカーはトラック1周しなければならない。そのアンカー…ではなく最後から2番目に私はなってしまったのだ。これがたぶん最後の、第3の原因だろう。これで確定したとは言い難いがこれ以外であの人たちに目をつけられる原因が私には皆目見当もつかない。




これだけ話せばリレーで私が何かしでかしたことは明らかであろう。



運動日和と思うぐらい清々しいほど雲がない快晴な空の下…最後の種目のリレーの、自分のクラスの私の前の順番の男の子が隣の他クラスの男の子と接戦を繰り広げながら走ってきている。そのバトンを受け取る私は…





いや、受け取ろうとしたバトンを私は緊張とプレッシャーで手が滑り、落としてしまった。




そこから、なんとか挽回しようと直ぐにバトンを拾い何人か抜かされてしまったがまだ間に合うと走り出した瞬間だ…焦ってたのだ、それしかない。足がもつれ、高校生にもなって盛大に転んでしまった。そして、また何人かに抜かされ、転んだ私は…そこからは頭が真っ白で、アンカーの頑張り虚しくビリから2番目だった。





このクラスで1番運動ができる子は所謂勝ち組で学年では目立つグループに入っていた。

簡単に言えばアンカーの子はその勝ち組のグループの子で私の失敗のせいでその子の顔にも泥を塗ってしまったようだ。

クラス対抗リレーごときでと思ったが、その子はそれほどやる気だったのか、それとも仲間に散々勝つと自慢していたのか…今となっては分からない(でも、運動が出来ないのが多いクラスで勝つのは実質無理だと思ってたのは内緒だ)。


ここからは簡単だ、その子は勝ち組で仲間にも慕われている。私はぼっちのなりかけ。

クラスのみんなはどっちを味方するから一目瞭然だ。





いじめといっても私の場合、

暴力など物理的な攻撃は無かった。むしろ、私の存在はクラスに無かった。所謂無視だ。言うは簡単だがこれはなかなか精神に来ることをこの体験で痛いほど分かった。

話しかけても誰も反応しない。

ノートを渡そうとしてもまるで私の存在はないかのように無視され、他クラスの友人の元へ行っても先手を打たれ避けられるようになった。恋人も…言わずもがな別れた。



それがずっと続くといよいよみんなから本気で認識されなくなってしまって。

たぶん、私自身も自分が何なのか分からなくなってしまったのかもしれない。テストでも名前を空欄にしてしまい、0点を何個も取ってしまった。名前だけではなく勉強すら手がつかなくなり、ひたすら自分は何なのか問いかけた。




志望していた大学は落ちた。

当たり前だ。ろくな勉強もせず、名前は空欄。親からは泣かれた。…ただ胸の奥で何か詰まってる感覚だけが私の中に残っていた。




あと一ヶ月で卒業式だ。

学校には行っていない。友人も誰も来ない。

親からの厳しい視線。…なにを間違ったのか。




私は久々に外に出た。



久しい冬の寒さが少し残る春の新しい風。



何か変わりそうな予感にスキップしながら信号を渡る。もちろん信号は青だ。



流石に赤信号へ飛び出す勇気はない。




そのはずだった。


トラックがスローモーションのように遅く走ってる。いや、ちがう。そう見えてるだけだ。




運転手は寝ているのかうつ伏せだ。


身体は動かない。でもトラックは止まらない。






ドゴッ!!!






あの時の体育祭の時のような空の青さ。



めいいっぱい広がっている。



人が集まる。

…いつぶりだろう…私はここに存在する。




不謹慎だけど轢かれてよかった。




私は存在している。最後に気づけた。





あの時、無視したあいつら。







聞こえないふりをしないで。




胸に詰まっていた何かがスッと消えた感覚が最後の記憶だ。

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