monitor01

商店街の協力を得るのは比較的簡単だった。かなりの人数を総動員するのは大変だったが、寝ている間にある特定の音声を聞いてもらうだけでそこそこの金額が手に入る、その事で同意を得られた。というのもターゲットXに関しては歩いた場所からどんどん町が砂に変わるという怪現象を引き起こしていたので、誰にも打つ手はなく、行き先々の商店街が破滅に追いやられていく有様であった。

数々のアプローチの上で最も効果を表したのが、無意識への働きかけであった。彼の夢の中に潜入するしか手立てはなかった。それはいつか見た映画からヒントを得た。私好みのやや猟奇的なサイコSF、のようなジャンルだと思う。この言葉は今私が瞬時に作成した造語である。

所謂我々は便利屋という性質をも持ち合わせているのだ。

調査の結果、Xの過去のトラウマによる、所謂、自己が繭に変わって自身が消失するという現象に悩まされていた。安部公房の小説そのものであるがXの使っていた教科書にその文章は載っていた。

Xは次元軸のズレに飛び込みターゲットの存在を別次元に送るという旅行法に抵触したためマインドコントロールによる心理手錠で拘束されている。

マインドコントロールにより、彼はどの次元に行っても自分の居場所がなく歩いた後全てが砂に変えるビジョンを人の脳へ送る信号を送っていると錯覚している。しかし実際は信号を送るのは彼ではない。送る組織は公開しない。

彼をトラウマにより更に拘束を強めるため、moniter 01の件は試みられた。


効果について、彼は商店街の書店の主人として全てを忘れて暮らしている。時々彼からの情報を、心理錠を外して記録している。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る