第16話
「ナナシ、まず魔法を使う上で最も大切なのはイメージ力だ。イメージは得意かい?」
「あぁ勿論!常日頃から頭の中に理想の横乳や下乳を思い描いている俺に死角はない」
「ははっ、やっぱり動機は不純だけど流石だね。まぁ僕も脳内に理想のデレ妹系幼女を思い描いているんだけどね」
ふむ、アイザックはデレ妹系幼女が好みと…〆メモメモ
「それで、魔法はどうやったら使えるんだ?」
「ふふふ、焦らない焦らない。まずはマナについて教えておこう」
俺はそんな事よりさっさと魔法をぶっぱなしてヒャッハーしたかっのだが、アイザック曰くとても重要な事らしいので仕方なく耳を傾ける。
「まずはマナはすべての現象や法則において優先される」
うぅん?つまりどういうことだってばよ。
俺の心を読んだ訳では無いだろうがアイザックが説明してくれる。
「つまり、魔法によって火を起こしたいとします。で、普通なら『酸素』『燃える物』『一定の熱』が必要なんだ。でもマナを使った場合その法則を無視して酸素も燃える物も熱がなくても火を起こすことが可能なんだ。即ちマナというエネルギーを代償に『燃焼』という現象を引き起こしているんだ。つまりマナさえあれば、どんな現象も運動も起こすことが出来るんだ。こんな感じにね」
そこまで言うとアイザックが右手を何も無い空間に伸ばす。
すると掌の少し離れた位置に拳大の炎の玉が現れる。
「おぉ!!」
俺は初めて見るいかにも魔法といった現象に興奮してしまう。
「このように今この空間には酸素しかないのに火を発生させる事が出来ている。普通なら有り得ないけどマナというエネルギーのお陰でこの現象を起こせているんだ」
ふむ、マナは全ての現象や法則より優先順位が高い…か。
「で、次はこの火の玉にマナを代償に運動エネルギーを与える。すると…こうなるんだよ」
アイザックがそう言うと先程までアイザックの掌の近くにあった炎の玉がプロ野球の投手もびっくりな速度で壁に向けて飛んでいく。
そして壁まで到達すると火の粉を撒き散らしながら爆散した。
わぁ…あんなの食らったらひとたまりも無いな…
「や、やべぇっす。まじぱねぇっす」
初めての魔法の迫力に、言葉遣いがなんだか変になってしまった。
「つまり魔法はマナを代償に現象を引き起こすって事なんだ。で、更にその現象に指向性を持たせるためにマナを代償に運動エネルギーを加えて言ったりして自分なりのカスタムをするんだ。僕がさっき使ったのは所謂『ファイアーボール』といって初歩の初歩の魔法なんだけど、まず初めにマナを代償に『燃焼』という現象を起こし、次にマナを代償に『運動エネルギー』を加え火の玉を飛ばしたんだ」
「な、なるほど!」
魔法すげぇぇえ!ファイアーボール!ゲームでよく出てくるあれか!まさか本物のファイアーボールを見ることになるとは…!
やべぇな、魔法を自分でカスタムして…ぐふっ、ぐふふこれは夢が広がりますなぁ。
「だから『ファイアーボール』と言っても人それぞれで飛んで行ったあと爆発する物もあれば火の色を変えたりした物があったりするんだよ」
ば、爆発だとぅ!?爆発はロマンじゃぁあねぇか!
「どう?理解出来た?」
「う、うん多分。つまりマナはトランプのジョーカーみたいに何にでもなる万能エネルギーで、それを代償に何でも現象を引き起こせるって事だよな?」
「そうそう、流石だねナナシ。理解力がいいね」
あまり頭に自信が無いので心配だったが杞憂だったようだ。
しかし、褒められるというのは、幾つになっても嬉しいものだな。
「あ、でも一つの魔法に沢山カスタムを加えた時に使うマナはどうなるんだ?掛け算なのか?」
もし倍々方式なら一つの魔法に使うマナはがとんでもない事になりそうで少し心配になる。
「お、やっぱりナナシは良い所に気が付くね。安心していいよ足し算方式だから。ちなみにさっき使ったファイアーボールの場合火の玉を発生させるのに大体あの大きさだとマナを100位消費するかな。で、次に運動エネルギーで50位使ったから合わせて150マナ消費した事になるんだ」
なるほど…あの位のファイアーボールで150マナか。
確か俺のSFM値が18019だったよな。つまり使えるマナは18019マナか。
つまり俺は百二十回はファイアーボールが撃てると。
なるほどなるほど理解出来て来た。
「それと、これも大事な事なんだけど例えばさっきのファイアーボールに『凍る』という現象を付けることは出来ないんだ」
「え?なんで?」
「なんで、と言われてもそういう物としか言えないんだ。まぁマナで起こせる事にも限界があるんだ。火の玉が当たれば普通は燃えるでしょ?なのに凍り付くのはおかしい。つまりそういう事なんだ。起きている現象と事なる結果を生み出そうとすることは出来ないんだ。それをすると…こうなるんだよ」
またしてもアイザックは掌の先に火の玉を作ると先程と同じように壁に向かって飛ばす。
すると壁に当たった瞬間先程とは違い何も起こらず消えてしまった。
「え、消えた」
「そう、組み合わせによっては今の様に相殺しあって消える事があるんだ」
ふむぅ、そういう事か。現象は起こせれてもその現象によって起きる結果を変えることは出来ないと。
んで、無理に変えようとすると魔法自体がエラーを起こして消えてしまうのか。
「分かった、一応は理解出来たと思う」
「おっけー。一応マナについてはこんな感じだから。しっかり復習する様に」
「はーい、じゃあ早速魔ほ―」
「はい、ざんねーん。次は属性についてでーす」
次こそ魔法が使えると思ったのにまたしてもアイザックに防がれてしまった。
でも、どんな属性があるのかも気になるので大人しく聞くことにする。
俺は待つことが出来る子なのです。
「で、今回使うのはこちら!」
アイザックはまたしても何も無い空間から何かを取り出した。
「んで?それは?」
「これはその人の属性適性を調べてくれる『適性君』です」
でたー『〇〇君』シリーズ。そういえば座学の時に『適性君』とやらの名前もあったな。
そういえば数えるのが面倒だったから数えてないが相当な数があった気がする。
「それで俺の適性が測れるのか」
「そうそう、じゃ早速手を置いてマナを流してみて」
『適性君』は無色透明な正方形をしており何だか水晶玉ならぬ水晶体と言った感じだ。
「てか、マナを流すってどうやるんだ?」
「あ、教えてなかったね」
アイザックはアハハと笑って誤魔化すと説明を始めた。
「うーん説明が難しいんだよなぁ…取り敢えず『適性君』に触れて、触れた部分に意識を集中してみて」
うーん説明が大雑把だなぁ。まぁやってみるか。
俺は『適性君』に触れると、触れた部分に意識を集中する。
すると『適性君』に変化が現れ始めた。
正方形の六面がそれぞれ違う色に変わり面ごとに数字が書いてある。
「お、出来たみたいだね。どれどれ?」
ちなみにこう書いてある。
赤 4
緑 5
青 3
黄 2
白 4
黒 5
ふむ?これは赤が火属性と言った感じなのだろうか?
取り敢えずアイザックの方を見る。
「ん?あぁ説明するよ。まずこの色は属性を表していて、赤は【火】緑は【風】青は【水】黄は【土】白が【光】黒が【闇】だね。次に数字だけどこれは適正値と言って5が上限なんだけど高ければ高いほど適性があるって事だね。適正値が0と場合はその属性は使えないんだけどナナシは一応全属性に適性があるみたいだね」
へぇ〜よかった〜全属性使えるなら文句無しだな。
「数字が違うとどう変わるんだ?」
「出力かな?」
「出力とは?」
「一つの魔法に使う事の出来るマナの量が変わってくるんだ。例えばさっきのファイアーボールにマナを注ぎ込めば注ぎ込むほど大きくて威力の高いものになるんだ。で、例えば適性が5の人は1000マナまで使えるとしたら、1の人は200マナが上限って事だね」
「なるほど、実際は適性5の人は一つの魔法にどのくらいまでマナを使えるんだ?」
「えーとね。使える量はその人のSFM値に比例するんだ。ナナシのSFM値は確か18019でしょ?だから適正値が5なら18019まで使える。4なら14415までって感じかな」
お、おぅ。細かい計算早いなアイザック…
アイザックもしかして頭良いのか?
まぁ、それは置いておいてだ。
つまり俺がフルパワーを出せる属性は風と闇な訳か。
「ふむふむ、理解出き…?」
「ん?どうかしたかい?」
「いや、属性はこの六属性だろ?ならさっきからアイザックの使ってた空間魔法ってのはなんなんだ?」
「あ〜そうだったね。複合属性と言って、まぁザックリ説明すると闇属性と光属性を掛け合せると【空】になるんだ。まぁ空属性なんだけど空間を操れるんだ。で、ストレージの魔法は別の異空間を作る魔法でそこに物をしまったりしておけるんだ。他にも複合属性は風と水を合わせて【凍】とか光と火で【陽】とかだね。なんで光と火で雷なのか、とかは疑問に思うだけ無駄だからね。そういう物だと思っておけばいいから」
へぇ、複合属性か、ますますゲームみたいですな。
まぁ謎も解けたし早速魔法を――
「次は魔法の区分でーす」
ぐぬぬぬぬぬ!おのれアイザック。
その後のアイザックの執拗な連続説明アタックにより魔法を使う事叶わず昼休憩となってしまった。
おのれ許さんぞアイザック!
この時俺は、この後の昼食でアイザックからおかずを盗む事を固く誓った。
「ナナシ?どうしたんだい?早く食堂に行くよ?」
アイザックが扉の所でそう急かしてくるので俺も向かう。
アイザックと共に訓練室を後にして食堂へと向かう途中、俺は先程習った事を頭の中で復習していた。
えーと…魔法とはマナを現象に変えることであって、属性は火 風 水 土 光 闇の六属性で適性とかがある。
で…えと、複合属性とかがあって、変なカスタムとかしたら魔法が消える。
それで、確か魔法使い過ぎてマナが枯渇すると極度の倦怠状態になって最悪の場合、気絶する事もあるとか。
マナの残量管理は大切に…
マナは休むか寝るかで回復…
「ナナシ!」
「ん…!?どうかしたのかアイザック?」
「いやいや、どうかしてたのはナナシだよ?もう食堂に着いたよ」
「おぉ本当だ。すまんすまんボケっとしてた」
どうやら集中し過ぎていたようだ。
気付けば食欲を掻き立てる香りが鼻孔をくすぐっているではないか。余程集中していた様だ。
「さぁ昼食を食べに行こう」
「ういー」
俺達は食堂から漂う香りに引き寄せられ、そのまま一直線で食堂へ向かうとそれぞれ料理を注文し食事を摂った。
そして現在は午後の訓練をする為に訓練室まで戻っているところだ。
食べた後は寝たい所だが、今は早く魔法が使いたいので此処は耐えて頑張ることにする。
うん偉いな俺。
「ふぅ、食べた食べた。やっぱりここの料理は値段は親切設定なのにレベルが高いな〜」
「まぁ、ここの食堂は腕の良い料理人を雇ってるらしいからね。それよりナナシ?僕のタコさんウインナー知らない?ねぇ?ねぇ?」
アイザックがにこやかな笑みで俺に聞いてくる。
「んー?ぼく知らなーい。なんの事か分かんなーい」
ふっ、知らんなタコさんウインナーなんて。
アイザックが食事中の幼女に夢中になっている隙に俺によって咀嚼された哀れなタコさんなんて知らんな!
「そっかー。ならこの後の訓練は魔法の危険性についての説明をしないとな〜」
「いや〜タコさんまじ美味かったっす」
「なら、代わりにナナシの下のタコさんを頂こうかな?」
「おぅ、嘘やろ…?」
「うほっ」
その後、明日の昼食のデザートを譲る事で手を打ち、なんとか俺の可愛い可愛い未使用タコさんを守る事が出来た。
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