懐疑

『天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず。それは事実だ。どんな人間にも障害等の身体的・能力的なハンディキャップが無い限りは生まれながらにしての優劣は無い。有名人になりたければその為の努力をすれば良い。学者になりたければその為の努力を積み重ねれば良い。逆に、楽に行きたければその為の努力をすれば良い。何事も「努力」の問題なのだ。人と人の間に生じる格差―――それらは能力の格差等ではなく、幾つの努力を積み重ねて来たのか。それだけなのだ。』昔、自分を応援してくれた裏切者が言っていた安っぽい単語の陳列を思い出しながらアルニカは壁に掛けられたベルトを横目に支度を終えると自宅の玄関へと向かった。この数メートルの廊下が、アルニカにとってはこの上なく長いものに感じた。その最中でアルニカは思った。そうだ、「その為の努力」さえすれば人は善人にでも救世主にでも悪人にでも革命家にでもなれるのだ。その言葉は確かに何も間違ってはいなかった。


reboot

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る