血を吐く百合

座敷のかたすみ柱の上の

黒い額縁 中に百合


祖母が描いたと伝えきく

百合は赤色 傷の色


ある日 障子を閉め忘れ

夕陽が中に差しこんだ


額縁カタと音を立て

見ればかすかにふるえてる


百合は下向き花ひらき

真っ赤な色を流しだす


赤は柱を這いおりて

畳の隙間に沁みてゆく


赤をひとばん吐きつづけ

百合は真白ましろになったとさ


やがて時ゆき屋敷は空地そらち

草木がはびこるまんなかに

おおきな百合が 咲いたとさ

真っ赤な百合で あったとさ

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