緋衣雨曝し

ぼうぼうと降りつける雨の

まだ薄暗い気配の中に

一つの赤色を見た


部屋の窓辺のすぐ先の

葉のない桜の枝の先


何度も目にした光景だ

今度の衣はどうだろか


やがて雨脚が強まって

風の吐息が幹と枝とをしならせた


いまだ

飛び立て


赤い衣が波打った

枝の先から離れれば

あとは空が待っている


赤い衣が傾いた

枝は今度も強情だ

意地でも行かせたくないのだ


赤い衣が落ちていく

土がはじける大地にぶつかり

雨のしぶきと交わって

やがて木の根へ染み込んでゆく


私は見ている

いつまでも見ている


お前が大空へ舞い上がる

夜明け前の景色を

思い浮かべながら


いつまでも待っている

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