第28話 暗闇の会合
――某国 旧軍事研究施設跡――
「なるほど、これが新たな《
タイムリミットが近付いていたとはいえ、疑似覚醒していた者を退けるほどの力を発揮するか。」
「まさか
いえ、
「だが解せないな。あのファミリーネーム、『坂宮』だったか? 古くから魔術や魔法に精通した家系では無いはずだが。」
「
全くもってその存在は、
「あら、
アプローチが異なるとはいえ、此方らに最も近い存在になったことには変わりませんわ。」
「しかしその認識は、いささか早急ではないか?
《紅蓮の炎槍妃》、
「いいえ、そうでは無いと確信しますわ。貴方もそう思うでありましょう?
《万剣の創造者》、アーサー・ヴァンドール様?」
「そうですね。彼ならいずれ、我々と肩を並べる存在となりうるかもしれません。
しかし彼の覚醒は極めて一時的。さらに一般に覚醒の引き金と言われている強い意志とは、また別のものだと見えます。故にしばしの様子見は必要かと思いますね。
《
「いや、様子見をするのであれば異論はない。
事を決めるのは……先ほどから全く口を開かない、そこの仮面の傭兵が動いた後でも遅くはないだろうからな。」
申し訳程度の明かりしか灯っていない真夜中のロビー跡。そこにある埃を被った受付カウンターに寄りかかった仮面の女性は、咥えていた煙草を足元に棄てた。
「このカーラベイン・ゲゼル、そのような事には毛頭興味無い。
ただ願うは……安らぎのみである。」
カーラベインはそう言うと黒いマントを翻し、研究所跡を出ていった。
「さすが、《
あそこまで我道を行く人に付いていこうとするのは、果たして理想を妄信する信徒か、あるいは……」
「アーサー様? 余計なことは考慮すべきではないと思いますわ。
それよりも、此方らも行動を開始すべきだと思うのですが。どうでしょう?」
「そうだな。私兵も揃ってきた頃合いだ。準備運動をするには良き時期かもしれないな。」
「そうですね。僕らも僕らの成すべき事を成しましょう。
では皆さん、これにてお開きということで、また近々。」
「えぇ、ごきげんよう。」
「うむ。」
3人はそれぞれ別れを告げると、夜の闇よりさらに深い暗闇の中へと姿を消した。
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