第6話 謎とテロ
――煌華学園 学生寮――
寝ようとしていたところに来た、唐突の客人の正体はユリだった。しかも寝巻きで。
白い寝巻きって、初めて会った時も白いワンピースだったし……どんだけ白好きなんだ?
「入ってもいい?」
「あ、うん。いいよ。」
って、なんで俺もあっさり許可してるんだよ? 自分でも謎だ。
俺はユリを入れるとドアに鍵をかける。誰にも覗かれないようにしっかりと。
……いや、お持ち帰りとかそんな行為をしているんじゃないから、何も後ろめたくはない……はずだ、うん。
「ど、どうしたんだ? もう寝てもいい時間だろ?」
「……これ」
そう言ってユリは自分の携帯を見せてきた。これは……受信したメール? 受信時間はついさっきのようだ。
『今夜あなたの元に行きます。待ってて下さい。』
……ホラー映画やサスペンスドラマにすら出てこなそうな文面だな……。
「これ、心当たりは?」
「全くない……アドレス帳にも登録してないし、短文だから誰だか見当もつかないの……。」
確かに、送り主のアドレス欄にはメールアドレスがそのまま書かれている。アドレス帳登録していれば、普通は登録名が出るはずだ。
「先生に相談すべきじゃ?」
「あまり
それもそうか。クラスでもかなり目立っているユリがこれ以上目立つと、何が起こるか分からない。
でも―――
「じゃあ、なんで俺の部屋に来るんだ?」
「他に友達いないし。」
「あ、そうか……。
って! ここにいる方がそれを先生に相談するよりも
「うぅ……っ。リョーヤって結構声大きいのね。騒ぐとバレちゃうよ?」
「うっ……」
俺はため息をついた。どこの誰のせいだか……。
まぁ、こうなってしまえばもう仕方ない。
「いいよ、泊まっても。その送り主が誰か分からないのなら部屋に戻っても不安だろ。
その代わり、朝早く自分の部屋に戻るんだぞ?」
「うん、ありがとう!」
そういうとユリは遠慮なくベッドに転がった。気持ちよさそうに体を伸ばしてから掛け布団の中に潜る。遠慮って言葉は……知らないだろうな。
「………寝てる間に変なことしないでよ?」
「誰がするか! 俺はそんな変態じゃない!」
しかたない、俺は椅子で寝るか。椅子に座り、時計を操作してアラームをセットした。2日連続で遅刻ギリギリになるのは流石にゴメンだ。
「なぁ、ユリ―――」
声をかけたが既にユリは夢の中だった。色々あったが、今日この学園に入学したばかりなのだ。疲れるのは無理もない。
同い年なのにどこか少し幼さを感じさせる寝顔は俺の頬を緩ませた。
「おやすみ。」
―――そして翌日。
昨晩セットしたアラームの音で目が覚めた。座って寝ていたからか少し首が痛い。
「ユリ……起きてるか?」
返事がない。ベッドに向かうと書き置きが置いてあった。どうやら朝早くにこの部屋を出たらしい。
『おはよ! 昨晩はありがとね。また教室で!』
「たく、自分勝手だな。」
それでも自然と許せてしまうのが、きっと彼女の良さなのだろう。実際ああは言っても、怒ってはいないのが自分でも不思議だ。
――煌華学園 食堂――
身支度を整え食堂に行くと、何やら騒がしかった。みんな一様に設置されているモニターを見てる。
モニターを見るとロンドンの航空映像がライブ配信されていた。
「なんだ、これ。」
そこに映っていたのは煙が街のあちこちから上がっている、近代的なビルと中世の教会が調和した美しい街ではなく、まるで戦場のような破壊され尽くされた街の映像だった。
ビックベンは倒壊し、テムズ川は干上がり、魔法使いの映画で有名になったキングス・クロス駅は瓦礫の山と化している。バッキンガム宮殿はかろうじて無事らしい。
映像がズームされると逃げ惑う人々や、その人たちを救助、避難誘導しているイギリス兵の姿が見えた。
ヘリに同乗しているリポーターの緊迫した声がスピーカーから聞こえてくる。
『ご覧いただいているのは現在のイギリス首都、ロンドンの映像です。
街は破壊し尽くされ、見るも無惨な姿になっています。イギリス陸軍が市民の避難誘導や救助活動を行っている模様です。
あっ、あそこでどうやら戦闘が起きているようです。』
中継ヘリは戦闘が行われているエリアに近づこうとしたのだろうが、軍のヘリに阻まれた。軍のヘリはスピーカーから接近禁止の警告をしていた。
『It's dangerous here!
Leave immediately!』
しかし、カメラは地上の様子をハッキリと捉えていた。複数の軍人を相手に戦っていたのは―――たった1人の人間だった。ただ、普通の人間ではないことは一目瞭然だ。なぜなら―――
『これ以上は近づけません! ヘリが撃墜される可能性があります!』
―――《
『いいからその場でホバリングして!』
リポーターはパイロットにそう指示すると、カメラマンに戦いの様子を映させた。
『視聴者の皆様、ご覧いただけるでしょうか。
現在市街地のあちこちではイギリス陸軍の特殊部隊がテロリスト集団、《
これは映画やドラマではありません。現実に起こってい―――』
そこでモニターの電源が不意に落とされた。生徒たちのブーイングが食堂に響く。
「お前ら、もう少しで登校時間だぞ。遅刻者は校内の廊下とトイレ掃除だ。」
強面の男性教諭の脅しで生徒たちは蜘蛛の子を散らすように教室へと移動して行った。
「《
《
数ヶ月前にもインドの首都、ニューデリーで大規模なテロ活動を行った末、現地の《
日本に来なければいいんだけど………。
俺はそう願いながら食堂のカウンターに向かって歩いて行った、がカウンターのシャッターは閉まっていた。時計を見ると始業のチャイムまであと10分。いつの間にか周りには人影がなくなっていた。
つまりこれは―――
「朝飯抜きな上に、今日も遅刻ギリギリかよ!」
教室までここから走っても間に合うかどうか。
ここ最近で一番疲れるほど全力でダッシュし、
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