氷炎の皇剣伝(ブレイド・ストーリー)
Orca Masa
第1章 私立煌華学園 編
第1話 別れと旅立ち
――日本 東京都――
「涼也! そろそろ行くわよ! 朝ごはん食べた?」
「食べたよ、母さん。見てただろ?」
俺の名は坂宮
昨日までは都内の高校に通っていたのだが、今日から別の学校に通うことになった。
荷物を持って外に出ると、既に両親が車を準備していた。俺はトランクに荷物を乗せて後部座席に乗り込む。
「忘れ物ない? 歯ブラシ持った? タオルは? 下着は入れたの?」
「大丈夫だよ母さん。無くてもあっちで買えるからさ!
ていうか、心配しなくてもちゃんと1人で生活できるから!」
俺の母親、坂宮 鈴音はかなりの心配性だ。今日から息子と離れ離れになるのがよほど寂しいのだろう。ずっと手に写真を持っている。
「はぁ……それと母さん。写真を胸に抱えるのやめて。それじゃ遺影みたいじゃんかよ。」
「だって……」
「
この子ならきっと上手くやるさ。」
俺の父親、坂宮 良吾は母さんに比べてそれほど心配性ではないが、たまに放任すぎることもある。
「僕らの息子さ。上手くやるに決まってる。」
「……うん、そうね。あなたが言うなら。」
俺の言葉は完全に信用されてなかったのかよ!?
「さて、行こうか!」
父さんはそう言うとアクセルを踏み、空港へ向かった。
――日本 羽田空港――
『JNA航空新千歳空港行き345便は、ただ今ご搭乗いただいております。
当便をご利用になるお客様は――』
車は渋滞に巻き込まれることもなく、スムーズに空港に着くことができた。荷物を自動チェックインカウンターに通し、後は保安検査場を抜けて搭乗口に向かうだけ――
――なのだが、母さんは空港に着いてもずっと不安がっている。
「やっぱり心配だわ……。」
いや、心配しすぎる母さんの方がよっぽど心配です……。それに、そろそろ写真を抱えるのは本当にやめて欲しい。背中に大勢の視線が突き刺さるのを感じる……。
「ったく母さん。
たまに手紙――ってかメールも送るし、電話とかもするからさ。」
「そうは言っても……くれぐれも死なないでね?」
「……分かってるよ。」
俺は父さんの方を向いた。父さんは俺の手を握ると―――
「お前は自慢の息子だ! 胸を張って、トップを取ってこい!
お前なら出来るさ!」
「ありがとう父さん。」
俺は父さんと母さんと抱き合うと、保安検査場に向かった。振り返ると2人とも――特に母さんが――目に涙を浮かべて手を振っている。
「いってきます!」
館内に響くような大きな声で両親に言った。
保安検査場を通り、搭乗口を探していると携帯が鳴った。母さんが泣きながら電話でも掛けてきたのだろうか。
「もしもし?」
「あー! リョーヤ! 何で私を置いてくのよ!
見送りもさせてくれないなんて酷いなぁー!」
うっ、この朝から元気すぎる声は……
「なんだ、アキかよ。おはよう。」
「おはよー。ってちがーーう! なんで私を置いてくのよ!」
「あー、わりぃ。忘れてたわ。」
「ひっどー!」
藤ヶ峰 秋代。俺の幼なじみにして、つい昨日までクラスメイトだった女子だ。ボブカットの黒髪で、健康的な体つきをしているアキをまぶたの裏に浮かべた。そういえばアキともしばらく会えなくなるのか……。
「おばさんの様子どうだった?」
「ずっと俺のこと心配してたよ。いくら何でも今年で17歳、ある程度の事は1人で出来るのにさ。」
「でもわかるなー、おばさんのその気持ち。リョーヤ不器用そうだもん。」
「根拠ないだろ?」
話しているうちに搭乗口に着いた。それに、ちょうど搭乗が開始したらしい。同年代らしき人たちが続々と搭乗口に入っていく。あれが俺のライバルになる人達か。
「そろそろ飛行機乗るわ。また今度な?」
「そっか、もう行っちゃうのか……。」
「なんだ? 寂しいのか?」
「さ、寂しくないし! ほら、早く行けば?」
「はいはい、んじゃな」
電話を切ろうとした時だった。
「ねぇ、リョーヤ。」
「ん? なんだ?」
「……気をつけてね。」
「あいよ、そんじゃな」
俺は携帯の電源を切り搭乗口へと進んでいった。
飛行機の行先は洋上学園都市ヒースネス、これから俺の通う学校がある人工島だ。
俺は高鳴る胸の鼓動を感じながら飛行機に乗り込んだ。
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