Singularity

水波形

シークエンス1 プロローグ

ザシュッ!


時間が止まったような静寂した空間……いや、本当に時間は止まっているようだ。

その空間で、刀を振り下ろした少女が一人。

切られた物は、人間ではなく”怪物”と呼ばれるそれだろう。


『お疲れ様です。30秒後、リアル世界とマージします!』


ふわりと舞う長髪黒髪。

耳にはインカムがついており、そこからオペレータの声が聞こえてくる。


「承知しました。マージを待ちます。」


凛とした態度で彼女は応える。


『はーい!25、24、23……』


それに対して、陽気なカウントダウンが聞こえてくる。


『20、19――え!?』


「どうかしましたか?」


『アドベント反応!言葉(ことは)さんから2000メートル西側の小徑!路地裏です!!』


「嘘!?このタイミングで!?急ぎます!指示をください!!」


『マージまであと、8秒!路地裏に生体反応1!死守してください!!』


「――間に合って!!」


時間が止まった世界を彼女は全力で駆ける。

冷や汗が薄っすらと浮き出てくる。

このままだと、リアライズしてしまい現実世界に被害が出てしまう。


「っ!対象を発見!駆除します!」


『急いで下さい!マージまで後――ダメっ!リアライズします!!』


「間に合えええええええええ!!!」


彼女の刃が怪物のカラダを切り裂くのと同時に、怪物の鋭い爪が道行く男子の脇腹をえぐっていた。


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