第9章 王都アルキニス

「やっと着いたのじゃ。」

「着いたね。」


 グランさんと別れてから数十分後、僕達は王都の門の前に到着した。


「おおきのぅ……」

「大きいね……」


 目測で4~5メートルは有るだろう門の大きさに圧倒されながら二人して呟く。


「そこの者何をしている!」

「は、はい!?」


 いきなり大声で呼ばれ反射的に声のした方を見ると、見張りの兵士だろう長槍を片手にこちらへと向かってくる。


「何をしていると聞いている。」


 僕達の目の前まで来るとあからさまな敵意を向けながら話しかけてきた。


「す、すみません。あまりにも大きな門のだったので圧倒されていました。」

「ふん、田舎者か。で、王都に何の用で来た。」


 素直に門に圧倒されてた事を伝えると先ほどまで有った敵意は無くなったが今度は馬鹿にした様な態度で接してきた。


「はい、エーネルの管理をしているガーウィルって人から呼ばれたので出向いたのですが。」


 そう言いながら封筒を渡して見せる。


「……こっちに来て少し待っていろ、確認を取る。」

「はい。」


 僕とアスタルテは管理小屋の側まで誘導され待たされた。

 暫く待つと門の方から燕尾服を着た男性が近づいて来るのが見えた。


「お待ちしておりました、タクヤ様。わたくしノレイン・アルーチェと申します。ガーウィル様の秘書を務めております。」

「初めまして、ユウキ タクヤです。こっちは妹のニルバーニャ・アスタルテです。」

「初めまして、アスタルテ様。」


 ノレインがアスタルテに手を出し握手を求めたが、アスタルテは僕の後ろに隠れてそれを拒否した。


「おやおや、初対面から嫌われてしまいましたかな?」

「すみません、人見知りで初めての人にはいつもこうなので。」

「はっはっはっ、それは良かった。嫌われていないと分かっただけでも一安心です。」


 ノレインは自分の胸に手を当てほっとしたとジェスチャーをした。


「それではお先に宿にお連れ致しましょう。暫く泊まると思いましたのでこちらでご用意させて頂きました。さっ、どうぞこちらへ。

 」


 ノレインの後に付いていくと其処には1台の竜車が止まっていた。

 見た目が他の竜車と違い貴族が乗るのに相応しいと思わせる装飾や形をしている。

 自分が乗っていいのかと思ってしまう程だ。


「どうぞ。」


 ノレインは扉を開き座席へ招く。

 中はやはりと言うべきか普通の竜車より豪華だった。腰を痛めないように配慮されたソファー、窓には外から中が見えないようにするカーテン、明る過ぎず暗すぎない丁度いい明るさの照明、そのどれもが綺麗の清掃されており乗る相手に不快感を与えない様になっている。


「みろタクヤ!フカフカじゃぞ!」


 席に座るなり座ったことの無い感触に喜びを顕にするアスタルテ。


「ではわたくしは竜の操縦がありますので暫し失礼致します。」


 ノレインはドアを閉める前に一言いいながらお辞儀をし前の御者席へと座った。そして軽く手綱を振り地竜へと指示を出しゆっくりと竜車を走らせ始めた。


「見のじゃタクヤよ、凄いのじゃ!」


 窓から見える風景にはしゃいでいるアスタルテを見ながら微笑み、少しは落ち着きなさいと言って席に座らせた。

 だがそれでも目を輝かせ流れる風景を窓から見ている姿が見た目相応の反応で可笑しくなり遂には吹き出してしまった。


「なんじゃいきなり?」

「あははは、ごめん気にしないで。」


 そう言いながらも笑い続ける僕に疑問を抱きながらもアスタルテは外を眺めるのを再開したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る