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「現在のところ、姫路では六名もの行方不明者が発生しています、いずれの場合も、」ローカルニュースのリポーターのコメントより。
小学生らしき少年が体育座りをして、テレビをみていた。
巧は、洗面道具を思わず落してしまった。携帯のシャンプーや洗面具が相当な音を立てたはずなのに、少年はこちらを見ずにテレビを見ていた。
巧は、どう少年に声を掛けたらいいのか、わからなかった。
巧の金でテレビを見ているのだ。しかし、この際そういうことはあまり気にならなかった。
とにかく、この少年には部屋から出ていってほしかった。
声をかけるまで少し時間がかかってしまった。
「ねぇ、君、僕、、 」
呼びかける二人称が巧の心のように二転三転した。
少年がゆっくりと本当にゆっくりと振り向いた。
少年が振り向くだけで、これだけ怖かったことは巧は一度もなかった。
どこにでもいる小学生だった。
ただ、風呂場での女子中学生と同じで、無表情なことこの上ない。
巧はどう言って、この小学生を部屋から出て行かせるか、困った。風呂場の少女は自然に出ていった。居座られたら、実力行使をしなければいけないのか。
「僕が、お金払って、見られるようにしたテレビなんだけど、、」
一番穏便に遠回しに婉曲に出ていって欲しい、いや出ていおくべきであることを意思として伝えた。
少年の目はなにも見ていなかった。焦点は巧を通り抜けて、
畳み掛けるのはマズイのかわからなかったが、巧の心情しては結果としてそうなってしまった。
「あのね、、」巧みがそういった時。
少年が話した。
「食事」
巧は安心した。なにより、意思が疎通したことに。この少年は巧に食事を呼びに来た
「分かった。ありがとう、すぐ、行くよ」
巧はそう答えたが、もしこの少年が座り続けたらという一抹の不安は残った。
が、少年は、ゆっくり立ち上がると、なにも言わず、巧の部屋を出ていった。
またもや助かった、なんでもないことなのかもしれないが、ただ、そう思った。
旅は、思いがけないことが多数おこる。みなそれを半分期待して日常から抜け出すためにたびに出るのだ。スキー旅行も同じだ。
しかし、巧はすぐに、カバンとカバンの中の貴重品を確かめた。
なにも盗られていなかった。
ここは、ど田舎だ。ここの家族は、プライバシーの感覚が少し都会の人間とずれているのだろう。田舎では、鍵をかけないと聞く。ただ、それだけにちがいない。
そうであって欲しい。
少年が見ていたテレビ番組は、只のローカル・ニュース番組で、姫路では連続殺人犯がいまだに捕まっていないことをリポーターは現場から、アンカーマンはスタジオから伝えていた。
これも、よくあることだった。
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