第5話 キセキ❕
何か分からないけど、夢を見ています‼
ここは、どこでしょう?
何か見覚えが有るような?
周りがぼやけていて、良くわかりません。
お花が沢山生えています。
チルチルチルリ、チルチルチルリ…
夢の中で、何か鳴っています!
「う、う、うーん⁉携帯の音?」
「あー、携帯鳴ってるっ!」
夏子さんは、あわてて、飛び起きました‼
スマホの着信を見て、花屋の仕入れ先だと分かりました。
「はい、川嶋(かわしま)です。〈夏子さんの苗字です〉」
「あっ、夏子ちゃんかい?早くにごめんね。」
「ええ、いいですよ。」
ベッドの脇に置いて有る目覚まし時計を見ると、5時16分を差しています‼
早っ!と、思いましたが、顔を笑顔に戻して、
「何ですか?こんな早くに?まだ、仕入れの時間には早いかと。」
「いやね、おばちゃんいつも5時起きだから、花畑を見に行ったら、ブルームーンが咲いていたから、教えてあげようと思って、電話したのよ。別に今度で、良いなら、電話切るけど?どうしますか?」
「えー、行きます、行きます、そうならそうと早く言って下さいよ‼」
「いや、これでも早めに言ったつもりだけど。」
「すいません。無駄口たたいて。」
「別に、気にして無いよ。いつもの事だから。ふふふ。もう少し、後でも良かったんだけどね、いつも6時頃に夏子ちゃんより、少し年上ぽい男の子が買いに来るものだから。急いで、電話しちゃったのよ。おばちゃん、せっかちで、ごめんなさいね。」
「そんな事無いですよ。今から急いで着替えて採りに行きますので、その男性が来たら断って下さいね。お願いしますよ。」
「分かりました。気をつけて来なさいよ。まだ辺りは、薄暗いから。」
「じゃ。」と、言って、スマホを切ると、タンスの一番上の服を引っ張り出して、顔をさっと洗って、一目散に、車を走らせました。
やったー。
やっと久しぶりにブルームーンに出会えます。気分は、ルンルンです。
ブルームーンを花束にしてプレゼントすると、病気の人が良くなったり、恋が実ったりと、何故だかちまたで、女子高生や主婦に噂されていて、いつもお客様から電話が鳴り放題です。
いつも、フラワーアレンジメントンを担当している私には、なかなかご利益が要りませんが。
車を仕入れ先の花畑に停めると、一目散に走って目的地を目指します。薄暗かった空一面も、もう、日が昇っています。
向こうの方でいつものお婆さんが、手を振っています。その横で、見知らぬ男性が立っています。
あの人は、誰だろ?と、思いながら、早足で、近づきました。
「すいません、遅くなりまして。」
「そんな事無いよ。急がせて悪かったね。」
「いいえ。こちらこそ。こちらは、どなたですか?」
「この人は、半年位前からブルームーン欲しさに尋ねて来る人だよ。」
「へー?」年は、私より2、3歳上位でしょうか?少し、男前です。
「こんにちはー。はじめまして、川嶋夏子と申します。」
「あっ、すいません、挨拶が遅れました。私は、坂上明(さかがみあきら)と、申します。」
「えっ⁉」私は、一瞬固まって、
「もしかして、あの川で泣いていたお兄ちゃんですか?」
「ええ、そうです。僕も小さかったので余り記憶に要りませんが、あの泣き虫です。」
私は、思わず吹き出してしまいました。
「失礼しました。こんな偶然って有るんですね。又どうしてこんな所に来たんですか。」
「いや、内の父が半年前から病気になりまして、ネットの噂で或花屋さんでブルームーンの花束をその人に、贈ると、病気が良くなった。と、目にしまして、ネット検索したら何故か、ここに電話が繋がりまして?それから、通っているんです。」
「あれ?確かに私が専門学校を卒業してから宣伝の為に店のサイトを立ち上げましたが?」
急いで、夏子さんは自分のスマホで自分の店の名前を入力しました。
「よいしょっと。えーと、エトランテ(花屋の名前です。)とっ!」
サイトが立ち上がると、花一面の中に作り笑顔の私が移り出されました。
「電話番号、電話番号とっ!」
電話番号の欄を見てみると、そこには、087○-2○-○○○4と、なっています。
「あれ?最後の下ヒトケタが4になってる?お客さんちゃんとかけて来てるから気づかなかったよ。」
「えっ⁉知らなかったのかい?もー、何度も、うちに問い合わせがありましたよ。その都度わたくしが訂正させて頂いています。もう、慣れましたがね。」お婆さんは、笑顔で、答えてくれました。
「すみません。帰ったら一番に電話番号の下ヒトケタを4から5に訂正しときます。」
「頼みましたよ。ふふ。」
「夏子さんと、言いましたか?今度、そちらの店にブルームーンの花束を買いに言ってもいいですか?」
「えー是非、うちに買いに来て下さい!サービスしますよ。ちょっと待って下さいね。確か、車に、うちの店のパンフレットが有ったような?」
そう言って、私は、車にパンフレットを捜しに行きました。
「ごめんなさいね。あの子しっかりしてそうに見えて、そそのかしい所が有るから。」
「いえ、良いんですよ。こうやって彼女に又逢えたんですから。」
「あら、知り合いなの?」
「まあー知り合いといえば、知り合いですが⁉」
「あらそうなの?良かったわね。」
「はい。」男性は、笑顔で、答えました。
後のトランクを開けて模索すると一枚だけ少しよろけた紙がありました。
「あったー!!良かった。」と呟きながら、笑顔で二人の元に戻りました。
服の裾でパンフレットのシワを伸ばしながら、
「はい、どうぞ、少しよろけていますが、一枚だけありました。電話番号は、あー、有っていますね。」そう言って、私は、パンフレットを念入りに確認してから、その男性に、パンフレットを渡しました。
「ありがとう。これからは、こちらの店に買いに行くね。えーっと、名前は、エトランテ、良い名前ですね。」
「お婆さん、いままでありがとう。これからは、夏子さんの店に買いに行くから、もう、こちらには来ないと思います。」
「そう、寂しくなるわね。又近くに寄った時は、顔を見せて下さいね。」
「はい、そうさせて、貰います‼」男性は、笑顔で返しました。
その男性が、夏子の店に花束を買いに行くようになったので、夏子さんも品切れに困らなくなりました。
或意味良かったね。
その後、夏子さんは、いつもの様に適当に見繕って貰って、そうそう、ちゃんとブルームーンも車に乗せました。
「えーっと、明さんでしたか?又うちの店に買いに来て下さいね!絶対ですよ。約束ですからね。」
「分かりました。必ず行きます。そうですね。明日、伺ってもいいですか?」
「是非、お願いします。」そう言って、お婆さんと、明さんにお別れをして夏子さんは、店に車を走らせました。
「少し、まだオープン時間には早いので、モーニングでも食べて帰ろうかな?お腹空いたし。腹が減っては戦はできぬって言うしね。今日も、お仕事頑張ろっと。」
今日の、夏子さんは、いつもより楽しそうです。
ようやく、夏子さんにも春の兆しが見えたのでしょうか?
うふふ。
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