第3話 ブルームーン!

あれは、夏子さんがまだ幼稚園に通っていた頃、家族で県外のとある山へ、ピクニックに来た時の話です。


「なっちゃん、今日は、晴れて良かったね。」


「うん。」


「夏子、昨日ベランダに吊るした、てるてる坊主が効いたのかな?」


「うん。多分、そうだと思うよ。」


今日は、母と父の結婚記念日。


お店を臨時休業にして、三人でピクニックに来たのでした。


この山は、春になると沢山の花ばなが当たり一面に咲いて、観光客も絶賛しています。


「ママ、おなかすいたよ。」


「あ、そう、じゃお弁当にしましょうね!」


「やったー。おべんと、おべんと。」


「夏子をおかずにして食べちゃおうか?」


「えーいやいや。」


「もう、パパったら。」


そんな、他愛の無い家族の会話が弾み、ママお手製のお弁当をたいらげました。


「少し、当たりを探索しようか?」


そんなパパの一言で周りを見て散歩する事にしました。


15分位歩いた所に、小川が流れていました。


「パパ見て、お水だよ。」


「あっ、本当だね!きれいな川だ!」


そうして、三人は、小川を見つめていると、どこからか子供の鳴き声が聞こえました。


「えーん。ママー。」


その鳴き声の聞こえる方を覗いて見ると、小さな男の子が座りこんで泣いていました。


「どうしたの?」と、ママが聞くと、どうやら迷子のようでした。


不思議な事に、その男の子の周りだけ青い色のチューリップが咲いていたのでした。


私も小さかったので、余り記憶が要りませんが、その花を摘んで私が、


「はい、どうぞ!お兄ちゃん。」と、渡したら、けろっと泣き止んだそうです。


しばらくして、父親らしき人が捜しに来て、無事その男の子は、帰って行きました。


お父さんもお母さんも、その花は初めて見たらしく、記念に一房だけ持って帰りました。


そうして、父の知り合いの所で栽培してもらう事にしました。


それが、あの仕入れ先にあるブルームーンだそうです。


何故、ブルームーンと名付けたかと言うと、あのとき母が、男の子に名前を聞いた時、明君って、言ったそうです。


「うーん⁉何故最近、売り切れなのよ‼」


「次、花が咲いたとき、お婆さんに言って、必ず取って置いて貰うように、今から連絡しとこっと。」



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