刻谷怪談

長谷川 笹の介

『序幕』


『浮世に咲くはとこの花。三途の河らに咲く花は、見るも哀れな彼岸の花よ、行きはよいよい刻の道。ヤオヨロズの神々も、梵鐘を鳴らせや歌えや踊れ』




......初めまして、お初にお目にかかり光栄に存じます。




今宵は日々退屈な殿方、奥方の皆々様に少しでも憂さ晴らしをと思い。



遥か西の国からやってまいりました、刻谷と申します。怪談話とは名ばかりですが、どうぞよしなに。



さて、皆様はおばけや妖怪を信じますか? 子供の頃、暗がりを恐れませんでしたか?



私はひどく臆病な性格でして、化け物を想像する、そのような考えはできるかぎり避けています。



肝試しに行ったとき、深夜誰もいない部屋で感じる謎の気配、心霊番組を見た後に入るお風呂などなど。



今から語らせていただく怪談は。そのような、



いたかもしれない、



畜生を。



年端もゆかぬ若造が、退治するお話にございます。

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