その043「シューティング」


「3……2……1……行くぞ姉ちゃんっ!」

 ゲームセンターのガンシューティングゲームの画面の前で。

 カウントダウンゼロの瞬間、僕はレーザー銃を手に姉ちゃんを呼ぶ。

「まさに、襲いかかってくる大型犬に決死の覚悟で立ち向かうわんこの如しね」

「おりゃおりゃおりゃっ!」

 出てくる怪物を、僕は次々と撃ち落としていく傍ら、

「えいっ……えいっ……む、難しいわね、これ」

 姉ちゃん、運動神経の悪さが祟ってか、上手く行かないみたい。

 怪物を撃ち落とせないどころか、撃ってはいけない的を撃っては『オーノー』とか言われている。

「このままじゃ、スコアもオーノーだぞ姉ちゃん」

「うるさいわよ。くぬっ、くぬっ……あれ……た、弾が出ないわ」

「姉ちゃん、画面外に銃を向けて引き金を引いてリロードだ!」

「え……なんだか、よ、よくわからないけど、こうかしら?」

「姉ちゃん、僕に銃向けないでっ!?」

 とまあ、姉ちゃんが基本ポンコツだったんだけど、僕の頑張りで何とかステージをクリアしていって。

「ラストステージだぞ姉ちゃん!」

「か、勝てる気がしないわ。いろいろ混乱してる上に、手が震えて」

「ううむ……じゃあ、こうだ!」

「え、ちょ、いきなりくっついてこないでよっ!?」

「照準補正は僕がするから、姉ちゃんは引き金だけ引いて」

「あ……んっ……み、耳元で囁かないで。息が、息が――」

「つべこべ言わないで、やるぞ姉ちゃん」

 右手で自分の銃を、左手で抱え込んだ姉ちゃんの銃を操作して、ラストステージに挑む。

 ただ、耳元だから大声は出せないので、僕はあくまで低く囁くことで、姉ちゃんに指示を出していく。

「そう、そう、ここで引いてみて?」

「ひんっ……な、な……!?」

「上手だよ、姉ちゃん」

「う………んっ……」

「あぁ……うん、いいよ。タイミングが、とても、いい……」

「え、えっと……!」

「姉ちゃん、もう少し……もう少し……」

「あのう……ぅ」

「頑張って、頑張って」

「……~~~~~~」

「フィニッシュ」

「――――――っ!?」

 そんなこんなで、上手くタイミングが重なって、ラストステージをクリアできたんだけど。

「ふぃー……あれ、どうして姉ちゃん、顔真っ赤にしながらへたり込んでるんだ?」

「いや……その、うん……耳元でそういうイケボになるのは、反則だと思うの」

「???」

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