今日のわんこ弟

阪木洋一

その001「質問」


「姉ちゃん姉ちゃんっ!」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「なによ、これまた新芸を覚えたわんこの如しね」

「テストで百点取った!」

「へえ、すごいじゃない。これで十回連続ね。小学生のテストとはいえ、あなたスペック高すぎでしょ」

「んで、今なら、どんな質問でも答えられる気がする! 姉ちゃん、なんか訊いてくれっ!」

「どんな質問……」

 それを聞いて、姉ちゃん、ちょっと考えて。

「……ふむ」

「姉ちゃん、すんごい悪そうな顔をしてるぞ」

「ふふ、なんでもないわよ。どんな質問でもいいのよね?」

「おう、どんと来いっ!」


「――じゃあ、好きな人、誰か教えて?」

「姉ちゃんっ!」


「………………………………」

「あれ? 姉ちゃん、顔真っ赤だぞ? なんで?」

「……な、なんでもないわよ……」

「え、そんなに真っ赤なのに? どうしてどうして?」

「なんでもないって……っ……い、言ってるでしょっ……顔、近づけて、くんなっ……!」

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