第10話闘技大会開催
闘技大会当日。
朝練は行わないで早めに朝ご飯を済まして、学園に向かう準備をしていた。
外ではお祭りがやってるので朝練はやっていない。もし祭りがやっていなくても、その時に体を壊さない為にやっていないだろう。
準備が予定より少し早めに終えたので、ミーニァと話すことにした。
「あれ?ミーニァさんも出掛けるんですか?」
カケルはミーニァの服装がいつもと違ったので、特別な用事があると考えたのだ。
ミーニァが着ている服装は、貴族のお嬢様が着てそうな品のある翡翠色(薄緑色)のドレスだった。唇には紅色のリップを塗っており、いつもとは違う印象だった。
ミーニァはドレスの端をちょこんと持つとクルッと一回移転をし、こちらを見て微笑んだ。
「どうです?似合ってますか?」
「うん。似合ってるよ。いつも見ている服装と違うから、それはそれで良いね!」
カケルはミーニァを褒めると、何故そんな服装をしているのか聞いた。
「はい。実は私も闘技大会に行くことになったんです。あ!個人で行くのでは無いですよ。エリン王女の付添人として行くので安心して下さい。カケルさんが戦ってるところしっかり見ときますから頑張ってくださいね!」
うわ~何か期待させちゃってる。これはますますあの無謀な試合に勝たないといけいないじゃん……どうしよう。
カケルがそう心では叫んでいることはミーニァは知らなかった。
ミーニァは本来エリン王女のお世話係である。なので付添人として行くのはなんも不思議には思わないが、カケルには気になってることがあった。
あれ?てか何でミーニァさんなんだ?王女様の側には執事が付いていたはずなのに、普通はその人が付くのに何でなんだ?
カケルがこのことを知っているのは、実際にエリン王女と執事が一緒に居るのを目撃したからだ。宮殿には関係者以外立ち入り禁止だったが、カケルはエリン王女に召喚されたのでその時宮殿にいたのだ。一般民が。
まあ取り敢えず聞いてみるのが一番早いな。
「ミーニァさん。何故執事が付添人では無いんですか?」
するとミーニァはあ!とした表情で口元に手を添えた。
「それはエリン王女が不在中に代わりに宮殿を仕切ったり、お仕事をするからです。あの執事ああ見えて宮殿ではエリン王女の次に偉い人なんですよ」
へぇーそれは良いことを知ったなー。話したことは無いけど、もし話すときに役に立ちそうだな。ちゃんと礼儀正しくしないと。
そう心に決めると、いつの間にか登校時間となっていた。
カケルは必要な物を持つと、扉に手をかけ「いってきます」とミーニァに言った。
ミーニァは扉が閉まった後に「いってらっしゃい」と言った。
その表情はとっても優しく、暖かい表情だった…………。
学園生徒達はいつもなら教室に向かうが、闘技大会の時は全教室が閉まっている。セキュリティのことを考えたら当然だろう。なので生徒は直接闘技場に向かうことになる。
闘技大会は二日間にわたって行われる。一日目が一、二年ペアで出る闘技の部。二日目は三年が露店を出すことになり、一、二年はフリーの時間となる。
闘技場に着くと、そこには既にアイ、ミアが待っていた。二人はカケルの姿が見えると、アイは大きく手を振り、ミアは胸元で小さく振った。駆け足で向かう途中周りを見渡すと、殆どのペアが揃ってるように見えた。恐らく作戦をもう一度確認するためだろう。
「すみません。遅れましたか?」
カケルが気まずそうに尋ねると、二人は首を横に振った。
「カケル君はちゃんと時間ピッタリに来てるよ。ちょっと私たちが早かっただけだよ」
アイは優しい声でそう言うと、ミアが付け足した。
「アイは来る時間を間違えて、朝一番に来たものね」
「そ、それは言わないで下さいよ~。恥ずかしいじゃないですか」
ハハ……。案外アイさんもおっちょこちょいなんだな~。ちょっと意外だな。
カケルは苦笑いしながら心ではそう思っていた。
その後は三人で(アイだけ仲間はずれにするのは悪いから)作戦の話し合いをした。
話し合いは十分ぐらいで終わり、「試合に出る生徒は準備して下さい」とアナウンスされたので、ミア、カケルは更衣室へ。アイは客席へ別れた。
学園に建てられている闘技場は前の世界で例えるなら、サッカースタジアムだろう。
中央に綺麗な円を描いたような大きなスペースがあり、その周りを囲むように客席が並んでいる。奥の席に行くにつれて、客席が高くなり見やすいように作られている。
着替えを終えると生徒達は闘技広場に集まることとなり、そこで開催式が行われる。
並び方は来た順番でペアで並ぶ形になっている。なので今カケルの隣にはミアが居るのだ。
しばらく待っていると開催式が始まるアナウンスが聞こえた。
「ただいまから、闘技大会開会式を行います」
「開会の言葉。学園長先生お願いします」
前方にある台に学園長が歩いていった。
「え~只今から闘技大会を開催いたします」
生徒達、観客からは拍手と、歓声が聞こえてくる。
「学園長先生有難うございました。これをもちまして開催式を終了します。生徒達はこの後貼り出されるトーナメントを見ていてください」
そう言われると、生徒は前に貼られているトーナメント表を見た。
相手が弱いところと当たって喜んでいるもの。強いところと当たって不安そうにしているものがいたが、カケル達はどちらの表情も見せなかった。
何故なら対戦相手が予想出来て、その相手と当たったからだ。
「やっぱりか……。カケル初戦はあのヴォルルフ、ゼクスペアだ」
アイは声のトーンを落とし、まるで何かを睨んでいるかのような目つきだった。
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