第11話セレス達の戦い

 カケル、ミアペアの試合は五試合目で結構空きがあるため、今は観客席で一試合目を見ているのだ。もちろんただ見ているだけではなく、ミアは分析しているのだ。トーナメントを勝ち上がったら当たる可能性がゼロとは言い切れないからだ。


 まあ戦闘など全く以て関わりがなかったカケルにとっては、何をしているのか分からないので、ただ見ている形となっている。

 ただカケルにも分かることがある。それは“レベルが高い試合”だと言うことだ。


 最低クラスが騎士だけあってか、初級魔法でも皆使いこなしている。中には二年生に教わったのか中級魔法を使っている人も少なからず居た。別に禁止されてる訳ではないので初級以外も使って良いのだ。ただし命の危険性のある魔法は原則禁止で、もし使った場合は不戦敗とされるのだ。


 試合の決着は相手二人を戦闘不能か、降参するかのどっちらかだ。シンプルで実に分かりやすい勝敗の決め方だ。


 カケルはなんとなく観客席を見渡した。そうなんとなくだ。

 丁度カケルとは反対側の席で、一般客とは明らかに違う席にいる人物は楽しそうに試合を見ていた。

 その方の服装は誰よりも気品で清潔感があり美しいのだ。

 歩けば辺りの人の目線を美しさで集める人物。

 その人物は、この国の王女。エリン王女なのだ。


 一般席とは違う所とミーニァさんから聞いていたけど、随分と目立つ場所にいるな~。

  

 エリン王女がいる場所は、一般席の上にある特別席みたいな所に座っていた。

 席は三列と少なめで、手前一列目はこの国や他の国の騎士団長達が座っている。二列は左からミーニァ、エリン王女、学園長の順番で座っている。三列目はエリン王女の護衛が座っている。


 何故騎士団長が闘技大会を視察しているかというと、生徒を勧誘するためだ。

 最初の方に優秀な生徒に目を付けておき、騎士団長が「騎士団に将来入らないか?」と声を掛ける。で、それに対して生徒が良い返事をすると、入団試験を行わず卒業すると同時に騎士団に入る流れだ。これは勧誘に成功した場合だ。成功確率は十分の一で低めだ。


 カケルがエリン王女を見ている時、会場にいる客が大歓声を上げた。

 どうやら決着が付いたようだ。

 勝ったのは全体的に押していた方のペアだった。


 カケルは見ていなかったが、押しているペアは二年生狙い作戦で見事に成功。押されている側の相手の一年は降参して勝敗が決まったそうだ。

 

 しばらくして第二試合目が始まった。

 試合に出ているのがセレスペアだったので、カケルは目を離さず試合を見ていた。


 セレスペアの作戦は前衛がセレス。後衛がクレアと闘技大会では珍しい戦闘スタイルだ。相手二人をセレスが対応し、その隙をクレアが遠距離魔法で援護。場合によっては前衛、後衛を変えて臨機応変に対応しており、これには騎士団長らも関心を寄せている。


 「セレス!変わって!」

 

 「了解!」


 そう言葉を交わすとセレスは後ろへ跳躍。クレアは足に強化魔法を使い、地を蹴り上げた。

 あっという間に相手との距離を縮めた。


 ――うっ!?速い!――

 相手が反射的に呟いた。

 クレアの速さに目が追いついていないってことではなかった。

 視界から急にいなくなり、急に現れることによって体感的に速く感じているのだ。

 この技は相手の距離が離れてる程速く見える。

 だから前衛、後衛と分けているのだ。


 距離を置こうと後方に跳躍しようとするが、もう既に遅かった。

 

 クレアはセレスと変わる前に氷系魔法――氷結――を右手に用意していたのだ。

 氷結は中級魔法中で一番難しく、魔力を大量に消費するが騎士団長クラスの魔力も有り、魔法技術も人一倍優れているクレアは容易く扱えるのだ。

 氷結最大の特徴はなんと言っても強度だ。魔力を消費すればするほど強度は増していき、中級魔法でも壊れない程に強くなる。

 

 右手を天に掲げ。空間を切断するように天から地へ手を振り下げた。

 地に手が着いた瞬間、相手の足下には氷が纏っていた。

 纏った氷は地と一体化してるに見た。

 

 相手も氷を壊そうと魔法や剣で殴りつけるが、その行為は一方的に自分たちを消費するだけで無駄なのだ。

 この勝負はもう決まったといっても良いだろう。


 クレアが剣を相手に突きだす。

 相手は両腕を上げ、降参をした。


 「「「「ウォォォォォォ!!」」」」


 観客は皆席を立ち、拍手と体に響く歓声をセレス、クレアに送った。


 いやーやっぱり優勝候補の試合は凄いな~。

 カケルは呟いた。このことに関しては誰もが思っている事だろう。


 二人は歓声に対して手を振りながら出口に向かった。


 「やったね!セレス。まずは一勝だね」


 「ですね!今回はクレア先輩のおかげですよ」


 「そんなことは無いよ。あそこでしっかりと相手を足止め出来ていたんだから。あれがなければ私の魔法も撃てなかったから、セレスも頑張ったよ!」


 セレス達は観客席に向かう途中に言葉を交わしていた。

 お互いを褒め、改善するところは話し合いで解決といった形で会話が進んでいった。


 すると急にクレアの目つきが変わった。

 

 「で。あの子の試合見るんでしょ?」


 クレアは意地悪な質問をする。

 あの子っていうのはカケルの事だ。

 カケルは気付いていないが、セレスは自然と意識していたらしい。


 セレスは慌てた様子で言葉を返した。


 「え!?気付いていたんですか?まあ一応試合は見ますが……」


 そう答えると、セレスの頬が赤らんだ。

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