第2話学園前半
季節は春。
ほのかに香る花のいい匂いが鼻の中を満たしていき、ついつい頬が緩んでしまう。
皆は春と言えば何を思いつくだろうか。お花見か?お別れの春か?それとも出会いにの季節か?。
今カケルには漢字で三文字、平仮名で七文字の言葉しか思いついていないのだ。
そう“入学式”なのだ!。
何故この文字しか思いつかないと言うと、ただいまカケルは絶賛入学式に参加するために登校中なのだ。
何故こうなったかというと……。
あの王女様が「この国を救って欲しい」と言い放った後、何故が執事に耳当てをし、何か小さな声で喋っている。当然カケルには聞こえない声で。執事はそれに頷くとカケルの方に体を向けこちらに向かってきたのだ。すると執事はカケルに「立ってください」とお願いをすると、胸元のポケットからメジャーらしき物を取り出すと、その中に閉まってある紐をカケルの胸元に押し当てた。どうやら採寸をしているらしい。
「あ、あのー王女様?」
「はい。何でしょう?」
「何故採寸をしているのですか?何か服でも作るつもりなんですか?」
「あっこれは申し上げるのが遅れました。カケル様にはこの国にある魔法学園に入学してもらいます」
「あー入学するためになんですかぁ~ふむふむ...って入学!?なんで入学するんですか?僕には強い力が有るなら学園なんて入る必要無いと思うんですが」
「確かに強い力がカケル様には有ります。ですが今すぐに力を発揮出来るとは私は言っていません。まだカケル様は力に目覚めていないからです。しかもこの国の歴史や、一般的な知識がカケル様にはありません。なので私は学園に行き最低限の一般知識を身につけて欲しいと考えています。ですが理由はもう一つあります。それは魔法を学んで欲しいからです。学園の名前にも魔法と付いているように、魔法学園は魔法に一番力を入れており、国の中で魔法唯一学べる学園でもあります。力に目覚めるにはやはり学園に入るのが早いと感じたので学園に入って貰うことにしました」
恐らくカケルを監視という意味でもあるのであろうと、カケルは何となく感じていた。
「まぁ早く力に目覚めたいし、文句はないよ。でも学園側には僕の事はどうやって通すつもり何ですか?」
「安心してください。学園側にはもう話は通しています。理事長さんがちょっとした知り合いなので」
とまぁこんな感じで時が進み、今現在となる。制服はジャストサイズでピッタリだ。5日もかかった
と聞いたので、そうとう丁寧に作られたと知ると感謝の言葉しか出てこなくなるのだ。そう制服を見ながら歩いていると、カケルは尻餅を付いた。それと同時に「きゃ」っと女性の声も聞こえた。よそ見をしていたせいで、前にいた人とぶつかったのだ。
「すみません。僕がよそ見をしていたせいで。大丈夫ですか?怪我はありませんか?」
「大丈夫ですよ!気にしないでください。あれ?あなたは魔法学園の新入生ですか?」
「はい。そうです」
「そうかー後輩君なんだね。私は二年生だから一つ上だね。大変かもしれないけどがんばってね。それじゃ」
「はい。頑張ります。本当にすみませんでした」
体を九十度の角度でお辞儀をして謝り、三秒後に体を起こした。先輩だったのかー。か、可愛かったなぁ。少しスリムだったけど、良かったなー。名前でも聞いておけば良かったかなー?
そう考えると、自然とウキウキな気分になり、スキップをしながら登校し、いつの間にかに正門前に着いていた。
学園の正門はとっても大きく、美しく立派なのだ。門は新入生を歓迎するのではなく、大きさ故に、上から威圧しているかのようにカケルは思えた。
新入生はまず、皆学園中央にある多目的ホールへ行き、そこでは入学式や学園説明などをするため、今日のスケジュールの殆どはここに居ることとなる。
ホールの中に入るとそこはまるで、現実世界の劇場にそっくりなのだ。席は見た感じおよそ二千席といったところだろうか。天上はガラス張りで、天から光が降ってくるように見えて、幻想的だ。まぁ、この学園の生徒が集まる場所でもあるから当然だろうとカケルは思いつつ、席に座った。あんまり目立たなく、人が少ない所を選んで座ったので案外ゆったり出来た。
時間が経つにつれて席が埋まってきた。数十分経った頃には殆どの席が埋まっており、後ろからは「バタン」と入口の扉が閉まった。どうやら全員来たようだ。扉が閉じると同時に、前のあるステージに照明が照らされた。
どこからか声が聞こえ、落ち着きのある声で入学式の始まるアナウンスをした。
「ただいまから、国立魔法学園の入学式を開会いたします」
「学園長挨拶、モーリス学園長お願いします」
そう言われると、ステージ脇から一人の女性が現れ、中央にあるマイクスタンドの所まで歩いていった。辺りはとっても静黙しており、学園長の足音だけが聞こえてくる。
皆の顔をふと見てみると、顔にに力が入っており、緊張した面をしている。まあ入学式だからそうなるのは分かる。何故ならカケルも高校の入学式で同じ体験をしたからだ。だが何故か今は全く緊張してないのだ。それもそのはず見ず知らずの世界に飛ばされ、それから一週間も経たずに学園に入学となると流石に頭が付いていけずに、置いてけぼりになる。でも何故か頭はいつも以上に冴えていて自分でも意味が分からない。
「えー……まずはご入学おめでとう。心から歓迎しよう。ここ魔法学園に通うって事はお前らはもう魔導師一人だ。そのことを忘れずに学園生活を送ってくれ。以上」
案外喋らないんだなー。結構喋るかと思ったのにとカケルは小さく呟いた。
「学園長有難うございました。続いては生徒会長挨拶。ミレン生徒会長お願いします」
すると学園長と入れ替わるようにマイクスタンドに現れたのは、三年のミレン・カーレン(男性)だ。身長は百七十五ぐらいだろうか。髪型は清潔感のある髪型で、とってもしっかりしている。
後から知った事だが、国内では名の知れた貴族でお金持ちなのである。お金で民を縛るのではなく、国のためにお金使っており、もちろん学園にも投資しておりとっても親切的なのである。なので生徒会長の座を金の力で取ったわけではなく、自分の力で勝ち取っており、それほど皆から信頼されているのだ。
遅れて学園長の紹介。モーリス・ヘケテ・カーミン。身長はおよそ一六五と意外にも小柄なのだ。だがこの学園の中で一番の魔法使いと聞いた時は、小柄ながらも、もの凄いなと感心したのだ。そりゃ学園長を務めてるから当たり前ちゃ当たり前だがな(笑)。年は噂では三十代前半ぐらいらしく、詳しくはここに通っている二、三年でも知らないのだ。謎に包まれているからなのか、生徒達からは魔女と呼ばれているそうだ。
「皆さんご入学おめでとうございます。生徒会長のミレンです。まぁここで長話をしても皆さんはつまらないと思うので手短に……まずはこの学園を楽しんで下さい。沢山学んでください。そして悔いのない学園生活を送って下さい。以上です。」
まあとってもシンプルだ。しかも案外説得力もある。確かにこの人が生徒会長だと学園生活も楽しそうだとカケルは思っていた。
「ミレン生徒会長有難うございました。次は…………」
何事もなく入学式は着々と進み、気付けばもう残りは閉会式だけだった。
「では今から閉会式に移らせてもらいます。閉会の言葉。学園長お願いします」
「えーこれをもちまして国立魔法学園入学式を閉会いたします」
これで入学式が終わってもう帰るかと思ったが、次のアナウンスでここにいる新入生が響めいた。
響めきの中には、「ついに来たかコレを待っていたんだ!」や「良い結果だと良いな~」といったカケルには理解できない言葉が飛び交っている。
アナウンスを聞くと、どうやら今から魔力測定を行うそうだ。皆席を立ちステージ場に行く列を作っている。一番前の人を見ると、魔力測定の仕方は、机の上に置かれている水晶に手のひらを置くだけと意外とシンプルである。既に測定を終わった生徒もおり、嬉しい表情をしている人もいれば、反対に悔しそうにしている人もいる。でも殆どが喜んでおり八対二ぐらいの割合だ。
カケルはその光景を見ながら、ドキドキとワクワクが入り混じった気持ちで自分の番を待った。
あれから何人の人が測定しただろうか。後二人測定が終わるとカケル順番のなる所まで来た。 ここまで来るとワクワクよりドキドキの気持ちの方が強くなってしまうのだ。
すると二人のうちの、一番前に並んでいた生徒が測定をした瞬間に教師が「エッ!!」っと悲鳴を上げたため、測定がまだに人も、終わった人もそちらを見た。皆「何事か!」と言わんばかりの目つきをしていた。当然カケルもだ。
しばらくすると、ぞろぞろと他の教師も現れ、前にいた生徒を囲む形で集まった。その中には理事長も集まっていたため、そうとう大変な事態になったのだと瞬時に周りの人は理解した。
しばらく時間が経つと囲いがバラバラと崩れ始めて、それと同時に理事長がマイクを握りステージ上で冷静にこう言い放った。
「えー今勇者クラスの生徒が現れた。すまないが測定を終わった生徒は、速やかにこのホールから出ていってくれ。まだ終わってないものも終わったらすぐ出ていくことだ」
こう言い放った後、早く測定を終わらしたいのか、何故か測定をする窓口が増えた。
こうして自分の番が終わり、残りの人も十分の掛からずに終わってしまった。
先ほど学園長が言った勇者クラスと言ったが、まあ簡単に言えば魔力の階級だ。
上から、勇者、騎士団長、騎士長、騎士、一般人とクラス分けされている。
え?僕がどのクラスの魔力かって?フフっ聞いて驚け僕は「勇者クラスだ!!!!」ってのは嘘で本当は一般人クラスです……。
この学園に入る人は最低でも騎士クラスの魔力が必要で、この学園で一般人クラスはカケルただ一人だけのである。
それはそれで問題になるかと思ったが、「そいつは特別だからほっとけ。」と学園長に言われたので、さほど問題にはならなかったが、学園中の生徒には既に広まっており、入学早々雑魚になったのだ。
あの王女様は力が有るとか言ったけど、これは流石にヤバイでしょ(笑)。だって最弱だよ?雑魚だよ?最弱が国を救うなんて笑えるよ、ホントに笑えるよな……。
内心はもの凄く嫌だった。もうこの学園に来たくないぐらい嫌だった。これがきっかけでイジメが起こるのではないかと、想像してしまった時は体中の毛が反り返るぐらい鳥肌がたったのだ。
だが王女様に国を救うのを手伝うと宣言してしまったからには、学園に行くしかないのだ。それしかカケルには生きる道がなかったのだ……。
こうしてカケルの学園生活は最悪な一日で幕を開けたのだ。
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