魔法学園最弱の俺が英雄に
結城 もみじ
第1話プロローグ
「あーあ、暇だなー、はぁーネットでも見るか」
薄い生地のカーテン越しに、太陽の光が部屋を薄明るく照らしてくれる。
外では、仕事に行く人や、学校に行くもの、幼稚園へ送っているもののいる中……
え?僕は何をしているんだって?
僕は今色々と訳があって、絶賛「引きこもり」中なのだ。他の人はニートとか呼んでるらしいが、そんなのは知らん。
そう、僕こと相馬カケルは、引きこもりをしているのである。前までは、なんの魅力のないそこら辺の高校生をしていたのだ。では、何故こうして引きこもりをしてるというと……
______________
九月一日、始業式、夏休みが終わり残暑が残る中、高校生に限らず、学校に通ってるものならば、皆当然登校するのだが、皆浮かない顔をしている。きっと10人中8人は登校中に溜息混じりに、こう言うだろう。
「今日からまた学校かぁー、めんどいなー、だるいなー、行きたくないなー」と。
当然カケルもその中の一人だ。
だって面白くないじゃん、疲れるし、暑いし、居心地悪いし、出来るんだったらあのままクーラーの効いた部屋で、ゲームや、マンガをやったり、読んだりしてごろごろと一日をすごしたいのだ。
他にも行きたくない理由は有る。
まぁ、色々ぐちぐち言いつつも学校に登校したのだ。
靴箱で上履きに履き替え、一歩一歩ずっしりとした重い足取りでクラスの前に行き、教室の扉を開けた。
その瞬間
「ボフ……」
何があったのかと言うと、扉を開けた瞬間上からチョークの粉を沢山含んだ黒板消しが降ってきたのだ。まぁ、今日は案外ましなほうなのかもしれない。ある日は、大量の水が入ったバケツをぶっ掛けられたり、ある日は砂?ぽいものまで降ってきたのだ。当然のように後片付けはカケルがやっている。
周りの人は手伝うという優しい気持ちは、微塵も感じられないのだ。与えてくれるのは、冷たい目線や、馬鹿にしている表情だけなのだ。
「ギャハハー、あいつ新学期早々引っ掛かりやがったよ」
「マジで来なければ良いのになぁー、ギャハハー」
とクラス中が笑いで包まれる中、カケルは静かに自分の席に座った。男子は次どんな嫌がらせをするかこちらをチラチラ見ながら考えており、女子はスマホをいじりながらゲラゲラと笑っている。
そう、これを見てカケルが行きたくない理由が大体分かってきてるであろう。
最近の学校でよく起こっている「いじめ」なのだ。
周りの人はそれに流され、やってる張本人たちは悪いことをしたという思いがなく、最低な行為なのだ。
まぁ、いつもの事であろうと思う反面「いつになったらいじめ終わるんだろう」っと考えながら、カケルは、机の中に教科書などを入れ終わり、この嫌な空間から遮断するかのように机を枕にし、手で顔を包もうとした瞬間、彼女は現れたのだ…。
「カケル君おはよー♪って頭にチョークの粉沢山付いてるよー、取ってあげるから動かないでね。」
彼女はそう言いつつ、赤ちゃんの頭を撫でる用に優しくチョークの粉を取ってくれたのだ。
その彼女こと西野凛は、この学年?いや、この学校のアイドルみたいな存在であり、男女問わず人気なのだ。それに「優しい、頭も良い、それに可愛い」と三拍子+スタイルも出てる所は出て、引っ込んでる所は引っ込んでおり完璧な美少女なのだ。
そして、カケルがこうなった原因でもあるのだ。
その人気は、他の学年にも広まっており、既に男子からは告白を何回もされており、女子からは憧れの的である。一部熱狂的な男子ファンは「俺が付き合うんだぁー」「いや、俺だぁー」と盛り上がっている程に学校中の人気者なのである。
「あぁ、ありがと西野さん。別に気にしてないからいいよ」
すると、周りから鋭い視線に晒されたカケルは、「まぁいつものことだから」と思いつつ、苦笑いしながら答えた。
周りの男子や女子は、「なんであんな奴が」とか、「死ね」と心の中で思ってるのだろう。でなければ、あんな殺気の塊のような視線は出来ないであろう。
チョークを払い終わった凛は、安心したようで、その顔を見ると少し頬がピンク色になりながら嬉しそうにニコニコと笑った。
なので、カケルも苦笑いで笑顔をお返しした。この状況で笑い返さないとますます視線がいたくなるからだ。それより、どうしてそんな嬉しそうに笑うんだよぉ、ますます周りの殺気が増すではないか。毎回毎回、どうして僕みたいな顔は平凡だし、性格も大人しいし、他にも自分の悪いところは出てくるのだが、切りがないのでこのぐらいにしといて、どうして僕みたいな人と絡んでくるのか不思議に思うのだ。それは、周りにいるものも同じ気持ちだ。だってこんな俺だよ?いじめられっ子なのに、もしこんな僕に惚れているならきっと周りは黙ってはいられないだろう。周りにはもっと顔も性格もいい人が居るのにどうして僕なんかと……と思っていると教室が、急に騒がしくなったのだ。
そう、奴らが来たのだ。
奴らの中には、カケルが言った”いい人”もいるのだ。
「やぁー西野さん、おはよー今日も綺麗だねー」
「おー凜さん、おはよー」
「凛ー、まだそんな奴の相手してるの?毎日大変ねー」
奴らこそ、人間関係ピラミッドの頂点に君臨する如月嵐士〈きさらぎ あらし〉とその仲間の田中翼と、朝霧真央〈あさぎり まお〉と、さっきからカケルをずっと睨んでる親衛隊達だ。
親衛隊たちはとりあえず置いておいて、問題は如月達だ。
嵐士は、明らかにこちらをずっと睨んでおり、その目線は「俺の凛と何を話してる」と言ってるようにしか見えないのだ。てゆうか、いつから俺の物になったのかてことは、つっこまないでおこう。
まぁ、そう自信満々になるのも分かる。なんせ、嵐士は入学早々女の子達から告白を受けてるからだ。それも一人ではなく、10人程から告白され、入学後も告白ラッシュはやむことなく、一日一回は告白を受けているのではないかとうわさが出回るぐらいのモテモテなのだ。
こんなアニメキャラみたいな存在が居るのかと思っていたら、目の前にその存在が現れたのだ。
現れたときは流石にド肝も抜かれたのだ。
それに、カケルと嵐士は、いじめられっ子と学校中の人気者でその差は歴然で、まさに天と地の差なのだ。
そして、田中翼、部活はサッカー部でエースなのである。しかも、そこそこモテてるのだ。学年モテモテランキングとかあったら恐らく、二位だろう。当然一位は嵐士なのである。
サッカーの試合では、翼を見るために試合に来るファンもいるぐらい人気なのである。
それと、少しチャライ。
朝霧真央は、どこかのお嬢さんで、詳しくは皆知らず謎に包まれている。だが西野とは違い、気品のある可愛さだ。いや、可愛いというより美しいと言った方がしっくりくる。雰囲気はザ・お嬢様って感じで、扇子を持てばもうお嬢様にしか見えなのだ。他の人からは”お姉さま”や”お嬢様”と呼ばれているそうだが、本人はあんまりそう呼んでほしくないのか、その名前を呼ばないように注意する所をよく目撃する。
っと三人の紹介はこんな感じだろうか。
「西野さん、そんな奴ほっといて俺達の方に来いよーお話しようよー」
「嵐士やっさしーー」
「そうよーこっちおいでよー」
イケメンなのに実にに嫌な奴だ。少しはこっちの気持ちを考えろ!と言いたいが、それを言うと親衛隊にボッコボコにされるので、心の中で叫んだ。
「別に嫌じゃないよー、カケル君優しいし」
ああーなんてありがたい言葉なんだ~。唯一優しく接してくれる西野さんだからこそなのかもしれないと、思った。
嵐士は何か言いたいような顔をしていたが、HRのチャイムがなったので引いて行った。
授業はカケルは基本発表せず、聴いて黒板の内容を書き写していくスタイルだ。これでも成績は中の上ぐらいなので、頭はそんなに悪くない。
そうしてあっという間に昼休み、僕はいつもと同じように自分の席でボッチ飯をした。食べ終わった後、一人のクラスメイトの男子がカケルに「体育館裏に来い」と言われたので、指示に従って行ってみると
「おい、なんで呼ばれたか分かってるよなぁぁぁ!」
「うっ!?」
体育館裏で待っていた嵐士はそういうと、カケルの腹を思いっ切り殴ったのだ。
そして、顔が腫れるまで殴られ、その顔は人に見せられるようなものではなかった。なのでカケルは早退したのだ。
クラスの人達に見られたくなかったってこともあるが、一番は西野さんに迷惑をかけたくないのだ。
カケルにとってはいつもの事なので、先生に体調が優れないとか言い訳をして帰った。顔は階段から落ちたとか言い訳をしている。
そう、これがカケルの日常なのだ。たまに、下校時に西野さんが心配して家まで来てくれるが、嵐士とその仲間達も同行しているので、カケルは応答しなかった。きっと応答したらますますいじめがエスカレートすると分かっていたからだ。
しかし、これが毎日続くのだ。もしあなたがこんな目に遭ったら、毎日耐え切れますか?
恐らく、全員が口をそろえて「無理」と二言で返事をするのだ。
耐えきれずに、学校に行かなかったらどうなるか。
だんだん行かなくなり、だんだん……。
大体、察することができるであろう。
そう、カケルは引きこもりになったのだ。
親はカケルに行きたくない理由を聞くと「学校にいじめた人達を退学させるべき」と言った。が、学校側は彼らの将来が優先だとか言い、まともに相手してくれなかったそうだ。
____________
「はぁーもうこんな世界つまんないなぁー」
「ネットも見飽きたし、早めの昼寝とするか」
まぁマンガも飽き、ゲームも飽き、今はネットに飽きかけているのだ。まぁ自分の興味のあること片っ端から調べたら、そりゃいつか調べたいことが尽きて飽きるにきまってる。
そういってカケルはベットに寝転がり、静かに眠りについた。
しばらく寝てると頭の中に謎の声が響きはじめた。
「や、やっと……見つけました」
「え?何だこの声……何が起こってるんだ?今俺は寝てるし」
「今あなたの頭の中に話しかけています。」
まぁいわゆるこれは、念動的なものであろう。
だが、この地球という星には念動力という非科学的なのもは存在しないのだ。一部の人は使えるとか言っているが、あれはなんらかのタネがあるのであろう。そうでなければ今頃科学者達に捕まって脳の中を覗くように調べて、元の生活に戻れない体になっているのだ。
けれど、そんな非科学的なのもが存在する世界なんて思いつくのはアニメやラノベぐらいであろう。
「!?一体君は何者なんだ!!」
「お目覚めすればお話します……」
「お、おい!待ってくれよー」
そう言い、ボヤァーっと光っていた霧が頭の中から無くなり、女の子の声も霧と同じ用にカケルの頭の中からスゥーっと消えていった。
声は聴いた瞬間女の子っていうのはすぐに分かった。年齢は16~18ぐらいだろうか。
まだ、大人っぽくない声で可愛いかったなー。カケルも健全な男の子なんだからそういう考えを持っても何にも問題は無いであろう。まぁ考えすぎは良くないか。
だが、今のは一体……
でも、あの子は目が覚めればお話しするって言ってたな。夢だと良いんだけどな。あーあ短い昼寝だったなー。短いって言っても三時間ぐらいしか寝てないが、まぁとりあえず起きてみれば夢か真か分かるからな。
そしてカケルは重い瞼を開けることにした。
「う、うぅーー、ふぁーー」
起きたカケルは背伸びをした後、目をこすりながら周りを見渡した。
「ん?あれ?ココ俺の部屋じゃ…ない?ってココどこだよぉぉぉ!!」
どうやらここはどう考えてもカケルの部屋ではないのだ。見渡すと天上には何かしらの宝石のシャンデリアが吊されており、床のは薔薇のガラの入った高級感ある絨毯が敷かれている。そしてカケルが寝ていたベットは自分が寝ていたベットとは違い、フカフカしていて横幅5メートル、縦が3メートルでとっても大きくてこれもまた高級感がある。
カケルから見て部屋の左奥には扉があり、右側には大きな窓がありここからでは外の景色は見れないが、きっと良い景色なことは分かった。この部屋を簡単に言い表すと、“英国の宮殿の寝室”みたいだ。実際に宮殿の寝室は見たことはないがあくまでもイメージなのである。
そしてココはどこや。何故あの地味な自分の部屋から英国風の部屋にガラリっと変わったか、ここが自分が居た国からは遙か遠い場所なのか、や色々と考えた結果、カケルは“ここは異世界かもしれない”と判断したのだ。
いくら何でも考え過ぎなのかもしれない。夢の見過ぎとか言うかもしれない。だがこの考え以外この状況を言い表すことが出来ないのだ。
もしココがカケルが居た世界のどこかの国だとしよう。そしたら何故カケルがココにいるのか、ってことがまず最初に引っかかる。拉致したとしても寝ていた三時間で他の国に連れて行くことはほぼ不可能なのだ。一番速い飛行機を使ったとしても、パスポートなど色々下準備をしなければならず、ここまでしてもカケルを連れ去りたいのは明らかに不自然なのだ。どっかの貴族の末裔でもないし、なんらかの秘密情報を握ってるっていうのも無いのだ。その他にも言いたいことは有るが、大体はこれが理由だ。
もし、他の国に連れてこれたとしよう。そしたら何故こんな高級感あふれる部屋に招待したのかだ。
拉致したのならそこら辺の一般に使う部屋ではなく、豪華な部屋にしたのか不思議に思ってしまう。それに何故カケルなのかだ。わざわざ他国から連れ去ろうとするならな、自国の人をさらった方が簡単なのだ。他国から連れ去るなど、なんのメッリトも無いのだ。その他にも理由はあるが、結果的に“異世界”に来たということしか辻褄がどうしても合わないのだ。
そう色々と考えてると奥の扉の方から、コツコツと足音が聞こえてきたのだ。
もしかしたら、こっちの部屋に向かってきてる?てことは俺を始末しに来たのかよ……。カケルは心中で独り言を呟いたその後、足音が近づくにつれて警戒心を上げていった。
足音がこの部屋に響き初めて十秒程がたった頃だろうか。その足音は突然聞こえなくなったのである。だがその代わりかのように、奥の扉が「ガチャリ」「ギイー」と重く響いた音を立てながら開いたのである。わずかに見える白いドレスに身を包まれ、そのドレスには、薔薇の刺繍が施されてる。この服装を見て貴族なんだとなんとなく分かる。あくまでも自分の意見だ。
そして、そのドレス姿の貴族(仮)が姿を現したのだ。
目の前に現れたのは、僕より少し年上の女の子なのである。僕が居た国で例えるなら大学生って所だろう。身長は百六十五センチぐらいで、胸はそこそこ出ていてお腹はシュッとしていてとてもスリムで別嬪さんなのだ。その女の子のすぐ脇には、ドラマとかでよく見かける執事の服を着た五十歳ぐらいのおじさんがいる。おそらく身の回りのお世話係と言った所であろう。
「突然お呼びしてしまって、申し訳ございません。あなたにはこの国でやって頂きたい事がありましたので召喚しました」
あーやっぱりか……、っとボソッと呟いた。でもこうしてあんな世界からの逃げ出せる事がでたのかと思うと、正直嬉しいのだ。
「これはご丁寧にどうも。僕の名前は相馬カケルと言います。それでえーっとあなたの名前は?」
「はい、私の名前はルルカーディア・エリン・クリスタと言います。一応この国の王女を務めおります。名前は長いのでエリンと呼んでください」
これで貴族と分かったので(仮)は外しとこう。
カケルはこれにコクコクと首を上下に動かす。相手が女王様だから、頷くだけではまずかったかな?何かやっぱり返事した方が良かったなーとカケルが後悔してると、突然女王様の口から耳を疑うような言葉が飛び出したのだ。
「カケル様をココにお呼びしたのは、他でもありません。この国を救って貰うためにココにお呼びしました」
「え?僕がですか?そんな凄い力とか持って無いですよ」
「いえ、あなたのにはとても強い力があります。自分の力はのちのち分かりますよ」
「のちのちですかぁ。まぁ強い力があると言うなら手助けはしますよ」
「そうですか! 有難うございます!」
彼女の顔はすぐにパァーっと明るくなりニコっと笑った。その顔を見たカケルもなんか嬉しくなり笑い返した。
だがカケルはこの時思ってもいなかったのだ。この国で起きている事の大きさは途轍もなく、それを背負ってく事のなることは、カケルは知らないのだ。
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