山々

木尾荷悠

第1話

 二つ山が並んでるよね。

 こっちの山は善い山だよ。

 向こうの山は悪い山だよ。


 善い山はすごいね。

 人がいっぱい登ろうとしてるよ。

 やっぱり善い山が好きな人がよく集まるよね。


 悪い山は無くなってしまえばいい?

 そうでもないよ。

 ほら、あの人を見て。悪い山にこそ登りたがる人もいるんだよ。


 善い山、悪い山、かたっぽしか見えていない人もいるよ。

 あの人の角度からじゃあ悪い山は見えないなぁ。

 見えた時に幻滅しないといいけどね。


 そもそもこの山々に関心の無い人もいるよ。

 ほら、あの人なんか見向きもしないで素通りしてる。近くにいるのにね。


 でもね、人ってそういうものなんだよ。

 うん、そういうものなんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

山々 木尾荷悠 @ethereal1212

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る