第74話 グレート・ケツプリ
ドラジェさんが出ていってから、何日経ったのかわからなくなるぐらい、俺たちはトレーニングと休息を繰り返した。
いやまあ、ここの龍穴という場所は、太陽が出るとか夜になるとかそういうのが全くないので、トレーニングの数を数えていればいいんだが、俺たちはその回数すらわからなくなるぐらい疲れるまでトレーニングを行い、そして寝て、の状態だったのだ。
「あの、大丈夫ですか?」
スクワット7,000回をこなし、前後不覚で寝入ってしまった俺を、ドラジェさんの涼やかな声が起こしてくれた。
まだ力尽きている状態なので、俺は大の字に寝転んだまま返事をする。
その状態の俺の脇にドラジェさんが腰を下ろした。
「大丈夫ですか?」
「はい……まあなんとか」
「これ、出来ましたよ。どうぞ」
ドラジェさんが、スマホを俺に渡す。
疲れていたはずなのだが、俺は新作のゲームを待ちきれない子供のように、寝転がりながら田舎ファンタジアを起動する。
アプリの名称はそのままなのね。そして、画面を開くと大和田さんが手書きした棒人間のよりも、かなり比べものにならないぐらいのクオリティで3Dポリゴンの俺がゆっくりくるくると回って立っていた。
装備品もタップすると左右から詳細ページがスライドして表示されるようになっている。以前の呪文の表示は呪文名だけが羅列しているものだったのだが、今回の龍族アップデートにより、呪文名をタップすると効果や持続時間等が現れていて非常に使いやすくなっている。
画面の切り替わり方も以前のもっさりした動きではなく「シャキ――ン!!」という感じである。すごいな。
そして俺はレベルを確認する。
レベル245。えええーー!!
「すげぇ……」
「ええ、龍族総掛かりでがんばりました。技名、装備一覧などもワンタッチで見えるようにし、更新もタイムラグなしでいけますよ」
あ、はい。アプリもすごいっすね。すみません。
だけど、それよりも俺のレベルの上がりが尋常じゃない。
「龍族トレーニングですから。それと昔の尼にも施しましたけど、龍族の加護がついているので、通常の人間よりも力、すばやさなどの基本能力が格段にアップしているはずですよ」
やっぱり涼しい顔をして、ドラジェさんは言う。
「龍族の加護をつけてまで、俺たちに魔王を退治してほしいという理由は?」
ドラジェさんは少し申し訳ない顔をして、俺の疑問に応える。
「本来なら、この争いは龍族と
まあ、俺は勇者のご指名をもらったし、やるだけやらないとなー。
……出来れば、みよちゃんも助けたいし。
「龍族の加護やアプリ、ありがとうございます。魔王に勝てるよう、トレーニングをもっと積み重ねます」
ドラジェさんからシアンの動向を聞いたところ、シアンも今は俺に同行するために修行をしているらしい。
ドラジェさんを筆頭とした龍族の女性は、俺たちが魔王に勝てるように装備する武具なども揃えている最中で、準備って楽しいですよね的なことを話していた。
そんな会話をドラジェさんとしていたら、俺の前に一番筋肉隆々な、とくにお尻がムッキムキなおっさん……いや龍族の男性が立っていた。
「あ、グレート・ケツプリさん……」
そういうと、ドラジェさんが立ち上がって「それでは、勇者、頑張ってください」と小声で言い、グレート・ケツプリさんに挨拶をし、そそくさと去った。
なんとなくドラジェさんはグレート・ケツプリと呼ばれるおっさんが苦手なような感じの去りかただった。気のせいかな。
「よし、勇者。基本トレーニングは、ほぼ済んだ。これから必殺技のトレーニングに移るぞ!!!」
鼻息を荒くしてグレート・ケツプリさんがいう。
うわぁ、マジ怖いよ。暑苦しいよ。助けてドラジェ姉さん!!!
心の中でドラジェさんを呼ぶものの誰も来るはずもなく、俺はケツプリさんにしごかれることになった。
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