第51話 サイクロンダリング

 俺たちは、早速そのアパートまで行ってみることにした。

 通りすがりに、たまに飲み屋のおねーちゃんが片言で、


「オニーサン、イツデモノミニキナヨー!」


 とか声をかけてくれる。

 慣れているミカゲは愛想よく返事していたが、俺はそういうのが苦手であり、シアンと2人で憮然とそのアパートを観察する。

 あかねんとタローはなにやら、オタク的な話で盛り上がっているようだ。


 問題のアパートの外観は築30年は超えていそうなボロボロなものであった。壁は灰色が変色して、ヘドロのような色になっている。外付きの階段は至る所が錆だらけで、それでも頑張って建ってますみたいな雰囲気のアパートだった。


「そーいやさ、ミカゲってこの会社の名前って知ってる?」

「えーっとなんだっけな、サイクリング? サイクロンダリング? サイ……」

「サイクロプス……ですよね、ミカゲさん」


 途中、オタク話から抜けてあかねんが俺たちの話に混ざってくる。


 わぁ……とうとう巨人かぁ、と目をランランとさせながら言っていたが、あかねんのオタク知識はもう超物知りの域だよ!


 ……そういえばさあ色々言い当てるってことは、あかねんが魔王でしょ! だって、あかねんの的中率は今のところ100%だしさぁ。


「いや、魔王ではないですよ。……でもそれは一理あるかもですね」


 魔王ではないと否定したあかねんは、何やら思うところがあったらしい。


 が、目の前のアパート……いやサイクロプスのアジトへ踏み込むための方法を、まずは決めないといけないと思い直したあかねんは、魔王うんぬんの思考を片隅に追いやったらしい。


「まあとにかくデカい化け物なんだろ? 親玉もきっとそれと同じ感じなんだろうから、ごちゃごちゃ言ってねぇで行ったほうがいいんじゃねぇか?」

「アパートが狭いから、少しづつ片付けていけば、そんなに苦戦しないかもしれないかな……そうそう、シアンに聞いておきたいことが」


 シアンに、あの剣の光を何度も発動させられるか聞いてみる。


「あれは1日1回のみ。魔力補給しないとダメ」


 光が届かないところは除菌……いや除モンスターの効果が出ないらしい。


 大広間みたいなところのモンスターの解呪なら効果大だけど、今回のアパートみたいに細かく区切ってある部屋のパターンには向かないらしい。


 ……やっぱ地道に面胴小手だな。


 とりあえず乗り込んでからあとのことを考えよう、と全員で相談した。計画もなにもない単純な力技での乗り込みである。


「タローくん良し!」


 あかねんが、タローの顔にガスマスクが装備されていないことを指差呼称する。

 ミカゲもアイスソードをしっかりと握り直した。

 タローはなぜか舌をぐりぐりと回していた。キモい……いや、あまり直視しないでおこう。

 俺は左手でシアンと手をつなぎ剣を右手に持つ。


 乗り込む準備は完了だ。



「よし……、始めるぞっ!!!!!!!!!」

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