第44話 シアンちゃん☆登場っ

 俺は戦域をかいくぐって、剣の前へ向かう。


 置いてある剣の手前……大広間から最奥の小部屋の境目に、なにか食品ラップっぽいもので封印がしてあったが、それをバリバリと剥がし奥の剣を取る。


 ギャオオオォォォン!!


 そのラップの音に反応し、ミカゲたちを無視して俺に向かってくる龍。

 あ、なんか蜘蛛の糸的な龍センサーだったのかな?


 ……だが、遅い!!


 ガツッと剣を掴み、下の岩座から剣を引き抜くと同時にLEDライトがカッ! と光った。

 ……いや、ここまでの演出いいですから。龍が向かってきてるし。色々とそれどころじゃないしっ!


「面胴小手っ!!!!!!」


 ……剣のあった場所はちょっと狭かった。

 大きな龍は最奥の部屋に入れなくて、鼻先だけ俺に向かって突っ込んできた。


 口すら開けれなかった龍は、ブレス攻撃することもなく、俺のコンパクトな面胴小手で一網打尽であった。

 先生、すごくあっけなかったです……。



 俺に身体を削られた龍は大きく身体を光らせて、一瞬のうちに人の姿に戻った。

 ……いやー、プロジェクションマッピングとコスプレを組み合わせるとすごいかっこいい効果だね。龍の消えるシーンなんてその場でCGを見ている気分だったよ。


 でもLEDライトぐらいはきちんと見えなくするとか、そういう配慮が欲しいよね。



「つ、つるぺたみずいろボブヘアちゃん!!!!」


 そこには、かなり小柄で水色ボブヘアの女の子が倒れていた。

 タローはいち早くそれを見つけ、駆け寄っていた、が、あかねんに制止されていて、ミカゲには蹴りを入れられていた。




「……記憶が、ありません」


 その女の子は目覚めたときに、静かにそう言った。

 タローは「うんうんいいんだよ異世界からくる女の子とかそういうパターンもありますからだいじょうぶぼくが師匠ですから」とかなり早口でまくし立てていた。

 そんなタローを、ミカゲが思いっきりグーで殴っていた。


 でも、タローが勘違いするのも納得できる。

 色素の薄い顔に、青色のクリっとした目。うっすらと青みがかったような白銀の髪の毛は、きちっと肩の少し上で切りそろえてある。


 洋服は、白くてどこかの民族衣装のようなロングコートのような、不思議な装束に身を包んでいる儚げな少女。

 その娘が、さっきゲットしたばかりの俺の剣をジッと見つめてくるのだ。


「なにか、その剣に見覚えがあります。……それだけです」


 無表情に説明する女の子。

 見た目は10~12歳ぐらいなのだが、口調や雰囲気はあかねんより年上に思える感じだった。


 一旦迷い子として、預かってもらうか? と全員で相談したが、その女の子は「いかない」と一言だけいって拒否した。

 まあ一度、一緒に役場へ行って、問題があればそのときにこの娘は回収されるだろう、と結論づけた。


「名前ないと、不便ですよね」

「うん、そうd…「ミカエルたんにしましょうううううっっっっっっっ!!!」


 俺の言葉の途中で、タローが提案してきた。おい、食いつきよすぎだろ。


「ええー、ミカエルって天使の名前ですし、いかにもありきたりかと。それにですねミカエルとは守り手であり、キリスト教の解釈では……」


 あかねんの知識力に、タローはタジタジになってしまっていた。

 その間に、女の子へ名前は何がいいのか聞くことにした。


「マスターが名前をつけてください」


 俺を指差し、女の子はマスターと呼んだ。

 ? いえ、俺喫茶店とか経営してないですし。そう説得するも、マスターという呼び方は変えない、と女の子は言い切った。


「……シアン、で良いかな?」


 髪の毛がインクジェットプリンタの替えインクのシアン色に似ていたので、ものすごく安直なネーミングである。


「はい、マスター」


 感情の無い声ではあったが、シアンは少し嬉しそうな、そんな感じに返事をしてくれたのだった。

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