第38話 戦略

「……よし、これからのスキル習得次第だけどよ、ちょっとは目処がついてきたぜ」


 ふうっと煙草の煙を出し、ミカゲはA4の紙に色々書いていたものを俺に見せる。大まかにはあかねんの呪文でバジリスクを足止めし、ミカゲがバジリスクの攻撃を総受けする。そして俺がバジリスクの外殻をそいでいき、お面がみえたときに面胴小手を使う。


「ただなー、これやるなら、バジリスクよりレベルが上にならないとキツイよな」


 あかねんが色々使える呪文を持っているので、回復に専念させるよりは、状況を見て呪文を選ぶ余裕は欲しい。

 なので、レベルが上じゃないと負けることもあり得る。


「そういえば、俺たち負けたらどうなるんだろうね」


 今までは本格的なコスプレがなかったので、負けると思えることがなかった。

 恵奈ちゃんのときでもわりと余裕だったし。

 でも今回の咲ちゃんバジリスクはかなりの強敵で、初めて負けそうでもある。


「そんなん、ヘルプに電話して聞けばいいだろ?てーか、ヤるなら勝つ!」


 ミカゲは負けるとかそういう弱気なことが嫌いだったらしく、めんどくさそうに俺の問いかけに答える。そうか、みよちゃんに聞けばいいのか。


「ようこそ!」


 おいいいいいいっ!ようこそ職員さん……いや大和田さんでは電話の役に立たないだろうよ……。


「すみません間違いました」


 そう俺は一方的に言って電話を切った。そしてミカゲにはみよちゃん居ないみたいだよ、と伝えた。


「三代目ぇぇぇええ! つかえねーなマジ」

「うーん、まあレベルはあの2人にまかせようよ。なんか連携いいしさ」

「だなー。俺も今日は体力ねぇわ。休んどくべ」


 のんびりとあかねんとタローの戦闘を見る。


「ちょっとタロー君、そこどいてっ」

「は、はいっ」

「ホーリーアセンションっ!」


 あかねんのホーリーアセンションは、ひとつの風の刃がモンスターを切り裂く呪文である。だけど、あかねんはその風の刃を2つに割って、それぞれのモンスターに当てて倒していた。

 すげー、スキルを臨機応変に使っているよ、あかねん。

 てことは、俺たちも決まったものではなく、自分独自に技を変えるってことができるんではないだろうか。ミカゲにそのことを伝えると、


「そうか……なら……」


 とまたミカゲは戦略を考え始めた。

 傍らに置いてあるタフマンの空き瓶は4本目である。飲み過ぎだろ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る