第12話 たけのヤリ
「いらっしゃいませ~」
途中、スライムさんとの遭遇はあったものの、他のモンスターには出会わずに、俺の家近くのコンビニに着いた。
まあ……第一村人発見! とかどこかの番組でやるようなレベルの閑散とした村なので、コンビニ付近でやっとお面をかぶっていない人と3人ほどすれ違った。
その人たちでに会話をしかけるとロールプレイングゲームでよくありそうな会話なのだが、俺たちのヒントとなるような情報はなかった。
以前見かけた、たけのヤリコーナーにはやっぱりたけのヤリが置いてあった。
クオリティは相変わらずの低さで、『たけのヤリ 15G』と書いてある。
おおおおい! 以前より値段、上がってるじゃねーか!!
でも、武器を売っている心当たりはここだけなので、渋々、そのたけのヤリを2本購入することにした。ちなみに俺とあかねんの分である。
「あ、わたし、これ装備できないみたいです」
たけのヤリを持ったあかねんの画面には、リクルートスーツの下にあるたけのヤリの文字上に赤で×が書いてあった。
木のフタ的なものは装備できそうだったが、値札には『ひのきのたて 200G』と書かれているので断念したのだ。
「いらっしゃいませ~」
店員がお店の入り口に向かって挨拶をした。
なにげにチラッと見るとそこには先程の30代のおっさ……いやスライムさんがいた。
「いやあごめんごめん。ゴールドを渡すのを忘れていてね」
と牛乳瓶のフタをくれた。その数200枚。
集めるのに苦労したんですね……と同情しそうになったら、
「ほらあの僕、小学校教師ですから給食のときのアレをね、生徒から頂いたので。では僕は授業がありますので、これにて失礼します」
というとおっさんは去っていった。
どうやら魔物になると、わりと発言は自由らしい。
さらにアレとかいうと、なにかヤバいものではないかと思うだろうが、タダの牛乳瓶のフタである。
そして、すぐにゴールドが手に入るなんて都合のいい漫画のような展開かっ! とは思ったが、まあそこはあまり追求しないでおくことにした。
このへんな現象というか冒険を早くクリアしたいし。
そして、どう見ても廃材を再利用したようなひのきのたてを購入し、あかねんに渡す。
たけのヤリは俺とタローで装備することになった。
まあ、タローは装備とかレベルとかガラケーでは確認できないから、なんでもいいだろう。
コンビニの外に出て、近くにいる仮面のかぶっていない爺様に話しかける。
「あの、ヨネばあちゃんって知っていますか?」
「さあ、儂は盾しか作っておらぬ。それ以外のことはわからぬ」
……さっきの廃材再利用ひのきのたてはこのじいさんの仕業かっ!
通りで俺たちがアイテムを購入しているところを、コンビニの外から覗き込んでいたんだな。
……ふと、
「この歳になってなにが悲しゅうてロールプレイングゲームごっこをせにゃならんのじゃ」そんな感じの表情をじいさんから感じたが、そこは言わない約束だろう。
なぜなら、俺も今、そんな気持ちだからだ。
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