第7話 仲間との会話

「まあまあ、2人とも、とりあえず落ち着きなよ」



 ジトーっと陰気臭い目線を向けてくるタロー。

 それと、ぐずぐずと鼻をすすっているあかねん。


「ズッ、いやあのわたし、花粉症ですしズルズルッ」


 急な花粉症とか無理があるだろ。王様の娘が俺の嫁に云々とか話してたときから、あかねんはズルズルしているから、……多分だけど俺に気があるのかな、とは思う。

 どこぞの鈍感主人公のようにまったく気づかないなんてことはありえないだろ。あの状況で。


 だけど今はその問題よりも、この役場がおかしい。それが大問題である。



「で、これはドッキリだよね?」


 二人に聞いてみる。ここは総務課から出た廊下。先程のようこそ職員は仕事で自分のデスクに戻ったようで、村長室から出たすぐの廊下には誰もいない。


「ぼ、僕はドッキリであって欲しいです。ま、まさか異世界に来てまで主人公じゃないパターンってつ、つまらないですからね」


 キリッとした勢いでタローはいう。だがここは異世界じゃない。


「ズズッ、わたしもドッキリだと思います。いくらなんでもいきなり会ったことのない女と結婚なんてありえませんズッ」


 ああいや、そこが論点ではないのよ、あかねん。


「うーん、まずは情報収集だな。ドッキリなら村長以外に黒幕がいるんだろうし、そのほかの理由があるなら、その理由を探らないことには先に進まない気がする」


 むりやりロールプレイングゲーム風のセリフを喋らなきゃいけない職員は、早くこの状態を解いてほしいと思うだろう。

 いや確実に総務課全員に話しかけたときに、完全に無理をしている状態だった。


 ……それは間違いがない。



「ズッ、もうちょっと詳しく話が聞ける人物がいるといいんですけどねズッ」

「し、仕事もあまりやりたくないけど、こ、この脇役状態より、元に戻ったほうがいいと、ぼ、僕も思います」


 3人の意見は揃った。……ことにしよう。色々と統一取れてないけど。


 まずは1階へ降りよう、そう3人で話を決めて階段を降りようとしたとき、資料室と書かれたドアがズバーン! と開いた。


「え? なんだ? 誰か出て来るのか?」

「ズ、びっくりしましたズッ」

「………」


 うわぁ、タローが卒倒している。

 ドアが開いただけで気絶って、どんだけハートが弱いんだこいつ。


 仕方がないので、ゆさゆさとタローを揺さぶる俺。


「あ、おかあちゃま、おはようございムニャ」

「おいこらぁ、いきなり寝るかそこで! ていうかおかあちゃまって呼んでるのかよ!」


 ゴシゴシ目をこすって起き上がるタローはもう放っておいて、資料室のドアをあかねんと一緒に覗き込む。



 そこには長いローブに身を包んだ、……役場職員の女性がいた。

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