平和な日常を過ごしていたおれの身はある日突然異能が使えるようになってしまった。

市ノ瀬結城

第1話

男子高校生の朝は早い

「ふぁ〜起きるか」

チラリと時計を見ると短針が丁度7と9の間を指していた。

……………………ん?短針が?

「って、遅刻じゃねーかぁぁぁぁぁ!」

男子高校生の朝は早い……はずなのである。


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「はっ…はっ…こりゃ完全に遅刻だな」

急いで学園前の坂道を登りきる。

「おぉ?こんな時間に登校とはとんだ重役出勤だな黒羽よ」

「げっ体育教師の村山……」

と、ここでそんな場合じゃないが自己紹介をすっといれておこう。俺の名前は黒羽優希くろばねゆうき。2年3組の普通の生徒である。

そしてこいつは体育教師の村山。一言でこいつを語るなら全生徒の敵である。悪魔である。

「覚悟は出来ているんだろ?黒羽」

「せ、先生って、とてもいい体してますよね〜筋肉も沢山ついてて男の中の男って感じがします」

「舐めておるのか。黒羽よ」

「いやいや、これは読者の方々に先生の外見を少しでもわかってもらおうとぉぉ!?」

「訳の分からんことを言うな!貴様にはたっぷりと制裁を加えてやろう」

こいつ片手で俺を持ち上げてやがる……!

俺だって170cm以上はあるんだぞ!?

「バケモンかよ……」

「ん?」

「あ。」

やっべー口に出てた。状況を把握しよう目の前のバケモ…もとい村山茂37歳独身は非常に怒っている。ほら。みて。こめかみがピクピク動いてるよ。ほんとに動くもんなんだね初めて知ったよ。

「何故か今の一瞬で尚更イラッとしたからお前には補修室でねっとり調教してやろう」

うわ、こいつ遂に心の中まで読めるようになったのかよ。ちなみにこいつに独身はタブーだ。

「って、補修室だって!?それはいやだぁぁぁ!!」

補修室に行ってその日のうちに無事に帰って来たものはおらず何故か一番乗りで登校してくるという村山都市伝説がうちの学園にはある。

「まぁまぁ落ち着け。俺も鬼じゃない」

あ、凄いなんか天使に見える。

「反省原稿用紙文210枚で許してやろう」

前言撤回。ただの悪魔。魔王だよ魔王。

「それもう売りに出せる位の量ですけど」

「心配するなお前の文章力が売り物になるわけないだろ。ハッハッハ」

いや、そういう問題じゃないだろ。

尚、このやり取りの間も片手で俺を持っている。

「さあ、行くぞ!」

「辞めてくれぇぇぇぇ……!!」

おれの叫びは虚しく響き渡りこの後日が落ちるまで村山とのマンツーマンは続いたのであった……



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「よく終わったな……あの量…ほんとバカじゃないのかあいつは」

一人愚痴をこぼしながら校門をでようとする。

「おーい優希ー」

その時後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。

「お、莉香じゃないか。部活はとっくのとうに終わってるはずだろ何してんだ?」

「ちょっと担任の先生に用があってね。優希は?今日は学校にいないもんだと思ってた」

こいつは稲叢莉香いなむらりか俺の幼馴染。髪は綺麗なピンク色のショートカットで青のような緑の様な瞳がとても綺麗である。顔も小さい。普通に可愛いと思っている。昔からこんなんだっけ?

「俺はあの、あれだよ、村山と夜の営みを」

「何言ってるの?優希はしょうがないんだから。大方遅刻した所を村山先生に見つかってなんか逆鱗に触れるようなことしたんでしょ?」

流石幼馴染だ。パーフェクトな回答である。

「ほんとお前は何でもお見通しだな。完敗だよ」

「何年一緒にいると思ってるの。優希のことは何でも分かっちゃうの」

ドキッとさせるようなセリフを言ってくれる…

顔赤くなってそう…周り暗くて良かった。

どうでもいい事だがおれは赤面症である。

「まぁいい帰るか。」

「あれ?何か顔赤くない?」

「っ!どうでもいい事だけどなおれは赤面症なんだよ!」

「うん。ほんとにどうでもいいことだね」

……そんな天使の様な笑顔で言われてもダメージが軽減されることはありません。

さて、この辺で第一話を終わりたい所なのだがこのまま終わって良いのだろうか。学園での日常的なシーンもないし。

「優希さっきから何を1人でブツブツ言ってるの?」

それどころかヒロインだって一人しか出てないし。

「優希?ゆーうーきー。優くん?聞こえてますかー」

ってかそもそも……

「異能でてねぇじゃねぇか!!タイトル詐欺だよこんちくしょう!!」

「わぁ!びっくりしたー」

「あれ、声に出ちゃってた?」

「うん、ずーっと」

これは失態だ。恥ずかしい

「何を考えてたのかは知らないけど、一人でブツブツ言ってるの気持ち悪いからやめてね。警察に連絡したい衝動抑えるの大変だから」

「だから、そんな笑顔で言われても!って言うかあれ、莉香さんそんなキャラでしたっけ」

「黙って」

黙った。

とにかく明日こそ学園シーンを目指して……!


あ、余談だけど僕達は美術部だよ。似合わないって?ばっかやろ人を見た目で判断するじゃないよ!ってそもそも見た目出てない……

「うるっさい!少しは自重しろ!」

また声に出ていたようです。というか自重してるつもりだったんだけどなぁ……

ボロが出ないうちに今回はこの辺で!

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平和な日常を過ごしていたおれの身はある日突然異能が使えるようになってしまった。 市ノ瀬結城 @icinomiya_yuuki

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