第7話 とろける笑顔のチーズ【後編】
翌日の昼過ぎ。
閑散としたカルム食堂の店内ではヒスイがご機嫌な様子でテーブルの拭き掃除をしていた。
「おてつだい~♪ おてつだい~♪ カルムくんのおてつだい~♪」
今回、カルムはアンナという女の子にチーズを好きになってもらおうとする中でヒスイに大事な仕事を任せることにした。もともと手伝うことが好きなヒスイは大事な仕事を任されたことが嬉しいらしく機嫌は上々だった。
もちろん、ゲルタが約束通り来るとは限らないのだが、根が真面目なゲルタならばきっと来てくれるだろうという信頼のような自信がカルムにはあった。
「ヒスイ、あまり張り切りすぎてゲルタさんたちが来る前に疲れ無いようにね」
「はーい! でも大丈夫だよ! 私がんばるから!」
ヒスイは胸をポムッと叩くとえへへっと笑いながらリズミカルに拭き掃除を続ける。
この調子ならばヒスイには何も問題無いだろう。問題があるとするならば……。
「……で、姉さんはいつまでそこで引き篭ってるのさ?」
一方、ヒスイがやる気満々なのに変わって、ドロシーはカウンターの裏で膝を曲げるように座り込み引き篭っていた。
カウンターの裏は掃除をしていてもどうしても汚れが溜まりやすい場所なのでカルムとしては姉の健康ためにも早くどいて欲しかった。
「………………」
「もしゲルタさんが来たら昨日のことをちゃんと謝らないと駄目だよ」
「……分かっている……わ。……だた、ちょっと顔を合わせづらいというか。……どう謝ったら良いかわからなくて」
子供が友達と喧嘩をして顔を合わせるのが気まずくなってしまった状態のようなものなのだろう。
昨日の、ドロシーが珍しく本音を漏らしてまで激怒した姿はカルムにとって新鮮ではあったが、別段驚きはしなかった。
なぜなら、カルムにはドロシーが怒った理由が分かっていたからだ。
「……どうしても許せなかったのよ。血の繋がりが無いと家族になれないとか、そんなこと言うものだから」
「うん、大丈夫。ちゃんと理解してるよ。俺も、その部分に関しては姉さんと同じ意見だし、家族に血の繋がりなんてものが関係ないのは俺と姉さんが証明してるからね。……まぁ、流石に投げ飛ばすのはどうかと思うけど」
「…………」
人には少なからず譲れない部分というものがある。
それが過去の経験や出来事から大切にしていることであったり、逆にトラウマとして抱えていることであったり、そこは人それぞれではあるのだがドロシーにとって血の繋がりの無い家族を否定されることはたとえ冗談であったとしても譲れない部分だったのだ。
「それに、ゲルタさんも本当はそうありたいと望んでると思うんだ。望んでるけど自信が無くて、だから不安になってあんなことを口走っちゃったんじゃないかな?」
ゲルタにとっては血の繋がりの無い者と家族になるのはこれが初めてのことだ。たとえ、ゲルタの二人への愛情が本物であったとしても、チーズを否定されたという事実の不安や心配を、理由や言い訳にこじつけてしまうのは仕方無いことだとカルムは考えていた。
「だから姉さん。ちゃんと謝って、ゲルタさんを応援してあげようよ。今回のことはさ、俺たちだからこそ応援してあげられると思うんだ」
カルムが子供のようにニッと微笑みドロシーに手を差し伸べる。
「……カルム、あなたは強いわね」
「なんたって姉さんの弟だからね」
「…………そうだったわね」
ドロシーはクスッと笑い、カルムの手を取って立ち上がると両手で思いっきり自分の頬を叩いた。
パンッ!という軽快な音が響き、顔を上げたドロシーの頬は少し赤く染まっていた。
「………んっ、よし! もう大丈夫よ! ごめんなさい。迷惑かけた分、あとの掃除は私に任せると良いわ!」
「カルム君、掃除終わったよー!」
「ありがとうヒスイ。あ、姉さんはちゃんと外で埃を落として来てね」
「あ、はい……」
立ち直ったドロシーの意気込みも虚しく空回りしたところで、三人はしばしの間、
その後しばらくして、ついにカルム食堂に待ちに待った3人のお客さんが訪れた。
「よお、カルム。約束通り来たぞ」
ゲルタは相変わらずの無精ヒゲだったが、昨日よりは顔色が少し晴れていた。
「いらっしゃい、ゲルタさん。すみません俺のわがままに付き合ってもらって」
「いや、俺も昨日のことをちゃんと謝って無かったしな。……すまなかった」
「いいんですよ。幸いあの時は他にお客さんもいませんでしたし」
「そうよ、ゲルタさん。あなたが謝ることじゃないわ。先に手を出したのは私の方だし。……その、昨日はごめんなさい」
お互いに真面目な性格の似た者同士なので、謝ることが出来たのならこれ以上この話が二人の間でこじれることは無いだろう。
カルムは一安心して次の話題に話を振った。
「それより、そちらのお二人がゲルタさんの……?」
ゲルタの後ろに居たブロンズ色の髪をしたカルムと同じ年ぐらいの女性と、同じ髪の小さな女の子に目を向ける。
「ああ、そうだった。紹介しねぇとな。リアナとアンナだ」
「はじめまして、カルムさん。リアナです」
ゲルタに紹介され女性の方、リアナがまず先にお
アンナの方は何かを警戒しているらしくリアナの後ろに隠れながらの無言のお辞儀だった。
「お二人もようこそいらっしゃいませ。今日はゆっくりしていってください。アンナちゃんもゆっくりしていってね」
「………はい」
返事は返してくれたが、やはりどこか警戒されている。カルムがどうしたのだろう思っているとゲルタが耳打ちをしてきた。
「……すまん、実はアンナにも事情を話しちまってな。チーズを食べさせられるかもしれないと思って警戒しちまってるんだよ。一応、行くか本人の意思は聞いてるから無理強いはしてないつもりなんだが」
「ああ、なるほど」
確かに、苦手なモノを食べさせられると思ったら警戒するだろう。
だが、そんな警戒をしながらもゲルタと共にこの場に来たアンナを見てカルムは安心とした。
やっぱり、アンナちゃんはゲルタのことが好きなのだ。
「とりあえず、中にどうぞ。テーブル席でもカウンター席でも自由に腰掛けてください」
店内へと案内された三人はすぐ近くの4人用のテーブル席に座る。
アンナはカルム食堂の異国風の内装に興味を持ったのか、店内に入ってから「わーっ」と口を開けたままずっと辺りを見渡していた。
「ヒスイ。しばらくの間よろしくね」
「うん、まかせて!」
すれ違いにヒスイにあとを任せ、カルムはドロシーを連れて厨房へと姿を消した。
「いらっしゃいませー! こちら水とおしぼりになります!」
ヒスイがいつもどおりの元気の良い声で3人の前に現れるとリアナがまず先に驚いた。
「………っ!? エ、エルフの方、ですか!?」
「はい、エルフ族のヒスイって言います! 今日は精一杯おもてなしをしますから楽しんでいってくださいね」
「はははっ、すげぇだろ。俺も初めて会ったときは驚いたもんだよ」
カルム食堂に訪れる常連や買い付け先のゲルタなどはすでに見知っているが、本来エルフは大きな街でも一人居るか居ないかと言われるほど稀有な存在だ。リアナのように始めて訪れた客は当然の反応だった。
「エルフ!? エルフってあの絵本に出てくるエルフ!? すごい、絵本のとおりだ! きれー!」
とくに驚いたのはアンナである。先ほどの警戒していた様子はすでになく、エルフと聞いておおはしゃぎだった。
まだ幼いアンナにとってエルフという種族は絵本の中にだけ登場する存在だ。そんなエルフが絵本の通り、見目麗しい外見で目の前に居るのだから小さな女の子が興奮しないわけが無かったのだ。
「ねぇねぇ、エルフのおねえちゃん! まほうが使えるってホント!?」
「うん、本当だよ! ……って言っても私はまだ未熟だからみんなみたいに上手く扱えないんだけどね……えへへ」
「ねぇ、見せて見せて! まほう見たい!」
「こら、アンナ。エルフのお姉さんに失礼でしょ? ……すみませんヒスイさん」
「あはは、気にしないでください。よく他のお客様からも言われますから。アンナちゃんは魔法が気になるんだね」
「うん!」
好奇心の塊のような子供にとって魔法という未知のチカラはそれだけ魅力的なものだ。
もちろん、子供に限らずエルフとは無縁の生活を送っている人たちにとってもそれは同じで、ヒスイは度々そういう客に魔法を見せて欲しいと頼まれることが多かった。
「それじゃ、あとで見せてあげるね!」
「やった!」
魔法を見せてもらえる約束をしたアンナはすっかりヒスイに懐いてしまった様子で、さらに質問の嵐を繰り出した。
エルフはどこに住んでるの? 長生きって本当? エルフのお姫様って本当にいるの? 魔法でドラゴンとか倒したことある?
などなど、絵本に描かれていた内容をひとつひとつを確かめるような質問にヒスイは丁寧に答えてあげた。
「アンナ、その辺にしておきなさい」
「えぇー……! じゃあじゃあ、つぎでさいご! ね? いいでしょ?」
娘の質問の量が多く、流石に失礼だと思ったリアナがアンナにそろそろ止めるように言うとアンナは名残惜しそうに食い下がった。
リアナがヒスイの方に申し訳なさそうに目を向けるとヒスイはいつもの笑顔で「大丈夫です」と答えたので、仕方なくアンナの最後の質問を許したのだった。
「……もう、次で最後よ」
「やったぁ! じゃあね……、えっとね……」
しばらくうんうんと悩み、やがて質問の内容を思いついたのかパッと笑顔になってその口を開く。
「……あ! エルフのおねえちゃんって好きな人いるの?」
「ふぇっ!?!?」
これまでの質問の内容と変わり、予想外の質問にヒスイの顔が一瞬で真っ赤に染まる。その内容はもはやエルフへの質問というよりヒスイ個人への質問だった。
しかしながら、出回っている絵本の中に描かれるエルフは素敵なオルド族の男性と結ばれる内容が多く、アンナのような絵本の中でしかエルフを知らない子供にとってはこの手の質問は連想しやすく、あながち的外れな質問ではなかった。
「ねぇねぇ! いるの? 好きな人いるの?」
「あ、え、その、えっと好きな人、ね。うん、好きな人……は、その、いなくもなかったりしたりしなかったりするけど……」
「おまたせしまし――」
料理を作り終えたカルムがドロシーと共に厨房から顔を出したのは丁度そんなときだった。
「ぴゃァァァあああああっ!!!??!??!!!!!???」
「――た。……って、どうしたんだヒスイ? 突然、悲鳴なんて上げて」
「えっ、あ……。あ、あははははは……、な、何でもない! なんでもないよ!」
「……? 変なヒスイね」
カルムとドロシーは訳が分からないという感じで首をかしげたが、ただ一人、ゲルタだけはそんな3人様子を見て笑いを堪えていた。
「っと、それよりも料理ができましたよ」
「急いで並べてしまうわね」
そう言って、ドロシーとカルムが3人の座るテーブルの上に持ってきた料理を並べる。
カルムが作った料理は鉄板焼きのハンバーグだった。
アツアツに熱した鉄板皿の上に乗ったハンバーグから溢れた肉汁がジューッという音と共に香ばしい香りを出し、そんな肉汁の染み込んだマッシュポテトは鉄板の上で未だカリカリに焼かれている。
その脇に柔らかく蒸したブロッコリーとニンジンが添えられており、見た目の彩りも鮮やかな料理だ。
また特性のデミグラソースは焦げないように別の小皿に分けられていたが、その甘酸っぱいトマトの香りはハンバーグの香りに負けず劣らぬ濃厚で、このソースを鉄板の上にかけたらどれほどの香ばしい香りに包まれるのかと想像するだけで食欲が増すようだった。
「ハンバーグだ!」
「…………あれ? でも確か今日はチーズを食べに来たはずだったような?」
リアナの言う通り、今日はアンナにチーズを好きになってもらおうとする食事のはずだ。しかし、出てきたハンバーグの上にはもちろん、添え物としてもチーズは一切見当たらなかった。
「なるほどな、チーズが中に入ってるハンバーグか。この濃厚そうなソースで味付けしたハンバーグが一緒ならチーズの味や風味が薄れてアンナも食べられるかもしれないってわけだな」
ゲルタが頷きながらナイフでハンバーグを割る。その拍子に肉汁が溢れ、ゲルタの鉄板からは肉汁が蒸発するジュワッっという音と香ばしい肉の香りが広がった。
だが、それだけだった。
ゲルタの予想に反してハンバーグの中には何も入って無かったのだ。
「はははっ。残念、ハズレです」
「んじゃ、一体どういう……?」
怪訝そうな顔をするゲルタにカルムは笑みを浮かべるて一歩下がる。
そこにはいつの間にか腕ほどの太さに切り分けられたチーズの塊と、少し大きなナイフを手にしたヒスイが立っていた。
「おいおい、まさか、これからチーズを切り分けて乗せるっていうのか?」
それでは普通にチーズを食べるのと一緒だ。
このハンバーグがどれほど美味しいのかは知らないが、いくら美味しい料理と一緒だとしても苦手なチーズをアンナがそのまま食べられるとはゲルタはとても思えなかった。
「ねぇ、アンナちゃん」
「……なぁに?」
「アンナちゃんはチーズ好き?」
「…………あまり好きじゃない、……かも」
「……そっか。どういうところが好きじゃないの?」
「食べたときにね、うにゅってするのと、あと、あじがあんまり好きじゃないの」
チーズを目の前にして不安そうな顔をするアンナ、しかし、ヒスイはそんなアンナに満面の笑みを向けて楽しそうに語りかけた。
「ふふっ、ねぇアンナちゃん知ってた? チーズを楽しむ方法ってね、何も食べるだけじゃ無いんだよ」
「どういうこと?」
「今から約束通り、魔法を見せてあげるから、よぉく見ててね!」
「…………?」
次の瞬間、アンナの目はヒスイの手にしたチーズに釘付けとなった。
「お、おい……、こりゃ一体!?」
「まぁ……」
「………………………っ!!」
なんとヒスイの手にしたナイフで撫でられたチーズがみるみるうちに溶け出し、まるで土砂崩れのようにゲルタのハンバーグの上にトロリと雪崩込んだのだ。
エルフの使う魔法の基本は熱量の操作だ。昨日、ヒスイがドロシーの頭を殴るときに水差しの中の水を瞬時に凍らせたのと同じで、今回は魔法によって手にしたナイフに熱を持たせたのだ。
しかし、そんな魔法のことなど誰もが忘れ、ゲルタもリアナもアンナと同じように目の前で溶け出すチーズに圧倒され、目が奪われていた。
まるで蜂蜜を溶かしたミルクのように白く僅かに黄金に輝くチーズがやがてクリームソースのように鉄板の上に流れ落ちると焼け焦げる音が響き、今度はチーズの濃厚な香りが辺りを包んだ。
溶けたチーズの魅力ももちろん知っているゲルタでもさえ、その光景に圧倒されていた。
思わずゲルタの喉が鳴る。
「じゃあ、次。リアナさんの分もやりますね」
戸惑っている3人を尻目に、ヒスイは次のリアナのハンバーグの乗った鉄板の上にチーズを溶かし始めた。
再び三人がその光景に圧倒され、視線がチーズへと釘付けとなる。
「そして、これはオマケ!」
チーズを注ぎ終わったヒスイがチーズとナイフをドロシーに預け、チーズ注いだ二人の料理にそれぞれ手をかざす。
すると、今度はチーズが溶岩のようにグツグツとし出し、やがて表面にカリカリのお焦げが出来たのだ。
これは昨日、酒を飲んだゲルタが年甲斐もなくおおはしゃぎしながら食べたドリアと同じ状況だった。
「どうかなアンナちゃん。チーズって見てるだけでも素敵でしょ?」
「……うん! すごい! チーズすごい! おもしろい!」
ゲルタは目と耳を疑った。
チーズが嫌いだったアンナが、チーズであんなにはしゃいで喜んでいたのだ。
「料理を食べてもらうコツは、まず相手に興味を持ってもらうこと。……俺の師匠の言葉です」
カルムがそっとゲルタに話しかける。
「だから、アンナちゃんにはまず食べること以外でチーズに興味を……、チーズの魅力を知ってもらおうと思ったんです」
アンナはあれからもジーッと二人のハンバーグに注がれたチーズを見ていた。
「……アンナ」
リアナが手にしたフォークでチーズで覆われたハンバーグを切り分け、持ち上げる。
チーズが美しく糸を引くようにトロリと伸び、アンナはそれに目を奪われただった。
「少し食べてみる?」
アンナはその言葉に少し惑ったがまるでクリームのようにトロトロにとろけたチーズを見て、勢いよくリアナが手にしたチーズとハンバーグを口にした。
そして、しばらく
……が。
「うぇ……、やっぱりチーズ美味しく無い……」
感想はやはり美味しくないだった。
「はははっ、やっぱり食べるのは無理だったか」
カルムがその光景を見て笑う。もとより、嫌いな食べ物を美味しいと言わせることなんて出来ないと最初から思っていたのだ。
「あの……、怒らないの……?」
「もちろん、アンナちゃんがチーズが苦手だってことは元から聞いていたからね。お客さんに喜んでもらうのが俺の仕事なんだ。無理やり食べさせたりなんかしたら師匠に怒られちゃうよ」
好き嫌いをしたから怒られるかもしれないと思っていたのだろう。カルムの言葉を聞いてアンナは安堵してさきほどのような笑顔に戻った。
「さぁ、それよりもアンナちゃんはお口直しに普通にハンバーグを食べてみて。そっちはきっと美味しいよ」
「……うん!」
それから3人は一緒になってハンバーグを食べ始め、アンナは時折、二人が食べているチーズの様子を観察するように見ていた。
ゲルタがわざとらしくチーズを伸ばすように持ち上げるとアンナは喜び、ヒスイに頼んで再びチーズがトロトロになるのを見ても喜んだ。
「それじゃ、姉さん。俺たちは裏で待機してようか」
「……そうね」
去り際にドロシーは楽しそうに食事をする3人の様子を見て微笑む。
カルムに出来るのもここまでだ。約束通りチーズを好きにさせることは出来たかは分からないが、少なくとも無駄では無かったと信じたい。
あとはこの血の繋がりの無い親子の絆を信じることにしてドロシーと共に厨房へと姿を消した。
「なぁ、アンナ」
「……なぁに?」
食事中、楽しそうにしているアンナの様子を見ていたゲルタがフォークを置いて優しくアンナに言葉を投げかける。
「チーズは、好きになれたか?」
「う~ん……、見るのは好き! でも、食べるのはちょっとむり……」
「そ、そうか……」
その答えはゲルタにとって少しだけ残念ではあったものの、チーズそのものが嫌いだった頃に比べれば大きな収穫だった。
たとえ、チーズが食べられなくてもアンナを愛する気持ちは変わらない。ゲルタはそのことを思い出し、カルム食堂の3人に感謝をした。
「でもね」
「…………ん?」
「チーズ作ってるゲルタパパのことは大好きだから、わたしもいつかゲルタパパみたいにチーズがぜーんぶ好きになれるようにがんばるね!」
このときのゲルタの顔はまるでとろけたチーズのようにだらしなく幸せそうな笑顔だったという。
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