Ⅱ-Ⅲ
「……ま、そういう面倒そうなことは後で考えましょうや。今はとにかく、ラダイモンを攻め落とすことが肝心でしょう?」
「あ、あの都市を攻略するつもりなのか?」
「そりゃあもちろん。戦いってのは相手を倒して、敵の城を制圧して終わるもんでしょ。……何なら俺一人で突撃してきましょうか?」
本気であることを伝えるため、不敵な笑みを浮かべながら言ってやった。
反対にメラネオスは呆れ顔。後ろに振り向いてみると、ブリセイスも同じような表情を浮かべている。
「ヒュロス、さすがにその方法は賛成しかねる。力に頼るのはもっと、決定的な場面に突入してからだ。――そもそも現在、オレステスは市民を人質に取っている。その状態では君も戦うに戦えないだろう?」
「なん、だと……」
許せない。戦う前に人質を用意しておくなんて、とてもじゃないが許せない。卑怯者の行いとどこが違うのか。
ふつふつと湧き出る怒りに、俺は拳を握りしめていた。いま直ぐにでもオレステスのヤツを殴り倒してやりたい気分である。
そもそも市民を人質ってなんだ。戦えない連中を、その町で生きるしかない人々を盾にするなんて、脅迫以外の何でもない。
「行きましょうメラネオスさん! オレステスの野郎をぶっ殺すんですよ!」
「君は私の話を聞いていたのか!?」
「ええ、聞いてましたとも! オレステスのヤツに気付かれないよう忍び込んで、さっくり首を跳ねりゃあいいんでしょう?」
「……まあ、間違ってはいないな」
ならば良し。ブリセイスはなおも唖然としているが、方針に変更はない。第一、無茶をするのは俺なんだし。
木から背を離して、バリオスの元へと急ぐ。
こうしている間にも、ヘルミオネはあのクソ野郎と一緒にいるのだ。許せるわけがないし、彼女だって望んではいまい。
愛用の槍を強く握りしめながら、俺は森の外へ向かう準備を整える。
「……ちょっとヒュロス君、待ちなさい」
「? どうしました?」
「さっき、貴方は敵と戦ったばかりでしょう? 殺しもしなかった。……その彼らが、今ごろどうしてると思う?」
「拠点で鍛錬に励んでいる?」
「……上官に知らせている、じゃない? 召喚された英雄については、以前から警戒していたもの。加えてメラネオス様を救出した。ラダイモンが厳戒態勢になっていても不思議じゃないわ」
「じゃあ先回りしましょう。バリオスだったら、そこら辺の馬よりは早く動けますし」
「――メラネオス様、何か言ってやってください」
「?」
会話の流れがいまいち掴めず、俺が首を傾げながら義父を見た。
彼は一つ前置きを作って、落ち着いた表情を取り戻しつつ説明する。
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