第4話 二人目の行方不明者

「おい、どうしたんだ? 営業二課、なんか騒がしいな」

「おお、鈴木か。まずい事になったんだよ、村野……お前も知ってるだろ? あの目つきの鋭い——」

「あぁ、知ってるよ。あいつがどうしたって?」

「どうしたもなんも……消えたんだよ。荷物もやりかけの仕事もたんまり残して。あいつは今まで無断欠勤なんかした事なかったんだ、しかも今日は村野が担当する大事な会議があるっていうのに……」


 へぇー、といかにも興味の無い素振りを私は見せていたが、内心は焦っていた。


 村野は私を騙したのではない。

 本当に知っていたのだ、その「秘密」を。

 それが故に、何かとてつもなく巨大な権力に消されたに違いない。

 ひょっとしたら私はかなり「秘密」の核心に近づく事が出来たのではないか?


 しかし、核心に近づけば近づくほど、逆風も強くなる、それが条理だ。

 そしてその兆候は意外と早く訪れる。ついに私は部長に目をつけられてしまったのだ。


「鈴木君、ちょっと会議室に来たまえ」


 まずいな……そう思いながら私は部長の後について会議室に向かった。


「まあかけたまえ。ここ会議室には誰も入れないように配慮をしておいた。何も気兼ねすることなく喋ってくれたまえ。まず最初に失踪した二人のことは知ってるな?」


 やはり来たか、そう思った私はわざと冷静を保って部長に対応していた。


「その二人なんだが、どうやら失踪する前に二人とも君とコンタクトをとっているという噂を耳にしてね。君が何か関与しているのでは……と思ったのだが?」


 私は結局、知らぬ存ぜずの態度を崩す事無く部長との対話を終え、会議室を後にした。


 ……本当に知らないものは仕方ない……


 そう思った私だが、こうやって目をつけられるのは色々な意味で不都合が多い。せめて真実をつかんだ後ならまだ良かったのだが。そう考えながら会議室を後にする私に、とある人物達が目に入った。


 会社の「CIA」と呼ばれる3人組、その彼女達が何やら気になるフレーズを発していることを私は見逃さなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る