第17話 青空教室
カコーン、カコーン
森の中に
「北から敵が来ます」
「nigiryo eewop fmor ngoni 」
「素晴らしいです! もう日常的に使う言葉は完璧ですね」
敵が本当に来たわけではなく、半兵衛さんと会話の練習だ。
日常会話なら、だいたいできるようになってきた。
敵が来るが日常ってどうなのかとは思うけど……
昨日の戦いは
奴隷紋も一つ消されて、後4つだ。
女騎士に邪魔されて攻め切れなかった
八つ当たりに巻き込まれた側近達がそこら中に倒れている。
巻き込まれるのを恐れた奴隷管理人の提案で、今日は僕達を含む数十人が森から木の切り出しを行っている。
相手の軍が城の中に
奴隷って色々な経験を積める…… 積みたくないものも多いけど……
「共通語は分かりますか?」
「daia nomo buoi ?」
「おしい、daiok nomo buoi ? ですよ」
主語ごとに動詞が変わるからたまに間違えてしまう。
通常の会話だと相手が
「lanoa moeri o tereint」
「『知的な女性が好きです』ってそれ日常で使いますか?」
「ええ、必要です! それに『知的な女性が好きです』、『頭の良い女性が好きです』、『
確かに言葉は同じような意味で違う表現があるけど、なぜその言葉なんだろう?
「私のお勧めは『知的な女性が好きです』ですよ」
う、う~ん。
取り
カコーン、カコーン
斧で木を切るなんて初めてだからなかなか切れない。
無駄に力を入れているのか、すぐに腕がだるくなる。
ズ ズーン
僕は表面しか切れていないのに、二人共すごい。
「俺の方が早かった!」「いや、私だ!」
静かだと思ったら、どちらが早く切れるのかで競争をしていたみたいだ。
二人を見て半兵衛さんが笑っている。
奴隷管理人は離れたところでサボっているので、天気の良い青空の下、奴隷だけでゆったりしている。
すごく平和だ。ずっとこんな時間が続けば良いのに。
ノルマがあるから、ゆっくりもしていられないけど……
半兵衛さんも横で必死に切り倒そうとしているけど、力不足で木の表面に弾かれている。
僕達3人で半兵衛さんの分も切るから無理しなくても良いのに。
関羽と張飛を見ていて分かったのは、水平と
確かに重い斧を力で振り回していては体力がすぐに無くなってしまう。
ところでこの木はどっちに倒れるのだろう?
バキバキバキ
倒れる方向を考えておかないと、危ないな。
バキバキバキ
近くで他の人が切っていた木も倒れだした。
「あ、危ない!」
必死になって木に斧を入れている半兵衛さんの後ろに
ズズン!
ふぅ、倒れ方がゆっくりだったから助かった。
半兵衛さんも助けれたし。
押し倒したようになったけど、怪我はしてないかな?
あれ? 半兵衛さん、顔が赤いけど大丈夫?
木の切り出しが終わったら、
お城の
家の2階よりも高いくらいかな?
不安定そう…… これで5メートル昇るのは勇気が
梯子作りは他の奴隷達とも離れて、僕達だけだったので色々な話ができた。
これからどうするか? が話の中心だったけど、今後を考えるためにみんなの身の上話や、この辺りの地理や勢力分布なども話題に上がった。
関羽と張飛は呂布にドワーフの集落が落とされ奴隷になったことを、半兵衛さんからは新しい王に
みんな過酷な人生を送っている……
僕は空腹で食べ物を盗んだら戦場奴隷になったことを話した。
三人に比べるとバカバカしい話なので、冗談ぽく話をする。
関羽と張飛はガレトン王国の横暴さに
僕が異世界から来た話は、なぜか知っていた半兵衛さんに止められている。
異世界移転は魔法王国で収集されている
権力者や学者に話が漏れるとどんな扱いを受けるか分からず、危険なので言わない方が良いとのことだ。
この話を聞いたとき、僕は目の前が真っ暗になった。
それって元の世界に戻る方法が無いって意味なんじゃ……
半兵衛さんから元の世界に帰る手立てを一緒に探してくれると言ってくれなかったらきっと泣いてた。
すごく心強いです。
帰るときには一緒に付いて来ることが条件になっちゃったけど……
そんなに異世界に興味があったのかな?
今後のことは、
そのためには
気になるのが、奴隷紋を全て消した者は
――― 関羽に張飛、半兵衛さんがいれば大丈夫だよね?
「北から敵が来ます!」
「えっ? ええっと nigiryo eewop fmor ngoni ?」
「違います! 本当に来ました!」
ええ!?
◇◆◇◆◇◆
好戦的な国王の下、何度も戦いを経験しているが、あのギレッドはいかん。
なかなか戦果の上がらぬことに
個人の強さは確かに認める。ほぼ世界最強の男だろう。
ただ、戦場では個人の強さよりも集団の力なのだ。
どれだけ強かろうが、何時間も連続で戦うなど不可能。
体内の魔力と体力がなくなれば
数十人の魔導士が唱える戦術魔法の直撃でも倒せるだろう。
それはあのギレッドも解っておるようで、
戦法も弱い者を盾にして突撃するだけ。
今までは敵が
現に、辺境伯の城が落とせずに苦戦しておる。
あんな城、儂が指揮を取ればすぐに落としてみせるものを!
「子爵様! 子爵様」
「なんじゃ
「て、敵襲です」
むう、敵軍が城に籠ったと聞いて油断しておった。
城に籠ったふりをして、奇襲を仕掛けてくるとは相手の軍師は相当の切れ者のようじゃ。
だが、儂の砦に攻めてくるとは運のないやつよ。
儂の見事な指揮を見せてやる。
儂の部屋に百人隊長を集めて、指示をしていく。
この砦を落とすときに壊した部分がまだ直っていないが、逆に考えればそこを重点的に守れば良いだけ。
相手の指揮官の場所が分かれば、すぐに戦術魔法の
儂の指揮に死角はない!
「門が突破されそうです」
「へ? 早くない!?」
窓の外を見ると光り輝く天使の羽を持つ女騎士が門に降り立った。
一人って、飛んで来たのかな? 弓兵はどうしたのだ?
女騎士が門の近くの兵士をなぎ倒していく、飛んでくる矢なんて素手で簡単に止めていた。
つ、強すぎる。儂の兵士がまったく役に立っていないではないか。
そして、その隙に一人の男がこそこそと内側から門を開けている……
女騎士にしがみついて来たのか? 神官戦士に見えるがお前は本当にそれで良いのか?
くそ! あんな化物、指揮程度でどうにかなるものか!
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