研究者たるもの

僕の名前は斎藤一樹。


ペンギン調査団の一人だ。


僕たちは×〇町に突如現れた"ペンギン"について調査している。


昨日は大変だった。


×〇町では現在計50体の"ペンギン"が確認できている。もともとは51体だったが、残りの"ペンギン"だけこれまた突如消え、以降姿を現していない。


僕たちの調査ではその50体(51体)の"ペンギン"には右側のフリッパーの裏にReと数字が刻まれていることが分かっている。それが50体(51体)なので、そのままRe-1~Re-50(51)まで存在している。


一見すると同じ"ペンギン"のようだが、人間が目視できる程度の違いが見て取れる。


つまり、外見上の個性が存在しており、また個々に活動域が異なる。


例えば、首元に蝶ネクタイをしている"ペンギン"がいるかと思えば、"ペンギン"の標準体型よりも大きい"ペンギン"がいたりする。


前者であれば電車内で見ることができるし、後者であれば町のスーパーで見ることができる。


"ペンギン"たちはまるで人間を恐れておらず、当たり前のようにこの×〇町の日常に溶け込んでいる。


この当たり前のような行動に町民も影響され、"ペンギン"を彼らの日常の一部として受け入れているように思える。


これはあくまで個人的な感想だが、驚くべきことは"ペンギン"の中には人間に飼われている個体も存在しているということである。


僕から言わせてもらえば、人間側に警戒心のカケラもない。一歩下がってその光景を見てみると異様である。シュールというかなんというか。


僕たちは個体ごとに調査に当たっているが、今後それに並行して"ペンギン"を飼っている町民のもとを訪問する予定を立てている。つまり、"ペンギン"を違う切り口から調査してみようということではあるのだが、それによって何か新しいことがわかるかもしれない。


人間は良くも悪くも当たり前でないことにいずれ慣れてしまうことがある。この×〇町の光景が自分の中でも当たり前にならないように気をつけたい。


これは僕が尊敬する恩師の受け売りだが、


「優れた研究者たりえるは常にあらゆる事象に対して疑問を持ち続けること」


僕は名前は斎藤一樹。


"ペンギン"について、はっきり言って疑問だらけだ。

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